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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第十九章

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ダーク・ジャッジメント

 

「やあ、パルフェさん! パルフェさんのおかげで探検者ギルドは大盛況だよ!」


「ルティさん、いらっしゃい。でも、特に何かしたわけではないですけど」


「何を言ってるんだい。もちろんパルフェさんだけの功績じゃないが、その中でも吸血鬼のボスを倒したことは最高の功績と言えるよ! ギルドに所属したいという人はまだまだ少ないが情報を取引したいという話が結構来ていてね、それに次の大規模探索に関しては参加したいというクランが大幅に増えたよ!」


「それは良かったですね」


 幽霊船で吸血鬼であるミストを撃破したパルフェ、その翌日になるが、拠点でのんびりと仲間を待っていたら最初に来たのはルティだった。かなり興奮気味に話しており、パルフェの功績がいかに素晴らしいものかを語っている。当のパルフェとしてはそこまでのことではないと思ってはいるが、褒められてちょっとは嬉しい。


 手放しで喜べないのは、ミストを倒した後にベニツルとシモンに言われた言葉だ。簡単に言えばミストに手加減されたとのこと。剣技の戦いでは間違いなくパルフェの勝ちなのだが、そもそもミストは吸血鬼の能力をほとんど使わずにレイピアでしか戦っていない。ウェポンスキルなどは使っていたが、死霊魔法は一切使っていなかった。


 復活できないようにミストの棺桶を先に破壊しなくてはならないというハンデはあったものの、それを差し引いてもミストには手加減されていたとのことだった。試合に勝って勝負に負けたという状況に近いのだが、パルフェからすれば、剣技だけでも相当強いミストに手加減されていたことにちょっと不満はある。


 とはいえ、ゲーム歴が違うし、年齢も違う。それに現実では勝てるというお墨付きは貰えたので、まあ良し、ということになった。


「ルティ、昨日の今日だというのに、また来たんですか」


「やあ、ウィルネ。そんなつれないことを言わないでおくれよ。私としては毎日来たいほどだから……ものすごい嫌そうな顔をしているね?」


「ものすごい嫌なので」


「酷くないかい!?」


 次にやってきたウィルネはすぐにルティと話をするが、ウィルネの方はルティをあまりよく思ってないのか塩対応だ。ただ、本人達はどう思っているのかはともかく、パルフェとしては仲がいいなぁとしか思えないやりとりだ。お互いに財団の次期当主ということもあって何かしら思うところがあるのかもしれないと勝手な推測をするが、なんとなく、本当になんとなくだが、今のネイとロニオスのような関係を見ているようで、大丈夫かなと心配になる。


「それで今日などんな用事で?」


「用事がなきゃ来ちゃいけないのかい?」


「いけなくはありませんが、用事がなければ来ないでしょう?」


「友達なら用事がなくたって来るもんじゃないかな?」


「友達ではなく知り合いでしょうに。で、どっちでもいいので、まずは要件を済ませましょう。今日は忙しいので」


「そうなのかい? なら先に用事を済ませるけどね……」


 ルティの話は幽霊船で手に入れた戦利品の話だった。


 吸血鬼を倒した後のドロップアイテムではなく、幽霊船を調べた上で手に入れることができた戦利品のことで、パルフェがミストを倒した後の調査に関してはルティ達が実施することになった。その間、パルフェたちはその場で休憩していたのだ。


 研究室のような場所で見つかった鍵や資料、それに航海日誌などから、多くの情報を手に入れ、それを精査した結果を届けに来たと言う。


「蠅王ベルゼブブは滅亡都市クリアの自作自演による産物?」


「集まった情報からするとそのようだ。超巨大ゴーレム『コロッサス』を作る理由として先に作ったのが蠅王ベルゼブブ。軍事費拡大のためのパフォーマンス的なことでベルゼブブが作られたわけだね」


「では、作ったベルゼブブが滅亡都市を破壊してしまったと?」


「その通り。制御機能が上手く働かなかったらしくてね、ベルゼブブはコロッサス完成前に滅亡都市を破壊してしまったわけだね。そして自由を得たベルゼブブはどこかへ飛んで行ってしまったわけだ」


 なんとまあ、という感想しか浮かばないパルフェだが、その状況に少しだけ首を傾げる。


「コロッサスは完成していなかった? でも、起動方法を探しているんじゃなかったでしたっけ?」


「そう、コロッサスは未完成。とはいえ、起動させるためのエネルギーコアがないだけで、それさえあれば起動が可能というわけだ」


「ああ、起動できるまでは完成していると」


「嫌なタイミングでベルゼブブが襲ってきてしまったわけだね。しかし、自作自演で準備不足というのは滑稽としか言いようがないね」


「財団が自作自演をするときはしっかり準備してからやってますから安心ですよ」


「今のどこに安心する要素があったのかな?」


 ウィルネの問題発言にパルフェはちょっと引き気味だが、もしかしたら冗談かもしれないと一縷の望みに懸ける。それはそれとして、ルティの話によれば、そのエネルギーコアを探し出し、コロッサスを起動すればベルゼブブを探せる、もしくは呼び寄せることが可能かもしれないとのことだった。


