表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無口なパルクーラーは眠らない街を翔ける  作者: 狐のボタン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/7

ケジメ



中央倉庫へ到着すると、斑鳩(うち)の手下達が集まってる。しかも暗部まで動かすほどって…。

麗奈姉さん、もう少し情報くれないと指揮のしようがないんだけど?

「お嬢、麗奈の姐さんからこちらを預かってます」

「ありがと。何度も言うけど、お嬢言うな」

受け取った書類を確認すると、頭が痛くなるような内容で…。


今回の血液パックの不足、そもそもの原因がうちの傘下の家が関わってたらしい。

しかもこの中央倉庫から物品の横領と横流し。ここを任せていた一家の若頭が黒幕とか、頭痛の種でしかない。

「麗亜様、どうします?」

栗生(くりう)一家の者は全員捕らえて。逃げようとしたら攻撃も許可する。できる限り生け捕りにして欲しいけど、自分たちの身の安全を最優先にしなさい。一人も逃がすな!」

「御意」

栗生の本部には次女の麗華姉さんが直接行ってるらしいから大丈夫だろう。いや、むしろ大丈夫じゃないかもしれない。

家そのものが更地になるかも…

ドガーーンと凄まじい破裂音。あー…やったなぁ。


音の方向は間違いなく栗生一家のビルのある方角。ここからは土煙しか見えないけど、下手したら既に建物は無いかもしれない。派手にやったなぁ、麗華姉さん。


書類を見ていたら、一人逃げてきたからワイヤーフックを当てておく。

「お嬢! すいやせん、お手を煩わせてしまって」

「そんなのはいいから。逃さないよう気をつけて」

「うっす!」

暗部まで来てるのに何してんのよ。



再び書類へと視線を落とす。

えーっと、つまり…血液の培養設備があるのなんてナイトレスシティだけだから、神楽へと高く売れると。他にも培養臓器や食品とかも流してたのか。

中でも一番多かったのが血液パック。神楽側で何かあったなこれは…。

一気にこんな需要が増える筈が無い。そっちの情報はっと……。

隣国との小競り合いで兵が多数負傷?神楽と仲が悪いのなんて神威くらいか。あそことはしょっちゅう国境を挟んで小競り合いしてるけど、今回は規模が大きかったのかもしれない。


というか、麗奈姉さん。私が情報を送って一時間もかからずにここまでの情報を集めて斑鳩(うち)の者を動かすとか…。本当すごい。間違いなく情報が漏れないよう対策していたはずなのに。

私には到底無理だ。それこそ自分のチームメンバーを纏めるくらいが限界…。

人との交渉も下手だ…想い人に愛想を尽かされてるくらいだもの。

いつも現場にいたのは私なのに…。何も見えてなくて気が付かなかった。

これはナオに睨まれても仕方がない。


「麗亜様、全員捕らえました」

「怪我人は?」

「うちの者は無傷です。栗生側に数人」

「手当は?」

「済ませてます」

「よし、じゃあ連行して。私は麗華姉さんの所へ行ってくるから」

「また麗華の姐さん派手にやりましたからね」

「うちの子たちも向かってるみたいだから、様子見てくるよ」

「お気をつけて」

軽く手を振って答え、栗生のビルへと走る。

インカムに仲間の会話が聞こえてはきてるけど、大騒ぎしてて把握できないんだよね。


ビルの上へと駆け上がって栗生のビルの方向を見るも、未だ土煙と夜闇のせいで全貌が把握できない。あの辺りは照明さえ消えてしまっているから。

「みんな落ち着きな! 巻き込まれた人とかいたら助けてあげるんだよ! それと周囲数ブロックの民間人を避難させて! 私も向かってるから」

「”そっちは麗華様が済ませてるから大丈夫! ただ何も見えなくて…ごほっごほっ…”」

「救助対象がいないのなら、全員ある程度の距離を取りなさい! 埃で肺をやられるよ」

「”りょー”」

麗華姉さん、加減してくれないかな。…無理か。


ビルからビルへとを飛び越えつつ、ぎりぎりまで近づいた屋上に仲間も集まってきた。

これ以上進むのは視界の確保もできないから危ないな…。

「麗華様、派手にやったみたいね」

「本当にね…」

当の本人はピンピンしてるんでしょうけど。

多分ワイヤーフックで何か引っ掛けて振り回したんだろうな。

現行型のワイヤーフックは私が監修してるんだけど、麗華姉さんは使い方がおかしい。メンテする技術チームに同情するよ…。間違いなく重量制限超える使い方してるから壊れてるはずだし。



