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無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


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緊急招集



ナオが加入してくれてから数日。

私は姉に呼び出されて、早朝から斑鳩本家のビルへと顔を出していた。

最近はチームのビルに住んでいたからここへ来るのも久しぶりだ。

「麗奈姉さん。どうしたんですか?」

「今回はちょっと自警団の力も借りたいのよ」

「もちろん私達も仕事ですし、指令とあれば動きますよ」

「ちょっとキナ臭くってね…。本当なら巻き込みたくないんだけど、警備の手はいくらでも欲しい状況なの」

普段冷静な麗奈姉さんがここまでいうなんて。一体何が起こるんです?


「神楽と神威がずっと衝突してるのは知ってるわよね?」

「はい。その為に前回の横流し事件があったくらいですし」

「両国がやっと話し合いをする事になったのだけど、指定してきた場所がナイトレスシティ(うち)なの」

「神楽という国の中に属してはいても、人の住む街から離れた荒野の真っ只中。その上神楽の法も通用しない、ある意味中立地みたいなものだからですか?」

「話が早いわね。他の国も大体はどちらかの派閥に入っているから、完全に中立と言える場所が無いのよ。で、白羽の矢が立ったのがここ」

「なんて迷惑な…」

「本当よ。仮にどちらかへの襲撃でもあればうちまで巻き込まれるわ。だから絶対にトラブルを起こさせるわけにはいかないの」

「そうですね。何かあってうちがどちらかへの加担を疑われたら面倒ですし」

「ええ。だから万全な体制で警備しなくてはいけないの。手を貸してくれる?」

「もちろんです。私だって斑鳩の娘なんですから」

「助かるわ。でも危険も伴うから無理はしないのよ」

「わかりました」

麗奈姉さんの心配は最もだ。


確実に会談なんて言うのは名目で、どちらかがうちを取り込みたいがための茶番だろうなんてのは私でもわかる。

神楽という国に属しているのに、どうしてナイトレスシティが神楽の法も権力も通用しないか…。そんなのは単純な話だ。金と力。


うちは国ですらない大きな街一つとはいえ、歓楽街であり色々な国からあらゆる人が集まって金を落とす。

その為に力…つまり軍事力も相当な力を備えている。例えば神楽と真正面からやりあえば普通に勝てるくらいには。

武器弾薬も独自に開発しているし、ドローン兵器も無数に配備している。それらを神楽へ向けてしまえば一晩で焦土にだってできる。

でもそんな事はしない。面倒くさいから。国を焼き尽くして何になる?客が減るだけだ。


栗生だってそれはわかっているから、兵器に関しては横流ししていなかった。当然だ。いつ敵になるかわからない相手に武器を渡す愚か者は居ない。

まぁ中央倉庫にある兵器なんて何代も前の骨董品だから、流されたところで痛くも痒くもないのだけど。緊急時に下っ端に持たせるために置いているに過ぎない。


麗奈姉さんから警備計画書を受け取った帰り道、チームUiとUimeNへと招集をかけた。

いつものビルに集まるようにと。今回は緊急なのもあり、参加拒否は認められないとの一言も添えて。

本来ならこんな強制的な招集なんてしたくはないのだけど、みんなの安否にも関わるからね。警備任務への参加の有無に関わらず情報だけは共有しておかなくては。



突然の事だったし、集まるのに多少の時間がかかったけど全員が集まってくれた。

「初めてじゃない?うるあから強制招集なんて」

「ごめんね。本当ならみんなには自由にしていてもらいたいのだけど、全員の安否に関わることだから許してほしい」

「誰も文句なんてないって。びっくりしたってだけ」

全員が頷いてるから本当にそうなのだろう。ありがたいよ…。


呼び出した理由を詳しく説明して、警備に参加するかは個人の判断に任せると伝える。

「そこでリーダー権限で強制参加させないのがうるあらしいよね」

「本当によ。全員参加するわよ、当たり前じゃない」

「人手がいるんだろ?UimeNも頼ってくれればいい」

「みんな、ありがとう」

「私達の街なんだから! 今までもこれからも守っていくよ!」

全員参加してくれるというから、警備計画書を見せながら私達が受け持つ場所を確認していく。


「これは二人一組くらいに別れて配置につかないと駄目だね」

「うん。一応警備ドローンも飛ばすし、うちの手の者も総動員させるけど、機動力があって街の裏路地まで把握してるのは私達だからね。大変だけどお願い」

「任せて! あ、うるあはナオと組みなよ。二人の速さについて行ける程私達はまだ動けないし」

「あ、ごめん。私は立場的に別行動しなくてはいけないの。ごめんね、ナオ…」

「申し訳なさそうにしなくていい…仕事とは切り替えてる」

「ありがとう」

ナオって付き合い始めてよくわかったけど、二人きりだと結構甘えてきたりと可愛いんだよね。

言葉数は少ないけど、いつも隣にいてくれる感じ。


「本当だ、やっぱりうるあは斑鳩として対応しなくてはいけないんだね」

警備計画書を見ながらカリンのそんなセリフ。

そうなんだよね、姉達と一緒に会談の行われるその場にいなくてはいけない。

しかも相手が指定したのは普段野外ライブとかをしている開けた場所なのがまた質が悪い。

周囲にいくらでも狙撃ポイントはあるし、私なら絶対にそんな場所は選ばない。これは麗奈姉さんも同意見だった。間違いなくなにか仕掛けてくる気だ…と。

もちろん対策はするけれど、街に入ってくる人間に関して警戒するには限界がある。とっくに街の中に潜んでいたっておかしくないのだから…。


「インカムは常に繋いでおくから、何かあればいつでも連絡してくれればいいよ。現場の指揮はカリンに任せるから」

「りょーかい。判断に困ることがあれば連絡するよ」

「うん」

頼れるうちの副リーダーだからね、カリンは。



そんな訳で、私達は会談の行われる当日までに見回りを兼ねて、予行演習やら不審物の有無を確認するため街中を駆け回るのだった。









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