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霙の降る道を行く  作者: 那波
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5/7

兵隊人形

そのひとは回れ右をして

背中の穴を見せてくれた


この穴に鍵を挿して回せば

身体の中に仕込まれたゼンマイが巻かれて

動き出すという設計だ


動けるようになる頃には

もう既に巻かれているから

誰によって

何のために

ゼンマイが巻かれたのか

兵隊人形には分からない


私は兵隊だから

きっと悪巧みの為だったのだろうと

そのひとは笑う


ゼンマイ仕掛けとは難儀なもので

巻き終われば鍵が外されるから

自分がそうだと知らぬまま

一生を終えることもよくあるという


けれどこのひとは気がついたのだ

誰かがゼンマイを巻いたから

自分は動きだしたのだと


ゼンマイ巻かれた人形は

誰の意思で動くのだろう


人形自身の意思だろうか

そう思わせておいて

誰のものかも分からない意思が

その身を動かし続けたりしないだろうか


自分がやろうと決めたことが

全て誰かの仕込みだとしたら


だって人形なのだもの

本当は心だって偽物なのかも


窓の外を蒸気戦艦が飛んでいく

部屋が暗くなってから明るくなった


私はこう見えてあがり症でね

ここぞという時ほどうまく立ち回れなくてと

そのひとは首を振って答える


これまでのトラブルで培ってきた

迷いと苦悩の積み重ねは

作られ者としてあり得ない


そのひとは背筋をぴんと伸ばして

椅子に腰かける

わざとらしくキセルをとりだして

ふうと合成煙を吐いてみせた


このひとはどんなことをしたのだろう

それが誰の何の役に立ったのだろう


もうここに誰かはいない

鍵もない

あとはただゼンマイが止まるまで

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