宿題
長期休みを利用して遊びに出掛けた僕は、店の前で悩んでいた。
お土産を買って行くとは言ったけど、みんなに何を買って行けばいいのだろうか?食べ物を買って行っても、傷んでしまったりする可能性があるし、かと言って物を買うにしてもなぁ…。
バルドが好きなのは剣とかだし、コンラッドは本でしょ。ネアが好きな物は分からないけど、お土産として買うにはどうなんだろうか?
「父様、お土産は何を買えばいいと思う?」
「気になる物を全て買って…。いや、友人が好きそうな物を買えばいいのではないかな?」
「え?そ、そうですね…」
自分で聞いておいて何だけど、父様なら店ごと買い取るとか言うかと思ったから、逆に何か驚いた。それに、お店も、貴族が行くような高級店ではなく、街の人達も来るような格安の店だった。まあ、僕としても、安い方が助かるから良いんだけどね。
「兄様は、レオン殿下とかにお土産買って行かないの?」
「…買う予定はない」
「でも、喜ぶと思うよ?だから、何か買って行こうよ?」
「……。なら、これでいい」
一緒に、お土産を選んで貰おうと思って提案したら、兄様は少し考えてから、目の前に置いてあった小さなトラの置物を手に取った。
兄様が選んだ物以外にも、様々な種類の置物があって、どれも可愛らしく作られていた。僕の手よりは少し大きいけど、兄様が持つと手の平に収まる程度の大きさだった。
「何で、それにしたの?」
「目の前にあったからな」
「そんな理由でいいの…?」
「別にかまわないだろう。文句を言うのなら、そのまま持ち帰ればいい」
そういえば、兄様は可愛い物が好きなんだっけ?口元を緩めながら、置物を見る兄様を見て、僕はそんな事を思い出していた。
でも、それって自分が欲しい物を買っているだけのような気がするけど、お土産選びはそんな感じなのかな?僕が貰って嬉しい物でいいなら、僕も1つ欲しいから、これにしようかな?
僕は、お金の入った袋の中を取り出すと中身を確認した。お小遣い制にして貰ったけど、この休み中に結構使ってしまっていて、お金が足りるか若干不安になる。
中身を確認すれば、5個買ってもまだ少しだけあまりそうなお金が残っていた。僕は、どれを買って行くのか悩んで、みんなには狼と馬と猫の置物を買って行く事にした。後は、日持ちしそうな焼き菓子を買ったら、ちょうどお小遣いがみんな無くなってしまった…。
お小遣いが出る来月まで、何も買えないという痛い事態にはなったが、大いに休みを満喫した僕は、屋敷に帰って、今度は大量の宿題に頭を悩ませる事になった。
父様と兄様に、さり気なく宿題を手伝って貰えないか聞いてみたけれど、宿題なんて1日もあれば終わるだろ?と言われただけだった。だけど、僕の頭で終わると本当に思っているのだろうか?
でも、やらなければ終わらないと、僕は、少し半泣きになりながら宿題と格闘していた。そうしたら、父様達が心配して手伝おうか?と言ってくれた。僕は、両手を上げて喜んだけど、ドミニクから阻まれてそれは叶わなかった…。その後、ドミニクの監視の元、学院が始まる前までには、何とか自力で終わらせる事が出来た。
久しぶりに学院に行くと、何だか新鮮さを感じる。教室の扉を開けると、バルドの席で何かやっているようだった。
「何してるの?」
「バルドの宿題が終わってなかったらしくて、今、手伝っている所です」
「手伝うんじゃなくて、答え見せてくれたらそれでいいよ!!」
「それだと、意味がないでしょう。この休み中、屋敷にいたはずなのに、なんで終わってないんですか…」
「補習とかで、いっぱいいっぱいだったんだよ!!」
半泣きで宿題をやった僕としては、バルドの気持ちは良く分かる。
「少しくらいなら、いいんじゃないかな?バルドも、補習頑張ったんだから…」
「リュカ!」
バルドは、まるで救い主が現れたような視線を向けて来るが、すぐにその希望が打ち砕かれた。
「駄目です。それだと、宿題は自分でやらないと意味がありません。ほら、もうすぐ先生が来るのに、手が止まってますよ」
「コンラットの鬼!!」
その様子を横から見ていると、何だか少し前の自分を見ているような気になって来る。父様達も、こんな気持だったんだろうかと思って、家に帰ったらお礼を言っておこう…。
さすがに、全部の宿題を終わらせる事は出来なかったけど、バルドの疲弊した姿を見たからなのか、先生は何も言って来る事はなかった。
「今度は、少しずつやるようにする…」
「来年まで、それを覚えているといいですね」
僕もだけど、来年になったら忘れているような気がする…。でも、今から心配してもしょうがないので、来年の事は来年考える事にした。
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