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白銀の魔道具職人と、世界で一番美しい黒のシスター  作者: 虹の箸


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神に愛された美貌と、孤独な職人

薔薇の香油と、最高級の茶葉を蒸らした甘い匂いがサロンに満ちていた。

毛足の長い深紅の絨毯の上で、ルークは片膝をつき、真鍮製の魔導ストーブの内部に細い銀のタガネを差し込んでいた。カチリ、カリリ、と硬質な金属音が静かな部屋に響く。

熱を伝える魔力回路の溝には、黒い澱のような煤がびっしりとこびりついていた。ルークは息を止め、指先のわずかな感触だけを頼りに、回路を傷つけないようミリ単位で煤を削り落としていく。さらに、熱が前方にしか飛ばない不格好な設計を補うため、自作してきた薄い銅の反射板を熱源の背後に組み込み、空気の通り道を広げるために排気弁の角度をわずかにひねった。

すべては、少ない魔導石で部屋全体を長く、優しく暖めるための工夫だった。

「……よし」

小さく呟き、ルークは外装の格子カバーを閉じて留め金を落とした。新しい魔導石を台座にはめ込み、起動のスイッチを入れる。

次の瞬間、それまで不機嫌にくすぶっていたストーブが、まるで呼吸を取り戻したかのように静かな唸りを上げた。格子窓から漏れ出した琥珀色の光がサロンの壁を柔らかく照らし出し、春の陽だまりのような温もりが、またたく間に足元から部屋全体へと広がっていく。

「お待たせいたしました、侯爵夫人。内部の魔力回路の詰まりを取り除き、熱が部屋全体に循環するよう反射板を追加しておきました。これで今年の冬は、これまでの半分の魔導石で十分に暖まるはずです」

ルークは煤で汚れた作業用の革手袋を外し、顔を上げて微笑んだ。

大きなガラス窓から差し込む冬の淡い陽光が、彼の姿を照らし出す。絹糸のように繊細に輝く白銀の髪に、吸い込まれそうなほど澄み切った黄金の瞳。神が最も気まぐれで贅沢なノミを振るって彫り上げたかのような、非の打ち所がない美貌がそこにあった。

「ああ……ルーク。なんて神々しいお顔なのかしら……」

ソファで紅茶のカップを手にしていたヴァルモン侯爵夫人が、うっとりと陶酔したような溜息を漏らした。その隣に座る二人の令嬢も、頬を薔薇色に染めて扇子で口元を隠している。

「あなたが顔を上げた瞬間、この部屋に本物の太陽が昇ったのかと思ったわ。ねえお母様、やっぱり彼を我が家のフットマンとして雇いましょうよ!」

年上の令嬢が、興奮を隠せない甲高い声で身を乗り出した。

「こんな油と煤にまみれる職人仕事なんてさせておくのは、神への冒涜ですわ。我が家の紋章が入った純白の制服を着せて、馬車の後ろに立たせておくだけでいいの。そうすれば、王都中の貴婦人が羨望の眼差しで私たちを振り返りますもの!」

「ええ、本当にそうね。こんな美しい青年をただの魔道具職人にしておくなんて、世界の損失だわ。ルーク、修理代の倍のお給金を出すから、今日からうちに住み込みで働きなさいな」

彼女たちの熱を帯びた視線は、ルークの白銀の髪と整った顔立ちに釘付けになっていた。

誰一人として、ルークが心血を注いで調整した魔導ストーブの方を見ようとはしない。部屋が先ほどまでとは比べものにならないほど暖かくなっていることにも、彼女たちは気づいてさえいなかった。彼女たちにとって魔導ストーブなど、高価な魔導石をどれだけ贅沢に消費できるかという財力の誇示であり、そこに職人の工夫や実用性など最初から求めてはいなかったのだ。

