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アナザー・フロンティア・オンライン ~生産系スキルを極めたらチートなNPCを雇えるようになりました~  作者: ぺんぎん
第一章

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殲滅の女神

 

 クラン戦争までちょうど一週間となった。


 ハヤトの提案通り「殲滅の女神」は、ベッティングマッチに乗ってきた。そのマッチングが今日、正式に認められたのだ。運営からこの戦いに八百長はないと判断がされたということである。


(しかし、向こうは本当にナイフ一本を賭けるだけだったな。まあ、俺から言ったんだけど。負けるとは思っていないだろうが余計なリスクを背負うこともないと思っているのだろう。小心者と見るか、慎重と見るか、それともこれ自体が挑発か――そんなことが分かったところで意味はないんだけど)


 戦いたい相手と戦えることになった。対策も考えてある。ここまでは順調だが、ハヤトには最後の問題があった。


(問題はあのレオンって人が剣を装備してくるかどうかなんだよな。性能を考えたらまず間違いなく装備してくるとは思うんだが、こっちの狙いに気づいて持ってこないという可能性もある。でも、今のプレイヤーが使えるスキルでは絶対に盗まれることがない状態だし、たとえ慎重な性格だったとしても大丈夫だとは思うんだが)


 基本的にSTRを下げる呪詛魔法は二割が上限と言われている。なので、装備の強制解除の対策として装備条件がSTR81以上の装備は着けないというものがあった。他にも対策はあるが、主にこの対策をするプレイヤーが多い。これならどんな状態でも強制解除できないからだ。


 奪い返す予定の剣、エクスカリバー・レプリカの装備条件はSTR60以上。今までのプレイヤーが持っている知識であれば絶対に盗めない安全圏にある武器だと言えるだろう。


(レンがドラゴンカースというあり得ない効果のスキルを持っていることは誰にも知られていないはず。なら、たとえ慎重な相手だったとしても装備してくる……と思いたい。それにあの剣を対人戦で試せる最初のクラン戦争だ。そして相手は格下。装備してくる可能性は高いはずだ)


 エクスカリバー・レプリカは対人戦用の武器と言える。その効果は「相手の防御力を無視する」だ。基本ダメージは低く設定されているものの、相手の防御力を完全に無視する性能はプレイヤーのHPが最大であっても割合的に一割弱ほどを簡単に削ってしまう。もともと防御力の低い魔法使い系のプレイヤーには効果が低いが、戦士系のプレイヤーには脅威だと言えるだろう。


 そんな武器の試し斬り。上位クラン相手に初めて使うよりは、格下相手に試すはずだとハヤトは考えている。


(どれだけ考えてももうどうしようもないか。あとはもう運を天に任せよう。次は敵の戦力や戦術を確認するか)


 ハヤトはそう思い、拠点の砦を出て、王都にある施設へ向かった。




 ハヤトはクラン関係の申請が出来る施設へやってきた。


 目的は申請ではない。ここではクラン戦争の結果を見ることが出来るのだが、それともう一つ、クラン戦争の動画を見ることができるのだ。ハヤトの目的はそれだった。


 とはいえ、動画が公開されているのは上位クランの対決のみで、運営がピックアップしたものだけだ。戦っているプレイヤーの装備などは見た目しか分からないが、主に戦術を研究するために閲覧するプレイヤーが多い。


 ピックアップされた動画は過去のクラン戦争を含めすべて残されている。ハヤトは「殲滅の女神」が戦っている動画がないか探しに来たのだ。


 掲示板のメニューから過去の動画を漁り、目的の動画を探す。


(ピックアップの基準がよく分からないけど、いい試合をしたものが選ばれているのかね。そういえば、黒龍は一度もピックアップされなかったな)


 そんなことを考えていたら、検索していくとハヤトは目的の動画を見つけた。さっそく動画を再生して確認を始めるのだった。




 動画を見終わってハヤトは考える。


(なるほど、殲滅の女神ってあの白いドレスを着た女性のことを指してるのか。もともとはあの女性が立ち上げたクランだったのかな?)


 ハヤトはそんなことを考えながら拠点の砦へ向かって歩いていた。


 クラン「殲滅の女神」の戦術は、主にあの女性の攻撃によるものだった。それは魔法「メテオスウォーム」を連発するという戦術だ。


 メテオスウォームとは敵陣にランダムで隕石を落とす魔法でそれは十秒間続く。難点を言えば、発動までに時間がかかることと、MPの消費がはげしいこと、そして魔法を使うプレイヤーが相手の陣内にいないと使えないこと、の三つだろう。


 もしソロで使うなら、はっきり言って実用性はない。発動するまでに余裕で倒せるからだ。だが、その魔法を使った一人を多くの味方が発動まで守り切れば、かなりの攻撃手段となる。隕石は三発当たれば瀕死、四発当たれば確殺というレベルだからだ。


 クラン戦争でその魔法をしのぐには砦に立てこもるしかないだろう。砦からフィールドへの攻撃は可能だが、フィールドから砦内への攻撃はできない仕様となっている。砦の中は魔法の攻撃範囲外。一切ダメージは受けない。


 そんな魔法を連発するドレスの女性をハヤトは動画で確認したが、見立てでは発動までの時間を短縮させる装備を身に着けていると思えた。本来発動まで五分はかかる魔法が、それよりも早く発動していたからだ。


(魔法の威力は上げずに、連発を目的とした装備だと思う。初っ端からそれをやられたら、砦まで戻れないプレイヤーはすぐに瀕死だろう。下手したらそれでやられる。それに砦に立て籠ったとしても相手を攻撃出来ないなら総ダメージ数で負けだ。一か八かで飛び出るしかない。そこを迎え撃ちにされて終わりか。ネイなら間違いなく全員で玉砕アタックか)


