幼馴染の三つ上のお兄ちゃんと……
コウタとお別れする前にご飯を食べ、
ついにコウタは姫路に旅立った。
コウタとメル友になったという母親。どういうこと?
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ある日の合コンで、三つ上の幼馴染、コウタと再会する。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。10歳の頃、両親と大阪に引っ越したが、現在は奈良市内に喜平と共に住んでいる。そして、今度は兵庫県の姫路へ行くことになる。
由香里
22歳 エステティシャン
千代の同期。美人で計算高い。
千代の母
52歳 スーパーのレジのパート
リビングで母親が急に口を開く。
「チヨ〜! お母さん、コウちゃんと実はメル友なんやで〜、知ってた?」
母親よ、そんなことは聞いてない。
「お母さん、年甲斐もなく若者とメール交換とかしないでよね〜。しかも私の彼氏だし!」
私はコウちゃんのことを偉そうに彼氏と呼んでみた。精一杯の強がりである。
「あれ? チヨ、コウちゃんと正式にお付き合いしてるん? 母さん知らなかったわ〜。そうか、彼氏か〜! 彼氏ね〜」
「もうそんなことはいいの〜! 仕事行ってくるね〜」
コウちゃんが兵庫県の姫路に異動になってから、もう十日が経つ。暦は十月になった。
私は大和八木の駅近くのエステサロンで、相変わらず働いているし、ユカリとヒナとも相変わらず仲が良い。
あ、そういえばチカとエイトくん。チカが大阪で知り合った、って言ってたコウちゃんの同級生なんだけど、やっぱり予想通り付き合っていたみたい。
それぞれの友達同士を紹介して仲良くなってもらおう、ということで合コンを企画してくれたらしくて、付き合ってるのを隠していたのは、シラケてしまうのを防ぐためらしい。チカとエイトくん、お似合いだったな〜。
「おはよ〜、チヨ! 元気にしておるか〜!」
今日は朝からユカリと同じシフトだった。ヒナは休みみたいだね。ユカリは相変わらず明るく元気だった。
「おはよ、ユカリ。まぁぼちぼち元気だよ〜ん。コウちゃんがびっくりするくらい、いい女になるために女磨きするのだよ〜!」
具体的にはもちろん何も考えていない。でも……たまに会うコウちゃんに、
『おっ、チヨ。この前見た時より更に綺麗になったね』
なんてね! なんてね!
言われるように、頑張ろうと思っているのだ。
「女磨き! チヨは磨かなくても充分可愛いし、綺麗だよ〜。これは私が言うんだから間違いない」
ホントにユカリは優しい。
「ユカリ、ありがとね。あっ、今度ヒナとしゃぶしゃぶ食べ放題行こうよ〜! 秋はやっぱり食欲の秋!」
「しゃぶしゃぶ食べ放題……これはもう行くしかないのう〜! 女磨きにはしゃぶしゃぶが必須と古い書物にも書かれておるからのう〜。よし、またヒナに連絡して、日にち決めるべ〜!」
持つべきものはやはり友達だ。
そんなこんなで一日、仕事を頑張る。
◇ ◇ ◇
「ただいま〜」
「チヨ、おかえり〜。今日は忙しかった?」
母親は、たまに私の仕事のことも聞いてくる。
「ん〜、まぁぼちぼちかな? あ、今度ユカリとヒナとしゃぶしゃぶ食べ放題に行ってくるよ〜」
「あ、そうなの。しゃぶしゃぶでも焼き肉でも食べてきなさいな。あ、今度の週末ってどっちかお休みあるの?」
母親はまぁまぁテキトーである。
「んー、土曜日は休みだけど……どうしたの?」
「あ、家の冷蔵庫がね。調子は悪くないんやけど、前の洗濯機と同じでまぁまぁ古いから、電気屋さんに下見に行こうかなと思って。前に洗濯機買ったとこあるでしょ? チヨ、一緒に付き合ってくれへん?」
洗濯機買ったところって……
「あのショッピングモールのとこだよね? 車で三十分もかかるし、近くの小さい電気屋さんに見に行ったら?」
「近くのところでもいいけど、あの大きいショッピングモールが、割と母さん気にいっちゃったのよ〜。何もないなら、お寿司食べに行きがてらいきましょ?」
うーむ。まぁお寿司食べれるならいいか。寿司に釣られる私。
ホントは、あの電気屋さん。コウちゃんがいたところだから、コウちゃんのこと思い出しちゃうから行きたくないんだけどな〜。
んー、でも。コウちゃんにメールを送るネタができるか。それはそれで良しとするか。
「わかった! もうお寿司にしゃぶしゃぶに食べまくってやる〜!!」
「チヨ、しゃぶしゃぶは違う日にしてね」
◇ ◇ ◇
そして、週末。
そうそう、コウちゃんには
「前にコウちゃんが洗濯機を説明してくれた、モールの中の電気屋さんに、今度の土曜日にお母さんと冷蔵庫見に行くよ〜! 説明しにきてほしいな〜!」
なんて、送ってみた。
『いいやんか、冷蔵庫。またわからんことあったらいつでも聞いてくるんやで』
と、返ってきた。
姫路じゃ、気軽に聞けないよ……私は、メールとか電話じゃなくて、コウちゃんに直接聞きたいんだから。
運転は前と同じく私がした。真っすぐの道だから楽は楽だ。
「もぉ、お母さんもたまには運転してよ〜!」
「お寿司おごってもらうんだからいいでしょ? 母さんたまに見えにくくなるから、運転危ないのよ」
まぁまぁ、老眼入ってきてるらしいから、あながち嘘ではないらしい。まぁ仕方ない。
