群れとの戦闘
森の影から飛び出した灰狼たちが、街道に波のように広がった。
鋭い牙と赤い眼光。五体――群れだ。
「来るぞ!」
カイルが叫び、仲間たちが瞬時に布陣する。
大剣の戦士は前に出て受け止め、弓の青年は素早く後方に下がり、射線を確保した。
流れるような動き――何度も修羅場を越えた連携だ。
俺はクロワンのシートに跨り、タンクを叩く。
「相棒、一発ぶつける!」
「ブルルッ!」
正面から突っ込んできた一体に合わせ、スロットルを開く。
エンジンが吠え、鉄塊が一気に加速する。
灰狼の目が見開かれ、瞬時に身をひねろうとした。
だが速度が勝った。
――ドガンッ!
鈍い衝撃。獣が弾き飛ばされ、地面を転がる。
質量と速度。森猪を吹き飛ばしたあの感覚が背中を震わせた。
「よし……!」
だが次の瞬間、横から牙が閃いた。
「くっ!」
別の狼がクロワンの後輪を狙って飛びかかってくる。
咄嗟にハンドルを切って避けるが、泥が跳ね上がり、背筋に冷たいものが走った。
(……そんなに甘くねえか)
クロワンを盾に、俺は地面に降りた。木剣を構え直す。
「ブルルルッ!」
相棒のエンジンが轟き、狼たちの足が一瞬止まる。その隙を狙い、俺は横から一撃を叩き込む。
木剣が灰狼の肩を打ち、鈍い呻きが漏れる。
カイルたちは三角形の布陣を崩さず、槍が突き、矢が飛び、大剣が薙ぎ払う。
互いに死角を埋め、息の合った連携で確実に数を減らしていく。
「さすがだな……!」
思わず息を呑む。俺とは違う、“訓練された戦い”がそこにあった。
その視線に気づいたのか、カイルが一瞬こちらを見て叫ぶ。
「遼! そっちは押し返すだけでいい、無茶すんな!」
「了解!」
再び牙が迫る。
俺はクロワンを挟んで位置を取り、エンジン音とライトで狼を怯ませ、木剣で脚を叩き、距離を作る。
倒すのではなく、押し返す。
それが今の俺の戦い方だった。
◆
やがて森に潜んでいた残りの狼が吠え、群れ全体が退いた。
草木が揺れ、気配が遠ざかっていく。
残されたのは荒れた街道と、荒い息を吐く俺たちだけだった。
「……ふぅ、助かったな」
木剣を下ろし、クロワンのタンクを撫でる。
「お前が吠えてくれなきゃ、俺は食われてた」
「ブルル……」
低い唸りが応える。
カイルが槍を肩に担ぎ、こちらに歩いてきた。
「悪くねえ。あの鉄の獣で一匹は吹き飛ばしたな。ただし……あれは賭けだ。群れ相手に同じことはできねえぞ」
「ああ……身に沁みた」
体当たりは強い。だが万能じゃない。
俺はその事実を、骨の奥にまで刻み込んでいた。




