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第34話:肘だ、キャップ!

 お寿司がぐるぐる回る回る。

 こんにちは、リファです。私達Super Max Six'sっていうチームは回転寿司屋に来ています。腹が減っては戦ができぬ、とのことです。

「カツ丼を食べて勝つ! なぁんてワンパターンなノリは嫌だからお寿司よ」

 桃栗さんはお味噌汁を飲んでいます。まだお寿司は食べていません、お味噌汁だけ飲んでいます。既にお代わり済みです。せっかくだからお寿司を食べたらいいのに……。

 横では塩田さんがクー君にお寿司を食べさせようとしています。アレです、あ〜んってやらされているんです。私もクー君にやってあげたいかも……。でもクー君、露骨に嫌そうな顔をしてる。きっとさっきからカンピョウ巻きしか食べさせられていないのが不満なんだね。やっぱり他のネタも食べたいもんね。

 沢屋さんは黙々とお寿司を食べ続けています。お皿がどんどん積み重なっていきます。いつかお皿が天井に着くんじゃないかと思うと心配になってしまいます。

「リファ、ちょっとそのタコ取って」

「あ、はい、ロゼちゃん」

「ありがとな」

 私はタコをロゼちゃんに渡した。ロゼちゃんは満面の笑みでタコを食べ始めました。

「ロゼちゃん、タコが好きなの?」

「たこ焼き好きやから、めっちゃ好きや」

 エセ関西人です。大阪の人を敵に回さないように気を付けてね。

 桃栗さんはようやくお味噌汁以外のものに手を付け始めました。エビフライです。なんでお寿司を食べないのかな……?

「お寿司屋に来てお寿司を一切食べない伝説に挑戦しているのよ」

 意味がわかりません。そこは素直にお寿司を食べてほしいです。それなら定食屋に行ってほしいです。

 ……あ、でもそしたら今度は「定食屋で定食を頼まない伝説に挑戦」とか言い出しそうで怖いです。桃栗さんって一体何を考えて生きているのでしょうか。

 ところで私の向かいの席に桃栗さんが座っているんだけど、さらにその後ろの席に誰かが座っているんです。なんだかものすごく見覚えがあるんです。

 その人が横を向きました。ピエロでした。


 ――ピエロ?

 きゃ……キャップ!

 ど、どどどどどどうしよう! なんでこんな所にキャップがいるのかな!

 とりあえず落ち着かないと……。慌てたからお茶をこぼしちゃった。ロゼちゃんにかかっちゃった。リアクション芸人も顔負けのド派手なリアクションで熱がってる。さすがエセ関西人だね。あ、でも関西人がみんなお笑い好きみたいな思い込みは良くないよね。じゃあ前言を撤回して……、単なるオーバーリアクションだね、ロゼちゃん。

「あぁん? リファがお茶をこぼすのが悪いんやろがッ!」

 怒られちゃった。ごめんね。

 あ、そうそう、キャップがいるんだったよね。ついうっかり忘れてた。慌てないと。

 どうしようどうしよう! キャップがいるよ!

 あれ? 別に慌てる必要はないよね。ごめん、ついうっかり。

 とりあえず状況を整理します。


 1.私達はお寿司屋さんで食事中。美味しい。

 2.桃栗さんはお寿司を食べない伝説に挑戦中。

 3.私の向かいに桃栗さんが座っていて、さらに背中合わせの状態でキャップが座っている。

 4.ロゼちゃんは大袈裟。

 5.ちなみにみんなは食事に夢中でキャップの存在に気付いていない。

 6.私は今、メロンに手を出し始めました。


 こんな感じかな? 私しかキャップに気付いていませんメロン美味しいね。

 このままキャップをスルーしてこの場はやり過ごすか、それともみんなに教えてどうするか相談するか……。

 後者かな。

 私はクー君にキャップがいることを教えてあげようとしました。

「カンピョウはもうやめて……。カンピョウ、カンピョウ、カンピョウ……カンチョウ? カンチョウの別の呼び方ってカンピョウっていうの?」

 クー君が壊れました。大丈夫かな?

 じゃあロゼちゃんに教えてあげよう。

「ロゼちゃん……」

「なんやッ! またお茶を浴びせる気なんかッ?」

 また怒られちゃった。でも今回は何もしてないよ? こんなの悲しいよ。

 桃栗さんがお茶を飲もうと湯呑みに手を触れました。

「熱ぅッ!」

 湯呑みは思いのほか熱かったらしく、桃栗さんは素早い動きで手を引っ込めました。すると手を引っ込めたことにより、桃栗さんの肘がキャップの後頭部に勢いよくぶつかりました。ごっちーんって。

「んゴぅうッ!」

 キャップは奇声を発して倒れました。さすがに桃栗さんもキャップの存在に気付いたようです。キャップの顔を見て驚いていました。

「キャップ……! でも……気絶してる?」

 今の一撃で気絶してしまったようです。桃栗さんがキャップの顔をつねりますが、まったく起きません。

「桃栗さん……どうするの?」

「どうするってリファちゃん……、決まっているでしょう?」

 桃栗さんは、今度は顔面に肘打ちをしました。それも全力で。キャップの鼻から血が出てきました。

「さ、食事の続き続きっと」

「…………」

 結局キャップはそのまま目を覚ますことはありませんでした。

 帰り際に桃栗さんはボディブローをキメていました。さすがにそれは酷いと思いました。

「お腹も膨れてキャップをぶっ飛ばせて、まさに一石二鳥だったわね。じゃあ帰ろうか」

 えっ、帰るのッ?


 ――そして次の日になりました。

 私の元に一通の手紙が届きました。ライト校長先生からのものでした。


――――――


 ライトです、お元気ですか?

 人間界に逃亡したという凶悪犯キャップが捕まったとの情報が入りました。なんでも飲食店にて既に何者かによってやられていたようです。

 人間界にいる魔法使いの皆さんはもう安心しても大丈夫です。

 それでは、勉学に励んでください。ごきげんよう。


――――――


 一件落着……かな?


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