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もし魔王を倒せたら

第二の試練が終わったあと、二人は第三の試練があるという場所を目指した

山を越えた先、砂漠が広がる地に第三の試練があるという話だった


次の街がなかなか見えない中、二人は山中で野宿を繰り返した

ある夜のこと


「聖女って、なんで勇者を導く使命を負っているんだ?」


「わかりません。そう運命付けられているとしか・・・・」


「自分で生き方を選ぶこともできないのか」


「ノルも、もはや似たようなものだと思います」


するどい意見だった

確かに、勇者に選ばれて、試練を受けて、魔王と戦う

当面はそれ以外の生き方はできそうにない


「魔王を倒したら、そのあとはどうするんだ?」


「わかりません」


フェルネリアは少し俯いているようだ


「私は自分が何をしたいのかというのを考えたことがありません」


その声はどこか寂しげだった


「聖女であることが、私の全てでしたから」


焚き火がぱちりと音を立てる


「俺さ、勇者に選ばれる前、村で鍛冶屋の手伝いをしてたんだ」


フェルネリアは少し意外そうな顔をした


「なんか、意外です」


「剣を作るの、結構好きだったんだよ。別に名工になりたいとかじゃないけどさ。誰かが使う道具を作るって、なんかいいなって思ってた」


そう言って、自分の手を見る


「でも今は、剣を作る側じゃなくて、振るう側になっちまった」


フェルネリアは静かにその横顔を見つめていた


「怖くないんですか?」


「怖いよ」


ノルヴェインは即答した


「正直、今でも自分が勇者って言われても全然実感ないし」


少し笑う


「少し羨ましいです」


「え?」


「ノルには、勇者になる前があるんですね」


その言葉に、ノルヴェインは返事を失った

フェルネリアは焚き火を見つめたまま続ける


「私にはありませんでした。気づいた時には、もう聖女様でしたから」


ノルヴェインはしばらく黙っていた

どう声をかければいいのかわからなかった

だが、だからこそ思った

この人はずっと、一人だったのかもしれないと


聖女として崇められ、敬われ、期待され続けて

誰にも、フェルネリアとして見てもらえなかったのではないかと

ノルヴェインは小さく息を吐いたあと口を開く


「じゃあさ、魔王を倒したあと、探せばいいんじゃないか。聖女とか関係なく、お前がやりたいこと」


フェルネリアは目を瞬かせた


「そんなもの、あるのでしょうか」


「今はなくても、その時に見つければいい」


ノルヴェインは笑う


「世界を救ったあとくらい、自分のために生きても罰は当たらないだろ」


その言葉を聞いた瞬間、フェルネリアの表情がわずかに崩れた


「不思議です」


「何が?」


「そんな未来の話をされたの初めてでした」


ノルヴェインはきょとんとする

フェルネリアは静かに微笑んだ


「皆、聖女としてどう生きるべきかしか、私に言いませんでしたから」


夜風が吹く

焚き火の火が小さく揺れた

しばらくして、フェルネリアは小さな声で言う


「もし、本当に魔王を倒せたら、その時はノルの故郷を見てみたいです」


ノルヴェインは少し驚いたあと笑った


「何もない田舎だぞ?」


「それでもです」


フェルネリアは穏やかに笑う


「ノルが勇者になる前に生きていた場所を見てみたい」


その言葉に、ノルヴェインはなぜか胸の奥が少し熱くなるのを感じていた

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