幼馴染のお兄ちゃんの歌声
合コンはついに二次会のカラオケへ。
元バンドマンの二人の歌う曲はどんなものなのかな〜?
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ごくまれに幼馴染のお兄ちゃんの夢を見るらしい。
由香里
22歳 エステティシャン
千代の同期。美人で計算高い。
陽菜
22歳 エステティシャン
千代の同期。おっとりしていて皆に優しい。
知佳
22歳 エステティシャン
千代達の専門学生の友達。大阪に引っ越している。
瑛人と幼馴染。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。ギターボーカル
瑛人
25歳 不動産勤務
康太の高校の時の同級生、バンドでドラムもしていた。
篤史
25歳 家電メーカー勤務
康太の高校の時の同級生
竜次
25歳 システムエンジニア
康太の高校の時の同級生
初めのお店から出て、同じく駅前のカラオケ屋さんにみんなで歩いていく。
ちなみに男の子も女の子も飲酒は適量なので、それほど酔っ払っていることはない。まぁこれは合コンの鉄則なのだ。あまりお酒を調子に乗って飲み過ぎてしまうと……イケメンさんを逃してしまう!!
「てかさ〜、チヨってばこんなイケメンバンドマンの幼馴染がいたのに隠してたなんてずる〜い!」
ユカリが歩きながら私に言う。
「いやいや、さっきも言ったけど七歳でお別れしちゃってるし、そこから音信不通だからイケメンバンドマンになってるなんて私もわかんないよ〜」
ヒナも後ろから私をつっつく。
「ねぇねぇチヨ。エイトくんもカッコいいけど、コウタくんも同じくらいカッコいいよね。あの見た目でお店で接客されたら、なんでも買ってしまいそうだよね」
一瞬、お客さんのマダムにコウ兄ちゃんが甘い接客をしてる姿を想像してしまう……ダメダメ! そんな甘い接客しちゃ! て、私が言える筋合いはないのか。
駅の反対側だったカラオケ屋さんにはすぐ着いた。受付は会員証を携帯に登録していたユカリがしてくれた。電車の時間もあるし、一時間だけにした。
「みんな順番で歌っていこ〜! 一人二曲ずつくらい歌えるんじゃないかな?」
私はコウ兄ちゃんの歌が聴きたかったけど、コウ兄ちゃんはあまり興味はないようで、デザートのメニューを見ていた。
「コウ兄ちゃん、歌わんの? 私、歌ってるの聴きたいんやけど」
コウ兄ちゃんには小さい頃と同じ、関西弁で話す。
「ん〜、ちょっと待ってな。さっきのお店でデザート食べれんかったやろ。チヨ、このチョコバナナスペシャルサンデーが美味いと思うんやけどどう思う?」
私はそれを聞いて笑ってしまった。コウ兄ちゃんは小さい頃も確か、甘いものが好きだった。
「美味しいと思う。頼んであげよっか?」
「うんうん、頼むわ、ありがとう」
私とコウ兄ちゃんのやり取りを、ユカリがじっと見ていた。その横でチカは、アツシくんやリュウジくんに歌の選曲を勧める。チカはみんなのこと気にしてくれて優しいな。
アツシくん、リュウジくんは最近流行りのPOPSを歌った。うん、まぁ普通だった。
お次はヒナ、だいたいヒナは可愛いアイドルの曲を歌う。
「わっ、ヒナちゃんって、歌声になると全然変わるタイプやね。凄いアイドル声やん!!」
そうなのだ、ヒナは歌声が超可愛い。まぁ私も音痴ってことはないんだけど、可愛い声とか、美声ではないから、歌が上手い人は羨ましいんだよね。
アツシくんとリュウジくんがヒナちゃんの歌声にびっくりしている。すると少し離れて座っていたユカリが私のそばに来た。
「ねぇねぇ、コウタくんってどういう系の曲が好きなの? チヨ知ってる?」
「え、大きくなってからの好みはわかんないけど、なんとかライダーとか、ヒーローの曲を良く歌ってたような?」
「ヒーローモノかぁ〜! それはちょっとレパートリーにないなぁ……」
ユカリは歌でコウ兄ちゃんに気に入ってもらおうと思ったのかな? ユカリも私と同じで面食いだからな〜。
ヒナのあとはエイトくんが歌う。これはびっくりした。エイトくんは正統派のロックな曲を歌いそうだったんだけど、HIPHOPだった。しかもめちゃくちゃ上手い。
「エイトくん、ドラムしてただけあって、リズム感凄いよね〜!」
その後も、チカがダンスミュージックの曲を、ユカリは洋楽の有名な曲を歌っていた。英語の曲を歌えるの凄い!