 クラン戦争ではお互いにプレイヤーが倒れず、クランストーンも壊れていない場合は、お互いが与えたダメージ量で勝敗が決まる。ダメージ量の総数が多い方が勝ちだ。たとえメテオスウォームで相手を倒せなくてもダメージは高い。そして砦から外に出さないように魔法を連発すれば勝てるという寸法だ。


(こっちにはエシャがいるから砦からの攻撃は可能だ。たしか、メテオスウォームは相手の陣でないと使えないはず。ならこちらも射程範囲内だろう。でも、どう考えても防御されるよな。あのモヒカンがおそらく盾役。ドレスの女性に向けられた遠距離攻撃を防ぐわけだ)


 動画ではドレスの女性を守るようにモヒカンと数人のプレイヤーが立っていた。魔法を止めに来るプレイヤーの邪魔をするために配置されているのだろうとハヤトは考える。


(そしてレオンは砦のクランストーンを守る役目か。ドレスの女性を無視して砦へ向かってきたプレイヤーの邪魔をするんだろうな。敵陣まで通り抜けられるのは数人だろうし、通り抜けてもほぼ瀕死。なら独りでも勝てるという訳か。エリクサーとかあればまた別なんだろうけど、砦へ向かおうとしている敵がいて、モヒカン達がそのままでいる訳がない、レオンを助けに行くだろう)


 レオンの動きを見た限り、砦の中で防衛する形ではなく、自陣のフィールドに出て相手の動きに合わせて邪魔をする動きだった。モヒカン達もそれに合わせて微妙に行動を変えている。基本の戦術はそのままで臨機応変に対応しているのだ。


(さすがはAランク。なかなか隙がないね。それにこっちは色々条件がある。ただ勝つだけならいいんだけど、そうもいかないんだよな)


 開幕、アッシュのブレスならドレスの女性を倒せる可能性はある。だが、もし先にメテオスウォームが発動してしまったら、ドラゴンとなって体が大きくなっているアッシュは隕石に当たる可能性が増え生き残れない。それにもしドラゴンブレスが先に発動したとしてもレオンを巻き込んで倒してしまったら意味がない。レオンには剣を奪うまで生きていてもらわないといけないのだ。


 そして窃盗スキルは邪魔をするプレイヤーがいると失敗する可能性が高い。欲を言えば、レオン一人の状態で窃盗スキルを使わせたいのだ。


(レリックさんの戦闘力を聞いた限りでは格闘スキルが100だ。素手による攻撃には様々な状態変化を起こさせるスキルがあるけど攻撃力は低い。ドラゴンカースによって装備の強制解除をされたレオン一人ならともかく、周囲に敵がいるとまずいだろう)


 格闘スキルは素手や蹴りによる攻撃なので武器のダメージに比べると遥かに低い。だが、その技は多様だ。


 相手の攻撃を一度だけ完全に無効化する「白刃取り」や、一時的に行動不能にする「ローキック」、料理による効果を一時的に打ち消す「ストマックブレイク」などがある。とはいえ、どの攻撃も相手を倒すというより補助的な動作だ。


 同じ素手のレオンなら圧倒出来る可能性はあるが、周囲に武器を持った敵がいるなら危険だとハヤトは考えている。


(Aランクのクラン相手に条件が多すぎる。俺がやると言っちゃったから仕方ないんだけど……ちょっとみんなに相談してみるか)


 ハヤトは皆に拠点へ集まるように連絡した。




 拠点に集まった全員にハヤトは自分の考えを説明する。だが、全員が上の空というか、気になっていることがあるようだった。


「えっと、みんなどうかした? 俺の考えは今の通りだけど、何か気になることがあるの? というか、なんでみんなエシャを見てるのかな?」


 ハヤトは情報共有として知っている情報を全部伝えた。そしてどう戦えばいいかを聞いてみたのだが、なぜか全員がソワソワして話を聞いていないのだ。


 緊張に耐えられないのか、それとも年長者という立場からだったのか、執事のレリックが「よろしいでしょうか」と声をかけてきた。


「もちろん。何か問題があったかな?」


「いえ、問題があったわけではないのですが――いえ、問題ですかね。確認したいのですが、相手クランの名前は『殲滅の女神』で間違いないでしょうか?」


「そうだね。あれ? 言ってなかったっけ?」


「私は初めて聞きましたが皆さんも同じですか?」


 レリックの質問にエシャ以外が頷いた。


「ああ、エシャには言ってたっけ。準備で忙しかったから誰に言って誰に言ってないかよく覚えてないんだよ」


「いえ、私も初めて聞きました。そうですか、相手のクラン名は『殲滅の女神』ですか。さすがはご主人様。そういう大事な事をこの時点で言ってくるとは」


「何かあるの?」


「恥ずかしながら、このエシャ・クラウン、以前、『殲滅の女神』という二つ名で呼ばれておりました。個人的にはタダの女神だけで良かったのですが」


「おう……え? 殲滅はともかく女神?」


「その疑問的な言い方は私に対する宣戦布告ですか? いまここで殲滅の女神と言われた私の力を見せてもいいのですが? マジでデストロる」


「すみませんでした」


「謝罪は受け取りましょう。相手のクランがどの程度なのかは知りませんが、クラン戦争でその名前を受け継げるかどうか試してみます。受け継げるほどなら私はその二つ名を二度と名乗らず、タダの女神と名乗ります。女神エシャ・クラウン、良い響きです」


「女神を自称する気? まあ、やる気になってくれたのはいいけど、頼むから剣を取り戻すまで殲滅はしないでね」


 やや不安を覚えたものの、ハヤトは皆と一緒に作戦を考えるのだった。


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[気になる点] 新旧殲滅の女神対決!相手は死ぬ!!
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