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それと異形

掃除屋(クリーナー)〉から離れ、動かない異形たちを崩壊させながら奥へと進む。


 塵になった異形から離れた場合に異形の再生が起きるかとも思ったが、塵が蠢く様子はなく、すぐに蘇生されるわけではないとわかった為、憂いなく進んでいくことが出来る。



 他人のことなど知ったことではないが、自分の責任で他人に迷惑を掛けることは虚にとっても好ましいことではない。それに、何かの形で〈掃除屋(クリーナー)〉や東部管理局に借りを作りたくなかった。


 部隊を貰う信用を得る為だけに戦争に送られたのだ。借りなどを作ったらいったい何を要求されるか分かったものではない。


 虚は自分本位であるだけで、義理を知らないわけではない。


 余程のことでもなければ借りは返す。しかしそれ以上はしない。そういう生き方しか知らないし、事実前世ではそうして生きていたのだから。




 崩壊する異形を押し退けながら群れの奥、中心部へと向かって歩み続ける。


 空の光が消えてからは異形たちはピクリとも動かなくなり、虚が通る道の先に存在するモノたちも一切の抵抗なく崩壊していく。


 虚が通った後には崩れ去った異形だったものだけが残り、道のように跡を残していた。



 時計など持っていない為どのくらいの時間が経過したかは分からないが、虚の体感としては約2時間もの間、異形の群れの中を突き進み、崩し、壊しながら歩いた。


 代り映えのしない目の前の異形を崩したその瞬間、異形の肌しか見えなかった光景から一気に開けた広場のような光景へと変わった。



 周囲を見渡してみれば、異形が円形上に取り囲んでいたことで生まれた空間のようで、左右、対面には見慣れた肌の色が見えた。


 虚は直感的にこの場所がこの異形たちにとって何かしらの重要な意味を持つ場所なのかもと予測を立てる。



 しかし軽く見回しても特に何かが置いてあるというわけではなく、誰かがいるわけでもない。それなのに不自然にこのような空間が開けているというのはおかしな話だ。


 よもやこのような奇妙な空間が異形たちの行動パターンの食い違いなどによって起きた偶然の産物などというふざけた理由ではないだろうとあたりを付けて空間の内部を注意深く確認していく。



 地面の不自然な盛り上がりや小さな穴、歩いてみて違和感のある場所など手当たり次第に調べてみたが何も出てくることはなく、有益な情報は何も手に入らなかった。



「もう少し奥に行ってみるか?」

「ここが中心ではないやもしれんからな」

「まだ群れは奥に続いているからな、進んでみるとしよう」



 虚はこの謎の広場の調査を早々に切り上げ、再び異形の壁を崩壊させながら奥へ奥へと進んで行く。



 広場から少し進んでふと気になり異形の身体を見る。


 身体に触れそうになると即座に崩れ去ってしまう異形の肉体であるが、虚が近くに来ただけでは一切変化は起きず、部分的に崩れるということがない。


 その特徴に気付いた虚は、触れないように位置を調整しながら異形の身体を観察する。



 遠目から見れば異形以外の何物でもないが、至近距離でよく見てみれば生物としての体を為しており、四肢や頭部、胴体などの基本的な構造は一般的な哺乳類のものとなっている。


 個体によって形は様々であるが、全体的に人の形を模したものが多いように見受けられた。


 あくまで形が人というだけで、脚部のパーツが獣のようなものになっているものや、四肢の数が多いものもあった。



 むき出しになった体内も人のように見えてもところどころ臓器が足りなかったり、そもそも体内にあるものが臓器でなく、顔のようなものであったり、触手のような神経のようなものがぐちゃぐちゃに押し込まれているものであったりと統一性がなかった。



 近くで見れば人っぽい、というだけで異形という括りから外れるほどに形が整っている個体はいなかった。



「何かの生物を模した部位を持っている、ということ以上のことは分からんな」

「触れて調べようにも触った瞬間に崩れるとあっては碌に観察もできん」

「解剖もできんな」



 何体かの異形を観察した後、これ以上は無駄だと判断したのか、ただ飽きたのか。虚は目線を外してさらに奥へと進み始めた。



 奥へと進んだ虚を追いかけるように一つの塵のやまがざわざわと蠢く。


 塵のままだとは思えない速度で動くその山は音を立てずに虚の後を憑いて進む。


 虚が崩していく異形の塵を少しずつ取り込みながらこっそりと、しかし確実に自分たちを塵へと変えた元凶の後を進む。



 異形を壊し、崩して進む虚はまだその塵に気付いていない。

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


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