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それはこの大陸を知る

 部屋を出たのち、別室に通された虚一行は戦争に向かってからのプランの話し合いを始めた。



「そもそもどこと戦争しているんだ」

「他の管理局か?」


「いえ、別の大陸の者たちとの間で戦争が発生しております」


「他の大陸」


「はい、他の大陸です」



 虚は知らないが、現在人類連合が存在する大陸は海に囲まれた孤立した大陸であり、海を越えた先にはまた別の生物が跋扈する未開の地が存在している。


 現在東部管理局で進行中の作戦は、海の先に存在する大陸の開拓、及び意思疎通が可能な住民との対話である。


 しかし、意志疎通ができず、こちらに危害を加えてくる。もしくは意志疎通が可能であっても明確な敵意を向けてくる相手に対しては、和解や無干渉契約を結ぶことが無理だと判断した場合、敵対してよいことになっている。



 派遣当初は順調に開拓が進んでおり、開拓途中で出会った住民とも友好的な関係を築けていた。


 その調子でいくつかの国との交渉なども行っていたが、その途中で異形の生物と出会った。人語を解し、会話も可能。しかし、その異形の種族自体に問題があった。



 異常なほどに凶暴なのだ。


 会話を試みれば、問いに対する回答と言わんばかりに武器が飛んでくることがほとんどで、まともな会話を行えた回数自体は多いものの、会話の途中で対話相手に惨殺されるなどの問題が多数発生した。



 一見友好的な態度で対話に応じてくるため質が悪く、どこから現れるのかも不明。


 死体を解剖しても生物らしい器官はほとんど存在せず、体を動かす筋肉も、例えるならば植物が寄り集まって出来たような細くて頑丈なもので、見た者に不気味な印象を抱かせるものだった。



 戦いに応じているうちに出現する数が増大していき、現在では常に戦場は異形生物で埋め尽くされているかのような状態が続いている。


 現在戦線が下がることは防げているものの、押し上げることは到底不可能な状態となってしまっており、近々他支部の人員も送り込まれる予定となっている。



「そこで、私を戦場に送るという話に繋がるわけだ」

「なるほどな」

「確かに私のこの体質がその異形共に効くのであれば」

「一気に戦況を変えることも可能かもしれんな」


「軍の上層部もそれが狙いなのでしょう」


「管理総督殿も大体同じ考えなんだろうが、あの人のことだ。ぶつけ合った結果お前の方がやばい場合の対処法も考えついてそうだな」



 一行はテーブルを囲んで話し合いを進める。


 待機用に通された部屋だが、着替えや飲食物があるわけでもなく、人数分の椅子と二つのソファ、そして大きなラウンドテーブルが置かれているだけの殺風景な部屋であった。


 虚は『戦争に行くのだから着替えくらいはするだろう』と考えていたため、少々拍子抜けである。



 現状虚の着ている喪服のように真っ黒なローブは、長旅をともに超えてきたはずなのに、糸のほつれ一つない綺麗な状態を維持している。


 服を貫通して虚の腹が貫かれた時も、銃弾を撃ち込まれた時も、クリスティーナと戦いを行った時も、虚の再生が終わった時点で服には埃一つついていない状態となっている。


 虚の身体と連動しているかのように直るその服は、脱ぐことは出来ても離れることが出来ず、一定距離を超えると服が強制的に虚に着られるように動くのだ。


 生命体というわけではないが、ただの布と結論付けるには不可解な点が多すぎる服なのだ。


『不便はないからこれでいいがな』


 虚自身は生前より衣服に意識を割くことはほとんどなかったため、動きやすければそれでいいと気にしないことにしている。



 話を戻し、戦争の話だ。


 クリスティーナの話を聞く限り、意見を通すための戦争ではなく、明確に敵対している生命体を排除し、現地での安全を確保することが目的の戦争であるため、虚の心は痛まない。


 奪う命は大量にあるだろうが、漁師が網で大量に釣り上げた小魚一匹一匹を心を痛めながら捌くようなことはないように、得体の知れない生命体を殺すことは虚のストレスにはなり得ず、人相手に戦争を行うよりは遥かに気楽に戦場に向かうことが出来る。



「お前たちは戦場には連れていけないが」

「私が居ないからと言ってサボり」

「私が戻った時に今よりも弱くなっていたら一度や二度の死で赦すことはない」

「いいな」



「「「はっ!!」」」



 そういった約束を隊員たちを交わしながら部屋の中で待機し続ける。


 この大陸や常識、文字について軽く勉強をしながら待つこと約2時間。


 少々では効かなくなってくる時間を待たされていた虚たちの元へ伊那止が入ってくる。



「虚殿、こちらへ」


「やっとか、待ちくたびれたぞ」


「はい、申請を通すために時間がかかってしまいました。大変申し訳ありません」


「責める意図はない、肩の力は抜いていいぞ」



 その言葉を聞いてフッと胸をなでおろした伊那止は、再びキュッと表情を引き締め、虚を誘導する。


 戦争へ向かうための乗り物が乗っているガレージまで。

      この先、星があるぞ     

     あぁ、星  おそらく星   


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