(解決編)
野本:では汁原先生、一つ質問をさせていただいても?
汁原:YES。勿論かまわないよ。どうぞ?
野本:Yが昼夜問わず働いたのって、ひょっとするとひょっとして、【六日間だけ】なんじゃないですか?
汁原:……(ビクッ)。
海川:は、なにそれ。バイトかよ。しかも短期の。
亀坂:うん。意味わかんないよ。なんで六日間だけなの?
汁原:……
海川:あれ? おーい、汁原せんせー?
亀坂:黙り込んじゃって。心なしか顔色も悪いよ。お腹でも壊したのかな?
野本:先生、お答えはいかが?
汁原:………うっ。YES。
海川:へ?
亀坂:どういうこと?
野本:ありがとうございます。これで全ての謎は繋がりました。
野本:ミステリ風に言えばこうです。
野本:────『謎は全て解けた』!!
亀坂:へ??
海川:おーい、野本。俺らだけ完全に置いてきぼりなんですけどーー??
汁原:……
野本:あ、ごめんなさい! そうですね。でしたら、答え合わせは「質問のYES/NO」で確認していきましょう。
野本:なにせ、これは『ウミガメのスープ』ですもの。
汁原:……くっ。
亀坂:あっ、先生。そんなビール一気呑みしたら体に悪いよ?
海川:なんかヤケ酒くせぇな。おい。
野本:ふふっ。では第一問。
野本:これはおさらいです。
野本:Yが働かなくなったのは仕事に疲れたからとか、体調を崩したからではなく、【仕事が終わったから、自分で仕事をやめた】でしたよね?
汁原:YES。
野本:第二問。
野本:これもおさらいです。
野本:Yは人間でもロボットでもない。つまり【架空の存在】ですね?
野本:亀坂さんが「架空の人物か?」と質問したときに「ほぼYES」と答えたのは、人物と答えてよいか返答に迷ったからではないですか?
汁原:……YES。
野本:では第三問。
野本:ここからが核心に当たる部分です。
野本:Yは【六日間だけ】昼夜問わず働きましたね?
野本:まるで【ワーカーホリック】のように。休みも取らずに。
汁原:……YES。
野本:第四問。
野本:Yが仕事をやめた、休みを取ったのは第七日目。つまり【日曜日】ですね?
野本:その前の六日間は、一切休みを取らなかったはずです。
野本:【あの世界的に有名な本】にも書いてありますもの。
野本:第七日目になって、初めて休んだのだと。
汁原:……くっ。
亀坂:あれ、先生、めっちゃ悔しそうな……?
海川:だからヤケ酒はやめろって。
野本:どうですか、先生? お答えはYES/NOでお願いします。
汁原:…………い、YESだ。
野本:こほん! ではこれが最後の質問、というか答え合わせとして伺います。
野本:……Yは月曜日から土曜日までの六日間働き、その後日曜日、つまり【安息日】に休みを取った架空の存在ですね?
汁原:……
野本:そしてその架空の存在とは、人間でもロボットでもない。
野本:ユダヤ教やキリスト教における【神さま】。
野本:【旧約聖書】によるところの創造主。
野本:その名は【Yahweh】ですね?
野本:つまりY君のYは、【イニシャルの頭文字】だったのですね?
汁原:…………
野本:そしてYの仕事とは、もはや言うまでもないことですが、この世界を創ること。
野本:すなわち【天地創造】だった。
野本:……いかがでしょう?
汁原:……
汁原:……
汁原:……あぁ、やっぱ野本には敵わないな。
汁原:今回の問題は自信あったんだけどなぁ。
海川:え?
亀坂:それってつまり?
汁原:……参りました。降参!
汁原:答えは【全てYES】です。
亀坂:やったーー! 野本すごーい!!
海川:でもまたしても俺ら何もしてねぇー!
野本:え? そんなことないですよ?
海川:へっ?
野本:だってそうじゃないですか。
野本:Yが自分から働くのをやめたって事は海川さん。
野本:Yが架空の存在って事は亀坂さん。
野本:ほら。お二人が居なければ私は正解に辿り着けなかった。私は分かっていることを整理しただけですよ。
海川:そ、そうなのか?
亀坂:いやー、私も自信はないけど。まあ野本がそう言うならそれでいいんじゃない?
汁原:うーん。確かに野本の言うことは一理あるな。汁原:君たち二人、妙なところで勘がいいもんなぁ。
亀坂:お、なんか初めて褒められてる的な?
海川:なんか褒められるの慣れてないから、リアクションに困るわ、俺。
野本:ふふっ。だからこれは三人のチームワークの勝利なんですよ!
汁原:たしかにそうだな。じゃあしょうがないなぁ……君たちのチームワークに免じて、今日のお勘定は俺が奢ってやるか!
亀坂:えっ!?
海川:マジ!?
汁原:おぅ。男に二言はないぞ。
亀坂:やったーー!!
海川:ばんざーい!!
野本:わーい!!
亀坂:じゃあさじゃあさ。今夜は思いっきり贅沢しないと損だよね? だよね?
海川:おう。そうこなくっちゃ!
野本:ですね!
汁原:……へ?
海川:じゃあまずこのローストビーフ三人前……いや、四人前追加で!
亀坂:あーズルい! じゃあ私はこの伊勢海老のグラタン的なやつ!
野本:えとえと、私はもう一杯ワイン呑んでいいですか? このビンテージモノのやつがずっと気になってまして。
汁原:……へ?
海川:あーじゃあ俺もウイスキーおかわりで。みんなまだ呑めるよな?
亀坂:おー!
汁原:おーい、みんなー? 教師ってみんなが思ってるよりはるかに安月給なんですけど?
野本:汁原先生、質問はYES/NOで答えられるもの、でお願いします。
海川:そうそう。基本的なことじゃん! しっかりしたまえ。汁原先生。
亀坂:やばっ。マジうける!
汁原:君たちは……
野本:ふふっ。先生、心配しなくていいですよ。みんなちゃんと稼ぎがありますから。後で割り勘にしましょう。
海川:そうそう。軽いジョークじゃん。
亀坂:たまーには贅沢しないとね。せっかくの同窓会だし。
汁原:……(ふぅ)。
亀坂:あ、いま内心ホッとしたでしょ?
海川:信用ねぇなー、俺ら。
亀坂:じゃあさじゃあさ。今度は問題解いたお祝いに、もう一回乾杯しない?
野本:いいですね。
海川:いいねー!
海川、亀坂、野本:それじゃ、かんぱーーいーー!!
汁原:……か、かんぱーい!?
[エピローグに続く]




