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それの身体・1

「この頭は後で研究所へ持っていく、お前の身体の細胞がどうなっているのかはオレも気になっているところだ」



書類に目を落としながら大将は話を続ける。


その間も女の首はデスクの端に置かれ、濁った瞳で女を見つめている。



「私もこの体のことは何も知らん」

「そもそも自分がどこで生まれてどのような存在なのかも分からん」



大将に対して比較的丁寧な言動を取っていたが、喧嘩をしてからはその必要を感じなくなったのか、脚をローテーブルに乗せ、頭の後ろで手を組むなどという態度に変化していた。


その態度に大将は腹も立てずに受け入れている。


本能的に負けを認めており、この女には敵わないと判断した。

だったら何も言わずに受け入れた方がいい。


それにこの女とは友好関係を持っておいた方が後々良い、と直感的に感じた。



「何も知らないとはな。戦いの腕はそう見えなかったが」


「戦闘に身を浸して死んだからだろうな、知識は足りないが戦いの技術は衰えていないさ」


「死んだ?お前が?」


「あぁ、老衰でな」


「老、衰…?」



大将は女に訝し気な表情を向ける。


いまソファに座っている女は多く見積もっても20代後半といったところ。老衰など想像もできないほどに若く、健康だ。


そんな表情を見せる大将に対して女は笑って声を出す。



「前世という奴かもしれんな」

「それにしては、この体に記憶が入っただけにしても自然に体が動くというのも不自然な気はする」

「あまり考えすぎても答えは出ないだろうから毎回中途半端に思考を切るようにしているんだ」

「考えないことも大事だからな」



「前世、ねぇ?」



話を聞きながら大将は書類に判を押した。


『機密』と。



「研究はするがお前とその直接の関係者以外に情報を公開しない。お前の身体を利用することも禁止しよう」


「急にどうした」


「私は情報が公開されても構いはしないが……」



「馬鹿か」と大将は呆れた顔で女を見る。



「どこだか知らねぇが前世の記憶があって?無差別にエネルギーを吸い続けるバケモンの情報を公開しろってか?良い方悪い方どっちに転んだとしても面倒事が付きまとうのは明確だ。それだったら公開しないほうが良い、研究者共もオレの息が掛かった奴らだけで揃える」


「そんなに厳重にされるなんてまるで厄介者じゃないか」


「とんでもねぇ厄介者だよ!」



大将は書き終わった書類をファイルに閉じ、それと女の首を持って扉の方へと向かう。


呆然と女がその姿を見つめているとまたもや呆れた顔で女を見た。



「ついて来いよ、お前の研究に行くんだからお前もこなきゃ意味ないだろうが」


「あぁ、そういうことか」

「てっきり後日かと思ってな」

「今晩どう過ごそうか考えていたところだ」



そう言ってソファから立ち上がった。



『こいつ変なところで抜けてんな』



大将が内心ため息を吐きながら扉を開けば、〈不死隊(アンデッド)〉の面々が整列していた。


そこそこの時間を主を迎えるためにこうして待機していたのだ。


派遣に出す前では考えられない行動である。


変わるにしても変わりすぎじゃないかと大将は女へと目線で訴える。



「私も何でここまで従順なのかは知らんよ」

「ただ、実験と称してこいつら全員を5回以上殺しているからそこら辺の影響はあるかもしれん」

「何度も死んで心が折れた可能性もあるな」



真顔で自身の行った所業を語る女を将軍は初めて心の底から恐ろしく思った。


自分の2回の死亡ですら「敵対するのは辞めよう」と固く誓うレベルの体験なのだ、それを5回以上もされてしまえば心など壊れて当然。従順な駒にもなろうものだ。



「なんだその目は」


「バケモンを見る目だよ」






女は合流した〈不死隊(アンデッド)〉へことの経緯を説明し、これから自分の身体を調べるために研究室へ向かうのだと伝えた。



「将軍閣下、こいつらは連れて行っても大丈夫か」


「……研究員に何かをしなければ許可する」


「だそうだ、些細なことでコトを起こすなよ」



「「「承知しました!!」」」



不死隊(アンデッド)〉30人分の声が廊下に木霊する。


付近で聞いていた女と将軍は思わず耳を塞いだ。


元より声が大きい軍人が30人も一度に狭い廊下で声を出せばこうなることは必然であった。


女は隊長格の男へ軽く蹴りを入れながら大将先導の元、自分を研究するという研究室へと向かった。



------------



大将の執務室に行く時とは異なり、エレベーターを使って地下へと向かう。


少し待てば動く箱は停止し、扉が開いていく。



そこにあったのは怪しげな光を放つ大量の機材であった。


闇の研究機関と言い表すのが手っ取り早いであろうその光景は、女がこの場の連中に自分の研究をさせるのを考え直すには十分すぎるインパクトであった。



「ちょっと待て」


「なんだ?」


「この場所で変な研究はしていないだろうな?」

「私の細胞を使って妙な生物を生み出すなんてしないでくれよ」


「何言ってんだお前」



何度目かわからない呆れた顔を女に向け、内心ではなく口から大きなため息を吐く。



「細胞を使って謎生物を作り出すなぞ、どれだけ昔の話をしている。細胞を組み合わせて遺伝子を改造する行為はコストの無駄なだけで何の得にもならないことが研究結果で分かっている。いまどきそんなことをするバカはいないぞ」





「なぜそんなこってこてのフラグを立てるんだお前は」


「フラグじゃねぇ」

        この先、星があるぞ     

   星を押すと良い、作者のテンションが上がる   


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