うーん…よく見えないけど、確実にビルは無いなったな。

栗生はそんな大きな一家ではないし、ビルも4階建てのが一つと、周囲に持ち家が数件程度だった。

多分、きっと、おそらく…全部破壊されたんだろうけど、証拠集めとかどうする気だろう。

現場での証拠なんてもう不要って判断なのだろうか。

「”麗亜! 麗華を止めなさい!! やり過ぎです!”」

「無茶ですよ麗奈姉さん」

「”あの子、麗亜の言う事なら聞くでしょう!”」

確かに麗華姉さんはどんなお願いでも聞いてくれるんじゃないかって錯覚するほど私には甘いけど、キレてない時限定なんですって。

仮に私でもキレさせるようなことをしたら普通に殴られる。裏の世界の人間だからこそ、その道理を外れるのを絶対に許さないから…。”裏には裏の道理がある、信念を持って義を通せ”って口癖みたいに言ってるのもそのせい。


…幼い頃、まだ斑鳩という名前の重さを理解せず、調子に乗っていた私が取り巻きを連れてイジメをしたことがあった。

本当に些細なことがきっかけだったのに、私はその子を仲間外れにして泣かせた…。

麗華姉さんにそれがバレてめちゃくちゃに叱られた挙げ句、斑鳩本家のビルの屋上から初期タイプのワイヤーフックで吊るされたっけ。地上四十階を越える高さに。

あの時のスリルが忘れられなくてパルクールを始めた私も大概だとは思うけどね…。

普段優しい麗華姉さんに叱られた事の方がよっぽど怖かったんだもん。多分その反動だったんじゃないかな、高さへの恐怖なんて感じなかったのは。

あれがあったお陰で、斑鳩という名前の重さ、人としてやっちゃいけない事や道理というものを少しは学んだんだと思う。


因みに麗奈姉さんは別の意味で怒ると怖い。

怒鳴ったり手を上げたりはせず、ただジッとすっごい威圧感を向けられたまま、私が反省の言葉を言うまで部屋から出してくれない。

しかもちゃんと何が悪かったのか理解するまでそれは続く…。

見た目だけで言うなら麗奈姉さんはおっとりとした清楚美人にしか見えないし、麗華姉さんはゆるふわ美人。

まぁ、そうはいっても裏社会の人間なのは変わらない訳で。苛烈な部分はどちらにもあるのは当然。

私だっていざとなれば…。


どうやって麗華姉さんを止めようかと悩んでいたら、砂埃の中から飛び出してきた人影が私達の立っているビルへと着地。

直後に頭を抱きしめられて息が…。このサイズ感、間違いなく麗華姉さんだ。

「うるあちゃ〜ん! お姉ちゃん頑張ったよ〜!」 

「っぷはぁー! 麗華姉さんやり過ぎです! 麗奈姉さんが怒ってますよ」

「えっ…嘘よね?」

「本当です。どうするんです?この惨状…」

「だってぇ〜バカがグダグダと言い訳して認めないんだもの〜。証拠も揃えてあるのに。だからつい〜」

つい〜、でビルを破壊できる姉が私は怖い。こんなゆるふわな人がそんな事するって誰が思うだろうか。

この街の中に限ってなら、絶対に怒らせてはいけない人ナンバーワンとして周知されてるだろうけどね。


よそから観光に来た人が知らずにナンパして、”じゃあうちにくる〜?”と、家へ連れてきた時点でみんな逃げていく。

それをみて姉さんは悲しそうに笑う…。いつか物怖じしない人が現れたら姉さんと結ばれるのかもしれない。


数時間後、砂埃が晴れてから栗生の建物があったエリアは完全に封鎖され、数日かけて証拠品の押収やら瓦礫の撤去作業が行われた。

もちろん、その作業に私と麗華姉さんが参加してたのは言うまでもない。止められなかった私も連帯責任だって…。

「もうめんどくさ〜い!」

とか言いつつ頑張ってるなぁ麗華姉さん。

仕方ないか。麗奈姉さんがめちゃくちゃ怒ってたもん。さすがの麗華姉さんでも逆らえないよね。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