令嬢の白く細い指が、まるで珍しい宝石か、血統書付きの愛玩犬に触れるかのように、ルークの白銀の髪へと伸ばされる。

ルークは自然な所作で工具箱を片付けながら半歩下がり、その指先をさりげなくかわした。そして、鏡の前で何千回と練習した「完璧な微笑み」を唇に貼り付ける。

「身に余る光栄なお言葉ですが、お嬢様。私の無骨な手は、銀のトレイを持つよりも、こうして鉄や真鍮をいじっている方が性に合っているのです。それに、私がフットマンになってしまっては、ヴァルモン家の魔道具を誰が修理するのですか?」

「まあ、つれないこと。でも、その欲のない控えめなところも素敵だわ……」

令嬢は悔しがるどころか、さらに瞳を潤ませて胸を押さえた。

ルークは内心で冷たい息を吐きながら、夫人から修理代金の金貨を受け取った。さらに、ストーブの脇のゴミ箱に無造作に捨てられていた十数個の魔導石――表面が黒ずんでいるだけで、内部にはまだたっぷりと魔力が残っている石――に目を留める。

「奥様、こちらの使い終わった魔導石は、見栄えが悪うございますので私が無料で引き取って処分いたしましょうか?」

「ええ、お願いするわ。そんな薄汚れた石が部屋にあるだけで気分が下がるもの。美しいあなたに片付けてもらえるなら、石も本望でしょうね」

夫人は興味なさそうに手を振った。ルークは深く一礼し、ずっしりと重い魔導石を麻袋に詰め込むと、革の工具箱を提げてサロンを後にした。

豪奢な鉄格子の門を抜け、冷たい石畳の街路に出た瞬間、ルークの顔から貼り付けたような微笑みが消え失せた。

「……はあ」

吐き出した白い息が、鉛色の冬の空に溶けて消える。

通りを歩く人々もまた、すれ違いざまにルークの顔を見ては息を呑み、振り返っていく。街角のガラス窓に映る自分の姿は、自分で見ても惚れ惚れするほどに美しく、気品に満ちていた。この世界において、白銀の髪と黄金の瞳は「神に愛された光の象徴」として無条件に崇められる。

だが、その黄金の瞳の奥に宿っているのは、ひどく冷え切った虚無感だった。

ルークは立ち止まり、自分の右手を見つめた。金属の匂いが染み付き、小さな傷やタコがいくつもできた職人の手だ。侯爵家の人間は誰一人として、この手がどれほどの技術を尽くしてストーブを直したのか、見ようともしなかった。

(……前世と、何も変わらないじゃないか)

胸の奥が、チクリと冷たく痛んだ。

脳裏をよぎるのは、この世界に生まれる前の記憶。遠い異国で「蒼太」という名前で生きていた、短い人生の記憶だ。

あの頃の自分は、目つきが悪く、不格好で、誰もが目を背けるような不細工な少年だった。どれほど真面目に生きても、どれほど純粋な善意で手を差し伸べても、周囲の人間は彼の「醜い顔」だけを見て嘲笑い、気持ち悪がり、最後には無実の罪を着せてすべてを奪い去った。

そして今、神の皮肉な悪戯のように与えられた「至高の美貌」もまた、彼から尊厳を奪っていた。

石を投げられる対象から、飾り立てられる対象へと変わっただけだ。周囲の人間が彼の「外側」しか見ておらず、その内側にある心も、積み上げた努力も、何一つ見ていないという残酷な事実は、前世と少しも変わっていなかった。

「……醜くても、美しくても。誰も、俺の中身なんか見やしない」

ぽつりとこぼれた呟きは、吹き抜けた冷たい北風にさらわれて消えた。

その時、風に舞った枯れ葉の音に混じって、記憶の底から「パキッ」と乾いた木の折れる音と、少女の悲鳴が聞こえた気がして、ルークは弾かれたように肩を震わせた。

いつまで経っても消えない、あの日の夕暮れの悪夢。

ズキズキと疼き出す古傷を振り払うように、ルークは回収した魔導石の麻袋を強く握り直し、夕闇が迫る下町の工房へと足を早めた。


お読みいただきありがとうございました。

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