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城壁の街と冒険者ギルド

 昼下がりの陽光の中、街道の先に巨大な石壁が姿を現した。

 灰色の城壁はどこまでも高くそびえ、人々を守る要塞そのものだ。


 門前には荷馬車や旅人の列ができ、兵士がひとりひとりを確認している。

「……これが街か」

 初めて目にする本格的な都市の姿に、思わず息をのんだ。

 村の木柵とは比べものにならない威圧感がある。


 クロワンのエンジンを落とし、押して門に近づくと、兵士が怪訝そうにこちらを見た。

「おい、それは……獣か? 鉄の車輪?」

「乗り物だ。ちょっと変わってるけど、害はない」

 説明になっていない説明をすると、兵士はますます眉をひそめた。


 だがサイラスの署名入りの書状を見せると、態度が和らぐ。

「……ふむ、確かに印は本物だな。では通れ」


 銅貨を数枚払い、兵士が槍を立て直す。


「――石の街、ロウストンへようこそ」


 その一言とともに、俺は高い灰色の城壁の内側へと足を踏み入れた。


【燃料残量:92%】


「……思ったより減るの早いな。街で燃料の目処を探さないと」



 街の中は活気に満ちていた。

 石畳の道には人と荷車が行き交い、香辛料や布、革細工を売る声が飛び交う。

 村では見なかった鮮やかな色彩と強い匂いが混ざり合い、頭がくらくらするほどだ。


 クロワンを押しながら歩く俺に、人々が好奇の目を向ける。

「鉄の馬だ……」

「魔導具か? 見たことないぞ」

 声がひそひそと後ろからついてくる。



 目的地は冒険者ギルド。

 石造りの二階建て、表には剣と盾の看板。

 酒場のようなざわめきが建物の外まで響いてくる。


 入口の脇には馬や荷車を繋ぐための庇下が設けられていた。

 俺はクロワンをそこに押し入れ、タンクを軽く叩く。

「ここで待っててくれ」

「ブルル……」

 エンジンが低く応えた。


 深呼吸して、ギルドの扉を押し開けた。

 途端に広間のざわめきが一瞬止まり、冒険者たちの視線が集まる。


「外にある鉄の塊……あれの持ち主か」

「あの鉄馬……厄介そうだな」


 好奇と警戒の混じった視線。

 俺は慣れてはいるが、やはり居心地は悪い。



 受付カウンターに向かうと、若い受付嬢が驚きつつも笑顔を見せた。

「ようこそ冒険者ギルドへ。……登録をご希望ですか?」

「俺は黒瀬遼。遼と呼んでくれ。相棒はクロワンだ」


 名乗ると、彼女は一瞬言葉を失ったが、すぐに書状に目を通す。

「これは……辺境の村のサイラス様の推薦状! でしたら問題ありませんね」


 周囲がざわつく。どうやらサイラスの名はここでも知られているらしい。


「では、遼様を正式に冒険者として登録いたします」


 受付嬢は書類を整えながら、言葉を続けた。

「ランクアップには“討伐・護衛・偵察”の三種類を少なくともこなす必要があります。数を積めば昇格審査を受けられますよ」


 手続きが終わった瞬間、視界にウィンドウが浮かんだ。


【冒険者ギルド登録完了】

・ランク:F

・新機能:サイドバッグ収納 解放

 効果:収納アイテムを即座に取り出しやすく配置できる

・登録枠:5


「……Fランクか。最底辺スタートってのはテンプレだな」


 クロワンの両脇に革製のバッグの幻影が一瞬だけ浮かび、すぐに消える。

 意識すれば、そこから必要な物を瞬時に取り出せる感覚があった。


「ますます旅仕様だな……悪くない」

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