 そして探検者ギルドとしてはこれらの情報に多額の懸賞金をかけているようで、信憑性の高い情報にはそれなりの報酬を用意しているとのこと。そしてパルフェたちにも情報がないかを聞きに来たと言う。


「それでどうかな? 何か情報はないかい?」


 当然ながらそんな情報を持っていないパルフェは首を横に振る。


「それは残念だ。とはいえ、何でもかんでもすぐに情報が集まったらつまらないからね。ここからも地味に情報を集めるよ。ああ、もちろん、コロッサスの起動やベルゼブブと戦うときはぜひとも参加して欲しい」


「もちろんです。都合さえ合えば必ず参加しますので」


「その言葉を聞きたかったんだよ!」


 嬉しそうにしているルティだが、パルフェとウィルネの顔を見て笑みを止めた。


「温度差を感じるのだけど、なぜ二人は深刻そうな顔を?」


「ええ、まあ、これからちょっとしたいイベントがありまして」


「イベント? なんだか楽しそうじゃないか」


「いや、そういうのとはちょっと違うというか。むしろ断罪イベント……?」


「穏やかなじゃないね、どういうことだい? まさかリーブラが絡んでいるとかではないよね?」


 現実での法関係を司る財団リーブラが絡んでいるわけがない。パルフェが説明をしようとしたところで、拠点の入り口がノックされる。


「リ、リオンです。あの、言われた通りにカザっちゃんも連れてきましたけど……?」


「お、お久しぶりなのじゃー! ……あのう、有給を取ってでも来て欲しいって言われたのですが、一体、何が?」


「いらっしゃい、まあ、とりあえず入って入って」


 リオンと有給を使わせてまで呼び寄せたカザトキ。二人とも何があるのかは分かっていないようだが、パルフェの呼びかけに応じてやってきた。それを皮切りに、クリス、アベル、ジニー、リックがやってきた。来ていないのはナツだけだ。


 そして真面目な顔でパルフェはゆっくりと皆を見る。


「これから裁判が始まります。嘘偽りなく答えるようにお願いします」


 その言葉にウィルネ以外が不思議そうな顔をするが、そこへナツがやってきた。誰もが一瞬で分かる。落ち着ていいるように見えるが、大変ご立腹だ。


「被告人、我が敵リオンよ……地獄の業火に焼かれるがいい!」


「うぇ!? ナツさん!? いきなりなぜ!?」


「せめてもの慈悲にウェルダンかレアか選ばせてやる!」


「なっちゃん――いえいえ、裁判長、待った待った。せめて罪状を言おう?」


 パルフェの言葉に、この場では裁判長らしきナツが大きく息を吸ってから吐いた。それだけの行動で、リオンは身をすくめている。


「いいだろう。だが、被害者の名は伏せる。状況で言えば、我が敵リオンは事もあろうに男性を誘惑したのだ! 学生という身分でなんと破廉恥な……失われた楽園で無限に腐った林檎の世話をさせてやる!」


