一方通行の恋心
夜のドライブデートから数日後、
職場でチヨとヒナは恋愛話に花が咲く。
アツシのグループメールがキッカケで、今度は奈良県発祥のカジュアルレストラン【ベビーフェイス】にみんなで行くことになった。
◯登場人物
千代
22歳 エステティシャン
奈良県橿原市に住む。祖母、母親と三人暮らし。ある日の合コンで、三つ上の幼馴染、コウタと再会する。
康太
25歳 家電量販店のメーカー販売員
瑛人とはバンドを組んでいた。10歳の頃、両親と大阪に引っ越したが、現在は奈良市内に住んでいるようだ。
六月の中旬にベビーフェイスデートに行くことになった。
夜のドライブデートに行ったのが五月の終わり頃だったので、それから半月くらい経ったことになる。やっぱり複数の人数で休みを合わせるのはなかなか難しいのだ。
ホントはね、私はコウちゃんと二人きりのがよかったんだけどね。でも、グループメールで送ってきたのがアツシくんだったこともあるし、初めの合コンからで数えると、三度目になるのかな? 私だけ抜け駆けするのもやっぱり気が引けるのもあったり。
あ、ユカリは初日に抜け駆けしちゃってるのか、あれはけしからん! まぁ……コウちゃん自身はキスされたとも気づかないくらいらしいので、ノーカウントにしておこう。
それよりもね。なんだか、コウちゃんがあまりメール返してくれないんだよね……
前にね、夜のドライブのあとだったかな。服装を褒められたのが凄く嬉しかったことをコウちゃんに伝えたのよ。
そしたら、その返事のメールがこれ。
『あぁ、今の女の子ってみんなオシャレやんね。そういえばお店のお客さんでも、ああいう服装のお客さんがおった気がするわ』
そんな返事なんて欲しくないのに……そういう時はあれだよ「今度もあの服装で来てくれ、俺の前だけだよ」とか「チヨも大人の女性になったな、俺、見違えてしまったよ」とかだろうよ〜!! 自分で想像してても、恥ずかしいけども!! てか、コウちゃんは関西弁か。
てかね、前もそうだったんだけど、やっぱコウちゃんにとったら、私はまだ妹みたいな存在っていうか。小さい時に過ごした名残りのほうが強いのかな……私からしたら、コウちゃんは昔もずっとカッコよかったし、今でもそう。
むしろ、高校の頃とか、大人になってから音楽をしてたりとか、昔のヒーロー大好きのコウちゃんのイメージと違うところもあったりして、尚更好きになってしまっている。
きっと……きっとこの恋心はまだ一方通行なんだなって思う。でも、少しでもコウちゃんと繋がっていれるなら、少しずつでも近づいていけるなら、それでいいのかな、って思ってる。
いきなり私が、コウちゃんに告白したとして。
もし、その場で断られてしまったら私はきっと泣いてしまう。
泣くだけならいいけど、きっと立ち直れないよ。それならむしろ、再会できなかったほうがマシだったのかも、って思うかもしれない。
ううん、ううん。今はそんなことは考えないでおこう。
だから、今はこれでいい。私だけのコウちゃんじゃなくていいの。私が私が! ってなってしまった場合、きっとコウちゃんは困ってしまう。それに、コウちゃん自身の気持ちも、もちろん大事だもんね。
あ……それを考えるとね、私と離れていた十五年の間に、コウちゃんはどう過ごしていたんだろう、って考えたりしてしまう。
大阪でどんな友達ができて、どんな人と出会って。例えばどんな女の子を好きになって。どんな女の子に好かれて。お付き合いしてたこともあったのかな。
あぁ、もうっ! 聞いてもいないのに、嫌な想像ばかりしてしまう。
もしだよ? コウちゃんが今まで何人かの女性とお付き合いしてきたことがあったにしても、それを私がとやかく言うことじゃないもんね。
でも、でも……こんな時に、私は自分のことが嫌いになるんだ。
好きな人の過去にまでヤキモチを妬いてしまうなんて、なんて嫌な性格。でも、この気持ちはどうしようもないんだよ。
「コウちゃん、デザートとかパフェとか甘いものも好きって言ってたよね? ベビーフェイスにすっごいジャンボサイズのパフェがあるよ〜、一緒に頼んで食べよ〜!」
ベビーフェイスデートの前日にコウちゃんにメールをしてみた。
『おっ、そんなサイズのパフェがあるんや! ちょっと期待しとくわ〜。 明日はお昼ご飯少なめにしとかないとあかんな〜』
コウちゃんは乗ってくれた。
明日は久しぶりに会える。
楽しみだな。
◇ ◇ ◇
ベビーフェイスデート当日。
私とユカリとヒナは、いつものように大和八木駅から近鉄橿原線に乗って、大和西大寺駅に行く。大和西大寺駅から車で二十分くらいのところにある、割と新しく出来たベビーフェイスの店舗に行くことにしたの。ベビーフェイススカイテラスというなんだか洒落た名前だ。
他の店舗よりも扱っているメニューが少し豊富みたいだけど、私達は普通にオムライスとかが食べれたらいいのであまり気にはしなかったけど。
前の夜のドライブデートの時と同じく、アツシくんがリュウジくんを乗せてやってきて、コウちゃんも四人乗りの軽自動車で来た。
「チヨちゃん、せっかくやから今日は俺の車に乗ったら?」
アツシくんが自分の大きい車に乗るように勧めてくれた。
「あ、アツシくんごめん。コウちゃんの車に乗る予約をしちゃったんだ」
もちろん、そんな予約はない。ごめんね、アツシくん。
「そうなんや、まぁいいんやけど」
「あっ、今日行くベビーフェイスは、私達もまだ行ったことないところなの。凄く楽しみ〜!」
ユカリがフォローしてくれた。
夕方早めに店舗には到着したので、まだ店は混み出す手前だった。
さぁ、ベビーフェイスデートの始まりだ〜!!
色々とモヤモヤした思いを抱えるチヨだったが、
まずは今の目の前のことを、コウタに会える今の環境を楽しむことにする。
六人でのベビーフェイスデートは楽しいものになるかな?




