生きていた聖女
やがて山道を抜けたノルヴェインは砂漠の街に辿り着く
そして情報を集めた結果、第三の試練のある場所を特定する
しかし、今回はフェルネリアがいない
自分一人で向かうべきなのか
それとも待つべきなのか
これまではダメージを気にする必要はあまりなかった
しかし、今回はそうはいかない
しかし、最終的に決断する
勇者ならば自分一人でも向かうべきだと
それで死んだのならそれまでだ
ただ聖女の力に頼っていただけの存在だったのだと
一人で進む中、第三の試練が待つ神殿が見えてきた
そこで待ち構えたいたのは、死との隣り合わせの戦いだった
常にデバフがかかっているかのような魔力に満ちている神殿
襲い掛かる鎧騎士
幻惑
睡眠攻撃
何度も撤退を余儀なくされた
しかしリトライを繰り返すうちに徐々に到達地点は進んでいく
やがてこの神殿に満ちる魔力の元凶、一人の禍々しい騎士の姿の人物が現れる
急激に体への負荷が強くなるのを感じる
長時間の戦いは無理だ
初撃に全てを賭けるしかない
ノルヴェインはひたすら待ち受けた
カウンターの一撃
間合いに飛び込んでくるのを待つ
それを察してか、騎士は徐々に間合いを詰める
そして、一気に飛び込んできた
次の瞬間には騎士は胴から真っ二つになっていた
敵は間合いを見誤った
聖剣の力が本格的に覚醒を始めていた
ノルヴェインはその場を去り、街へと戻る
フェルネリアのことがある以上、ここから先にはまだ進めない
それに試練での疲れも取らなければならない
そうして数日後、ノルヴェインの元にクローヴが訪れた
その腕にはフェルネリアが抱えられている
外傷があるようにはみえない
しかし、ぐったりとしていた
「フェルネリアは?」
ノルヴェインのその質問に対し、クローヴは真剣な面持ちになる
「外傷は治癒されている。しかしこのまま倒れていた。意識が戻らない」
「・・・・・・」
「だが、希望はある。ここから少し進んだ街に教会がある。すぐに向かうぞ」
「教会?」
「ああ、教会の人達の魔力で聖女の力を呼び覚ます」
詳しくはわからないが、一刻の猶予もなさそうなのはわかる
迷っている暇はなかった
「わかった。急ごう」
すぐに身支度を整えると二人は街を出た
その道中、フェルネリアの状態と教会の力について尋ねる
「今のフェルネリアはいわば仮死状態だ。このまま放置をすれば力尽きる。すぐにでも強力な回復魔法をかけないといけない。おそらくこの近辺では次の街にある教会しか頼れる場所はない」
そうクローヴは端的に述べた
少し考えた後、ノルヴェインは話題を変える
「エルシオンは何者なんだ?」
フェルネリアの仇とは呼ばない
必ず助ける
しかし、敵であることには変わりない
「あいつは、魔王の側近といったところだ」
「お互いを知っている様子だったが」
「ああ、以前にも戦ったことがある」
勇者以外にも魔王軍と戦っている者がいるんだな
そんな風に考えてしまった
多くを語らないところから見て、クローヴもあまり語りたがっているわけではないのだろう
やがて、街が見えてきた
すぐに教会に向かう
教会に辿り着くとフェルネリアは台座に寝かされた
周囲には教会の人達が集まり、祈りのような魔法がかけられる
「聖女様、目を覚ましてください」
そんな声も聞こえてくる
どのくらいの時間が経っただろうか
やがて、フェルネリアはゆっくりと目を開けた
「フェルネリア!」
ノルヴェインが思わず声をかける
その顔を見ると
「勇者様・・・?」
そう返事が返ってきた
ノルヴェインはほっとして一息つく
「いや、だからその呼び方は・・・」
「はじめまして、私はフェルネリア・リュミエールと言います」
「・・・・え?」
はじめまして?
どういうことだ
ノルヴェインはそのまま固まってしまった
しばらくして事情がわかる
フェルネリアは記憶を失っている
いや、正確にはノルヴェインと出会う前までの記憶はある
しかし、それ以降の記憶が戻らない
とにかく今は無理はさせるわけにはいかない
その街で数日の休息を取った
その間、ノルヴェインはこれまでの旅の経緯を話した
フェルネリアは何度も驚いたが事情は把握してくれたみたいだ
しかし、記憶そのものが戻った様子はない
やがてフェルネリアは
「もう一度あなたを導きます」
そう告げた
肉体的には完全に回復していると言ってよかった
少しためらったが、旅の続きをすることにした
次に待つのが最後の試練ということだ
二人の様子を見ていたクローヴは
「俺は他にやらないといけないことがある」
そう言い残して、二人のもとから去っていった




