感動の再会……そうでもない?
なんとなく、そんな予感はしたんだけど……
やっぱりコウタくんはコウ兄ちゃんだった!
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ごくまれに幼馴染のお兄ちゃんの夢を見るらしい。
由香里
22歳 エステティシャン
千代の同期。美人で計算高い。
陽菜
22歳 エステティシャン
千代の同期。おっとりしていて皆に優しい。
知佳
22歳 エステティシャン
千代達の専門学生の友達。大阪に引っ越している。
瑛人と幼馴染。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。ギターボーカル
瑛人
25歳 不動産勤務
康太の高校の時の同級生、バンドでドラムもしていた。
篤史
25歳 家電メーカー勤務
康太の高校の時の同級生
竜次
25歳 システムエンジニア
康太の高校の時の同級生
やっぱりそうだった……え、でもなんで??
「コウ兄ちゃん!!」
「「「コウ兄ちゃん??」」」
私とコウ兄ちゃん以外は、いやコウ兄ちゃん自体もわかってないかもしれない。というか、私自身まだ状況を把握してないし、まだ信じられない。
コウタくんがコウ兄ちゃん……?
「お〜、久しぶりやんか。元気やった?」
え、軽くない? で、でも。私がチヨってわかったってことだよね? それは嬉しいんだけど……
「チヨ? たぶんみんなが状況わかってないんだけど〜、コウタくんはチヨのお兄ちゃんなの??」
いや、実のお兄ちゃんなわけない。でも、コウ兄ちゃんと聞くとそうなるよね。
「俺、お腹めちゃくちゃ空いてるから、食べながら聞いてもいい?」
いや、アンタの話だよ。マイペースなコウ兄ちゃんだった。
「はいはい、どうぞ食べて下さいね。このお皿にちゃんと置いてるからね。あ、みんなごめんね。コウ兄ちゃんは……コウタくんは、ホントのお兄ちゃんじゃなくて、幼馴染ってだけで。えと、元々小さい頃は近所に住んでて。それで十年以上前にコウタくんがお父さんのお仕事の都合で大阪に引っ越したのよね」
ふんふん、とみんなが頷く。
「で、ずっと行方もわからなかったんだけど、久しぶりに出会ったのが今、っていうこと」
「え、え、チヨ。全然連絡も何もなくて、久しぶりの再会が合コンって、おかしくない??」
ユカリが聞く。ごもっとも、私もそう思うもん。
「コウタ、そういう話ってあまりせーへんもんな。てか、俺達も高校で初めて知り合ったくらいやからコウタの生い立ちとか知らんし」
と、エイトくん。高校の時の同級生ならまぁそうだよね。私がユカリやヒナ、チカの小さい頃まで知らないのと一緒だ。
めちゃくちゃ薄情なヤツだ。でも、久しぶりに見たコウ兄ちゃんは、やっぱりカッコよくて、背も凄く大きくなってる。しかもさっきのエイトくんの話だとボーカルギターをしてたって。きゃー、カッコよ!
「コウ兄ちゃん、十歳の時に引っ越してそれからどうしてたん?」
彼は夢中でご飯を食べている。
「お腹空いてる時は何食べても美味しいな。置いといてくれてありがたかったわ。あ、引っ越してからは……中学行って、高校はエイト達と一緒の工業高校行って。んで就職して家を出たんよ。家おったら親がウルサイからな〜」
なんていうか……久しぶりの感動みたいなのは無さそうで、でもなんかそれがコウ兄ちゃんらしいって言うか。
「高校卒業して就職して、すぐ一人暮らししてたんだ? 連絡ってできなかったの?」
私が責めることじゃないかもだけど、少しは言ってもいいでしょ、だって夢に見るくらいだったんだから。
「ん〜、連絡先知らんかったし? まぁ会えたからよかったやんか。てか……今、俺、奈良に住んどるよ?」
え、どういうこと?
「あ、チヨちゃん。コウタは今日は大阪に仕事に行ってたんやけど、普段は奈良の家電量販店で販売の仕事してるんやわ。奈良市の方やけどね」
エイトくんが説明してくれた。
「えっ! そうなん!! そんなん早く言うてよ〜!」
思わず素の関西弁が出てしまった。
「あ、まぁ色んなとこ転々としとるからな〜。奈良に引っ越して来たんも、去年? いや二年前? まぁ最近やで」
家電量販店の販売のお仕事ってそういうものなのかな? 私もわからないけど。それより、コウ兄ちゃんが来てからアツシくんとリュウジくんが口数が減っている気がする。
「コウタ、その器に入ってるスープめちゃくちゃ美味しかったで。飲んでみ」
アツシくんが言ったスープって……
「あ、これ? 凄い色なんやけど……うわっ! めちゃくちゃ辛いしマズイやん!」
野菜スティックに付ける辛いソースの器のことだった。アツシくんとリュウジくんがそれを見て笑ってる。ん……なんかやだな。
「みんな、そろそろここは時間なんだけども……次、どうする? 時間大丈夫なら少しだけカラオケとか行く?」
チカが雰囲気悪いのを見てみんなに声をかけた。
「私、カラオケ行きた〜い」
ユカリが手を挙げる。
「うんうん、一時間くらい行こっか。この近くにあるん? カラオケ」
「あっ、あるよ〜、ちょうど駅の裏側に」
ヒナがエイトくんの問いに答えた。駅前のカラオケは私とユカリとヒナの三人でも、よく行くところだ。
というわけで、お店のお会計を終えて、少しだけカラオケに行くことになった。まだ私は、久しぶりのコウ兄ちゃんとの再会にびっくりで、現実でないような、ちょっぴり夢を見てるような感覚かも。
少しだけのカラオケ、ということだったんだけど……これがまた凄く盛り上がった。
あまりにも偶然の再会過ぎて、まだ信じられないチヨ。
帰りの時間まで、少しカラオケに行くことになった。