私は迷ったんだけど、二人組の女の子ユニットの可愛らしい曲にした。ホントは私、ガールズバンドの曲が好きなのあるんだけど、元バンドマンの前でバンド曲を歌うのが恥ずかしくてやめた。
「コウタくん、曲入れてないよね? 何歌う?」
ユカリがコウ兄ちゃんに聞く。
「ん〜、なんでもええんやけど、デザートがもう少しできそうやから、後でいいかな。みんな歌いや」
というわけで、最後にコウ兄ちゃんには二曲歌ってもらうことにして、二週目をみんなで予約していった。ちょうどデザートも到着する。
「デザートやっと来たわぁ〜、食後はデザートやんね」
嬉しそうにしているコウ兄ちゃん。この顔は小さい頃に見た顔と変わってないな。私も自然に口角が上がってしまう。
「コウタくん、私食べさせてあげる。はい、あ~んして」
ユカリがコウ兄ちゃんの隣に来て頼まれてもないのに食べさせようとする。なんかわかんないけどやだな……
「あ、ありがとうな。でも自分で食べるから大丈夫やで。デザートの食べ方ってやっぱ人それぞれやし、好みもあるから」
お、意外と紳士なのか。コウ兄ちゃんはユカリからスプーンを受け取って、黙々とデザートを食べ始めた。
そして、二曲目もあらかたみんな歌って、あとはコウ兄ちゃんが歌うだけになった。エイトくんがコウ兄ちゃんに言う。
「たまにコピーしてたビジュアル系のあの曲歌ってや。俺あの曲好きやわ」
あの曲ってなんだろ?? まぁ、コウ兄ちゃんもそれでいいらしく機械を操作して曲を入れる。
聞いたことのない曲名だったけど、なんかイントロはオーケストラみたいな感じで。コウ兄ちゃんはデザートを食べ終えた満足気な様子で、マイクを手に取った。
初めの歌い出しから、これは反則だと思った。
「コウタくんの歌声、めちゃくちゃ甘いよね。ヤバい」
ユカリの言う通り、綺麗で、透き通った歌声で、それに甘い。え、え、これはダメでしょ、惚れてしまうでしょ。
サビのところとかも裏声の出し方が絶妙で、なんていうか、いやらしくない歌い方って言うのか。素直に聴き惚れていた。
エイトくんもホントにこの曲が好きなのかマイク無しで一緒に歌っている。仲良しなんだなぁ。
曲が終わって、思わず拍手をしてしまった。いや、これはしてしまうでしょ。
「あはは、久しぶりに歌ったわ。これちょっとモノマネも入ってるんやけどね」
その時に、店員さんからの十分前のお知らせが来た。チカがみんなに言う。
「少しだけ延長する?」
「「「する〜!!」」」
だってコウ兄ちゃんの歌声もっと聴きたいもん!
「俺とリュウジは帰るわ〜。終電もそろそろやし」
アツシくんとリュウジくんは大阪でも少し離れているらしく、帰るみたい。まぁ無理しちゃダメだもんね。
このカラオケの時間延長が良くなかった。




