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マッチングアプリで最強パーティを作った結果!!!  作者: MMM
帝都クライペダ編

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細い光、閉ざされた宮殿へ

 リリスが唇を尖らせる。

「じゃあ、忍び込む?」

 その声音は軽い。いつもの調子で放たれた、冗談めいた一言。だが、会議室の空気はそれを受け止めきれず、床に落ちた言葉は、冗談として弾むことなく沈んでいく。

「宮殿相手にか?」

 ロアンが苦笑する。だがその笑みは、“笑うしかない”という諦めの色を帯びていた。

「普通の屋敷なら、君なら抜けられるかもしれない。でもアルカディア宮殿は別物だ。あそこは建物じゃない。帝国の権力が石と鉄になった迷宮みたいなものだよ」

 その言い方は、まるで宮殿そのものが巨大な生き物で、侵入者を飲み込み、二度と吐き出さないかのような響きを持っていた。

「言い方が嫌すぎる」

 リリスが眉をひそめる。

「実際、嫌な場所だからね」

 ロアンは肩をすくめる。その仕草の裏に、帝都で生きてきた者だけが知る“重さ”がにじんでいた。

 リリスは小さく舌を出した。軽口の続きのように見える仕草。だがその瞳は笑っていない。光を受けてわずかに揺れるその瞳は、すでに“影の地図”を描き始めていた。

 どこに死角があるか。どこに罠があるか。どこなら通れるか。どこは絶対に踏んではいけないか。影を読む者の目で、可能性と危険を静かに測っている。その横顔は、軽口を叩く少女ではなく、“闇を歩く者”のそれだった。

 会議室の淡い光が、リリスの瞳に細い影を落とす。その影は、これから向かう宮殿の迷宮を静かに予告しているかのようだった。

 レオンは黙って、長机の上に置かれた簡易地図を見つめていた。

 帝都クライペダの中心。宮殿。教会。街路。衛兵詰所。貴族街。水路。

 紙の上に描かれた線は、ただの線ではなかった。それぞれが、人の思惑と権力と歴史が積み重なってできた“流れ”であり、時に道となり、時に壁となり、時に罠となる。

 線が多い。だが、その多さは選択肢ではなく、むしろ“迷いの網”のように見えた。

 道はある。だが、道があることと、通れることは違う。

 レオンの指先が、地図の上をゆっくりと滑る。その動きは慎重で、まるで紙の下に潜む帝都の呼吸を読み取ろうとしているかのようだった。

 宮殿へ向かう道は、どれも細く、どれも重く、どれも“見られている”。

 地図の上の線は静かだ。だが、その静けさの奥には無数の視線と検問と罠が潜んでいる。

 レオンは息をひとつだけ吸い、地図から目を離さない。その瞳は揺れていない。ただ、“どう進むべきか”を探している。紙の上の線が、まるで帝都そのものが彼に問いかけているように見えた。

 進むなら、覚悟を持て。その問いに、レオンは静かに、しかし確かに応えようとしていた。


 ドミニチ大枢機卿が静かに言った。

「この教会からアルカディア宮殿へ通じる隠し通路はあります」

 その言葉が落ちた瞬間、会議室の空気がわずかに揺れた。まるで、閉ざされた空間にひと筋の風が流れ込んだように。

 全員の視線が大枢機卿へ集まる。

 リリスの金色の瞳が、わずかに輝いた。

「あるんだ」

 その声は小さく、しかし確かな光を帯びていた。

「あります。古い時代、教会と宮殿がもっと密接に連携していた頃の名残です。皇帝が極秘に祈りを捧げに来るため、あるいは教会の者が有事に宮殿へ向かうために使われた通路です」

 語られる歴史は、ほこりをかぶった伝承ではなかった。それは、帝国の深層に流れる“古い血の道”。祈りと権力がまだ近かった時代の、静かな名残。

 隠し通路。その言葉は、閉ざされた迷宮に差し込む一本の光のように聞こえた。地図の上に広がっていた複雑な線が、その瞬間だけ、わずかに形を変えたように見える。行き止まりだらけの帝都の中心に、たったひとつだけ“通れる可能性”が生まれた。

 淡い光が窓から差し込み、長机の上に細い影を落とす。その影は、まるで隠し通路そのもののように細く、静かで、しかし確かに続いていた。


 だが、ドミニチ大枢機卿の表情は明るくない。

「ただし、当然ながら、通路の出口は宮殿内部です。そして宮殿内部に出た後、玉座の間まで辿たどり着けるかどうかは別の問題です」

 静かな声だった。だがその静けさは、希望を否定するためではなく、希望の“細さ”を正確に示すための静けさだった。

 希望はある。だが、その希望は細い。細すぎる。まるで、深い闇の中に一本だけ張られた蜘蛛の糸のように。


 レオンは地図上の宮殿を見つめた。

 隠し通路を使えば、確かに宮殿の外壁は越えられる。帝都の中心を守る巨大な壁――その最初の障壁だけは、古い時代の名残が切り開いてくれる。

 だが、そこから先が問題だった。

 玉座の間へ行くには、内部の警備、巡回する兵、魔導による監視、鍵と扉、貴族たちの政治的な目、そして何よりヴェルディア四世という“影”を越えなければならない。

 その名を思い浮かべた瞬間、地図の上の宮殿が、ただの建物ではなく巨大な影の塊のように見えた。


 帝国の中心。権力の心臓。そして、“侵入者を許さない意思”そのもの。

 レオンの指先が、地図の上で静かに止まる。

 細い希望の糸は、確かにそこにある。だがその糸を渡るには、風も、闇も、影も、すべてを味方につけなければならない。

 会議室の淡い光が、地図の上に落ち、宮殿の影を長く伸ばした。その影は、これから越えるべき“帝国の核心”を静かに形作っていた。

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