「そういえば、冷蔵庫って次はどのくらいのが欲しいの? 前みたいに今の冷蔵庫の写真とか撮ってきた?」
これはコウちゃんが教えてくれたことだ。洗濯機を買い替える時に、今の洗濯機の型番を写真撮って見せることで、買い替えをスムーズにしてくれた。
「あっ、何もしてないわ。まぁ冷蔵庫は見るだけだからいいんじゃない」
やはり、母親はテキトーである。
ショッピングモールに着いた。
前に来たときはコウちゃんがエアコンのところでお仕事をしていた。
今日は……いない。
「あ、母さん先にお手洗い行ってくるから、チヨは先に電気屋さんの中、ぶらぶらしといてよ」
「ん、わかった〜。あ、ヘアアイロン見とこうかな〜」
電気屋さんのドライヤーとかを売っているとこに、髪の毛をカールとかストレートとかするヘアアイロンが置いているのだ。
最近はめちゃくちゃ種類も多くて、すっごくいいのも売っている。
「いらっしゃいませー」
遠くで呼び込みの声が聞こえてくる。
洗濯機の説明してくれたコウちゃん、カッコよかったな〜。今の使ってる洗濯機をどんなのか見て、母親の要望も聞いて、的確にアドバイスしてくれた。
しかも、お店の人とも仲良くて、配達の日にちとか、価格交渉までしてくれて。凄く頼もしかったな。
また、前みたいにぎゅってしてほしいな。
私はヘアアイロンを色々物色しながら、コウちゃんのことばかり考えていた。
それにしてもお母さん遅いな。
「ガスファンヒーターは、いらんかね〜」
なんだか、暖房機の売り込みをしてるのか、声が遠くから聞こえる。
こんなドライヤーコーナーのあたりまで呼び込みしにくるのかな。
コウちゃん……会いたいな。
「ガスファンヒーター、いらんかね〜」
ん? さすがに声が近い。
ていうか。この……声って。
私は下を向いてた顔を上げる。そこには……
「こ、こ、こ、コウ……ちゃん!?」
「チヨ、気づくの遅すぎん?? 俺、まぁまぁ前から周りウロウロしてたんやけど」
え。さっきの呼び込み?
てか、ど、ど、どうして??
「コウちゃん……姫路の、お仕事は? ここ、前のお店だよね? 今日だけ応援とか?」
コウちゃんはふと考える顔をする。
「ん〜、ちょっと確定もしてなかったから、チヨには言えなかったんやけどな。あとでガッカリさせてしまうのもあれやから。派遣会社の営業さんと、メーカーさんと、あと、ここの店舗の店長さんで話しあってくれたらしくて」
え。え。どういうこと? 話し合い?
「姫路の方の店舗に行く、販売の人を近辺で探してくれて、逆にここに入る予定の暖房機メーカーの人を俺にしてくれた、っていう話」
「そ、そんな凄いことできるん? てか、引っ越し?」
「そやでホンマ、せっかくやから姫路城は行ってきたけどな。チヨのおばちゃんから聞いたで、なんかあまり元気なかったんやろ?」
え、お母さん? あれ、そういえばなんかメル友になったとか言ってたような……まさか、二人で連絡取り合ってたのかな?
「今日、冷蔵庫見に行くって……」
「うん。ちょうど今日から出勤開始なんやわ。おばちゃんがチヨに聞いてみて、行けそうなら連れていくわ、って」
あ、ここに勤めるなら、お家……もしかしてまた、おにへーくんの家……?
「あ、それでな。橿原市にちょうど頃合いのワンルームマンションがあるみたいなんやけど……今度一緒に見に行ってくれへん?」
「か、橿原……」
半年後まで、私。なんとか頑張るって決めてて。
でも、やっぱり寂しくて。
こんなすぐ挫けそうな自分が情けなくて。
でも、今目の前にコウちゃんがいて。
「コウちゃん……」
「ん? どうしたん、チヨ」
私はコウちゃんに思い切り抱きついた。
「コウちゃん! 大好き!! 会いたかったよ……大好き!」
「あぁ……俺も、会いたかったで」
コウちゃんは私を受け止めて、頭を撫でてくれた。
小さな頃から一緒だったコウちゃん。
でも、七歳の時に突然の引っ越しで離ればなれになってしまう。
十五年後に感動の再会をするけど、その再会の場は合コン。
でも、そんな再会だったとしても。
私はコウちゃんが大好きで。
もしかしたら、これから二人に問題が起きることもあるかもしれない。喧嘩もあるかもしれない。
でも、その時はきちんと向き合って話し合っていこう。好きな気持ちが無くならないようにしよう。
とりあえず今の時点では、私はコウちゃんが大好き。めちゃくちゃ大好き。
これは私が、幼馴染の三つ上のお兄ちゃんと久しぶりの再会をして、ものすごーい大恋愛をするというお話の。
はじまりの、はじまりなのです。
完
今回のエピソードで、
「幼馴染の三つ上のお兄ちゃんと十五年後の合コンで再会した話」は、完結となります。
幼馴染のお兄ちゃんと久しぶりに合コンで再会するという、え、どういう設定? 大丈夫? という内容のお話を、最後まで書き切ることができたのは、
ひとえに、お話を読んでくださる皆様、応援してくだった皆様、リアクションや感想や評価を付けていただいた皆様、相互ユーザーの皆様のおかげです。
この後書きを、皆様への感謝の言葉と替えさせていただきます。
これからも、チヨとコウタの恋愛を、応援していただけますと嬉しいです。
ありがとうございました。
上の画像は、今回のラストエピソードのイメージイラストを、生成AIを使用して作成したものです。