「い、い、い、異議あり! ま、全く身に覚えがありません! 冤罪です! あ、あと、弁護士呼んでください!」


「ほう、しらを切るか。だが、たとえ天使や悪魔が見過ごしても、深淵はいつでもお前を見ているぞ! アカシックレコードにもちゃんと書いてある!」


 ところどころダークサイド的なネタが挟まれているが、ナツ怒りは本物のようで地獄の閻魔様も真っ青と言うべき憤怒が見て取れる。


「あ、あー、誘惑ってあれか」


 空気を読まなかったのか、それとも変えようと思ったのか、アベルがそんなことを言い出した。


「ア、アベルさん! 一体なんのことですか!? 私はそんなことした覚えがないんです! 本当です! 信じてください!」


「ほら、リオンはルースさんと魔法対決する前に異世界転生系魔法ギャルになったじゃねぇか」


 状況を知らない者たちにとってはなんだそれとしか言えないが、当のリオンも何のことだか分かっておらず首を傾げた。


「えっと……? それが一体……?」


「ほら、投げキッスしたろ。ルースさんに」


「……うぇ?」


「動画あるぞ。こんなこともあろうかと撮っておいたんだけど見るか?」


 アベルはそう言ってホログラムの立体モニターを全員が見えるようにする。そこに映像が流れた。


『貴方のハートにマジカルキッス! 異世界転生系魔法ギャル、リオンちゃんデス! 応援しないとマジウケル!』


 映像の中ではリオンがそう言ってルースに向かって投げキッスを放った。


 これを誘惑と取るかどうかは個人差がある。あと相手による。


 状況を思い出したリオンが壊れたロボットのように首をギギギとゆっくりとナツの方へ向けた。


「ギルティ!」


「さ、裁判長! こ、これは違うんです! 一種のトランス状態にあるための儀式と言いますか、極限まで自分を追い込むための暗示と言いますか! 決して誘惑ではなくて!」


「あ、あの、リオンちゃんは本気でやっているわけではなく、エンターテイナーとしてやっているんです! 昔から知っている私が言うんですから証言としては効果があると思います! ええと、アリバイ? 成立では!?」


 それはアリバイではないが、リオンの友人でもあるカザトキが必死に弁護している。こうなることが予想できたパルフェが呼んでおいたのだ。どこまで効果があるのかは不明だが。


 そんなわけでリオンとカザトキの弁護が始まったのだが、ナツは一度それを止めるような仕草をする。


「すでにギルティではあるが、まだ裁かれていない者がいる……我が敵リックよ! なにやら私とニアミスしたようだな! ギルティ!」


「待て。そんな訳の分からない罪があってたまるか。そもそも先に食事をしていたのは俺の方で、そこに、なんだ、後からやってくる予定だったんだろう? 大体俺は邪魔しないようにすぐに食事を終えたんだぞ……情状酌量を求めたい」


 なぜか最後の方にちょっとだけ弱気になるリック。


「闇の裁判にそんなものはない! 裁判が始まったら全て有罪だ! 地獄か、地獄以外の業火で焼かれろ!」


 かなり暴走しているナツではあるが、今回のことに関係がない者たちにとっては恋する乙女は大変だなという感想しかない。陪審員的な立場でいえばリオンもリックも完全な無罪なのだが、犠牲者がその二人だけなら問題ないだろうとこの茶番に付き合っている。


 だが、ナツの暴走はそんなものでは終わらなかった。今度はルティに視線を向けたのだ。


「我が敵ルティ! なぜ幽霊船などに探検に行ったのだ! しかも昨日! その日は家庭教師をしてくれる日だったのに、おかげで私は一人で勉強してたぞ! 許せん!」


「ちょ、ちょっと待ちたまえ! 私もかい!? というか、ナツさんとは初対面だと思うが?」


「初対面だろうと罪は罪だ! 分かるまい、うきうきで勉強の準備をしていたら、AFOのスタッフの仕事が入ったから勉強はまた今度ねと言われた時の気持ちが! 母がドーナツを半分だけくれたが、いまだにあれが優しさかなにか分からん!」


 それは誰にも分からないが、ナツが全方位に噛みついているのは分かる。さてどうしたものかとパルフェが思っていると、アベルが手をあげた。


「裁判長、ここで皆の無実を証明する証拠品の提出をしたいのですが」


「証拠品だとぅ? いまさら命乞いか! 無罪でも有罪にしてやる!」


 かなりやさぐれているナツに対して、アベルは先ほどの映像モニターを見せる。


 するとそこにルースが現れた。


『やあ、ナツちゃん、勉強を教えてあげられなくてごめんね。この埋め合わせは必ずするから。次、休みがとれたらナツちゃんが行きたいところへ連れて行くからね。それじゃ皆と仲良く楽しんで』


 そう言ってルースは軽く手を振る。


 それを時間が止まったようにジッと見つめるナツ。


 アベルがコホンとわざとらし咳をすると、ナツの方を見て笑顔になった。


「昨日、探索が終わった後でルースさんから送られて来たんだよ。明日――今日だけどナツに渡して欲しいって言われてな。んで、この動画を証拠品として提出したいと思いますが……有罪でも司法取引は可能でしょうか。ここは全員無罪ということで一つ」


「……うむ、まあ、その、なんだ。罪を憎んで人を憎まずという言葉がある。それに皆は我が友だしな!」


 ちょろい。ちょろすぎる。皆が心配になるほどのちょろさではあるが、ナツは先ほどまでの怒りはまったくなくなっているようで、証拠品として提出された動画を何度も繰り返し見ているようだった。


 そして一度有罪判決を受けた者たちは動画を残してくれたルースに心から感謝するのだった。


次回更新は5/3(日)になります。一週お休みをいただきますが、引き続きよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
無知は罪と申しますが、 リオンさんの投げキッスよりもルースさんのビデオレターの方が罪深いんじゃないかなって。 それはそうと、幽霊船にナツさんが同行したらどんな惨事になっていたか、興味あります。 下手…
大丈夫か、この娘は… 友人一同、不安視しているほどのチョロさだが… そして母親、ドーナツ半分って…
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