商会へ
新年祭が終わった後、リオ先生から頻回に、学院での様子を聞かれるようになった。
「はぁ…。心配してくれるのはありがたいけど、そんなに来てくれなくても良いのに…」
「あまり、気にしない方が良いと思いますよ…」
彼と揉めた日から、僕が、不正をしたと言う噂を、広めていたみたいで、今度は、教師に媚びを売ってると言っているらしい…。
「楽しい話でもすれば、気が紛れるんじゃないか?」
「楽しい話…?」
「楽しい話ですか?それなら、リュカは、来月に迫ったアルノルド様の誕生日に、何か差し上げるんですか?」
「何で、父様の誕生月知ってるの?」
僕が、不思議に思って尋ねると、コンラッドは少し誇らしげに答えた。
「伝記に書いてありました。オルフェ様は、三ヶ月後ですよね」
「何で…知ってるの…?」
「非公式のファンクラブがあるので、知っています」
「そんなのがあるの!?」
「ありますよ。一時期、オルフェ様の真似をすればモテると勘違いした愚か者もいたみたいですが、そうした人は制裁を受けたそうです。だから、今は、純粋に憧れたりしている人しかしていないそうですよ。まあ、ファンクラブに目を付けられる覚悟は入りますけどね」
じゃあ、たまに見かける人達は、兄様に憧れているって事…。
「兄様から、聞いたこと無いけど…」
「非公式ですので、それに、オルフェ様にはご迷惑を掛けないのが、暗黙のルールです」
「ま、まさかと思うけど…コンラットは…入っていないよね…?」
「もちろん。入っていますよ。私の兄も入っていたので、簡単に入れました」
僕が、みんなに相談した時、バルドの事を脅してでも、止めていた理由が分かったような気がする…。
「それで、何か渡すのか?」
「前までは、母様が屋敷に来た商人から、一緒に選んで買ってたけど、今年は自分で探してみたいんだ。だけど、あんまりお店とか詳しくないんだよね…」
前みたいに、フェリコ先生に頼もうに、学院に入学してからは、たまに顔を見せに来るくらいしか、屋敷に来なくなってしまっていた。だからと言って、1人で行く自身もない…。
「家にある商品でも見てみるか?」
「いいの!?」
「良いのが見つかるかは、分からないがな」
「商会の名前は、何て言うんだ?」
「ウィンクルム商会」
「それなら、結構な大手ですね」
「そうなの?」
「近年、急成長した商会らしいですよ。幅広い商品を取り扱っていて、大体の物は手に入るそうです」
「じゃあ、今週はネアの家に、みんな集合な!」
「バルドも行くの?」
「おぅ!ネアの家には、行った事ないから行ってみたい!だから、何時も通りコンラッドと一緒に行くぜ!」
「勝手にメンバーに、入れないで下さい…」
「コンラッドも、たまには素直に行きたいって言えば良いのに」
「煩いです…」
バルドとコンラットのやり取りは、もう何時もの日常になったなと思いながら、2人の会話を聞いていた。
週末、家族には友達の家に遊びに言って来ると伝えて、僕はネアの家へ馬車で向かった。
「おぅ!リュカ来たな!」
僕が、ネアの家に付くと、既に2人が来ており、バルドからはまるで自分の家であるかのように迎えられた。
「ネア、お邪魔します。これ、母様達からの手土産」
「私も、渡すのが遅れてしまいましたが、私達からの手土産です」
僕が、母様達からの手土産を渡すと、コンラットも、手に持っていた荷物をネアへと差し出した。
「俺、手土産の事忘れてたんだけど、俺の分もコンラットが用意しててくれたんだぜ!」
「たぶん、バルドは、忘れてるだろうなと思ったので、準備しておきました」
幼馴染だからなのか、バルドの事をよく知っているようだった。
「礼を言う。ここに居ても邪魔になるから、まずは中に入れ」
大手の商会という事も合ってか、頻回に店に出入りする人がいるため、入り口に立っていている僕達は邪魔になっていた。
店に入ると、中は混み合っていて、それぞれが商品を眺めていた。
「奥の方が人は少ない。付いて来い」
ネアはそう言って、僕達を店の奥の方へと案内した。すると、奥の方から、グレーの髪に薄紫色の目をした男性がやって来るのが見えた。
「いらっしゃいませ。私は、この商会の責任者をしているノアと言う者です。ネアの友人方の事は、既に承っていますので、我が商会の商品を好きに御覧ください」
「よ、よろしくお願いします」
柔和な表情を浮かべながら、僕達に挨拶話しかける姿は、屋敷に来る商人達と同じような雰囲気で、少し緊張してしまった。でも、ネアとは容姿や雰囲気も、全く似ていない気がする。
「皆様が商品を探すのを邪魔になるといけませんので、私は、ここで下がらせて頂きます」
男性は、軽く一礼すると、店先の方へと去って行った。
「さっきの人が、ネアのお父さん?」
「あれは、父親じゃない。あれを、父と呼ぶ事もない」
「え?どういう…」
僕の言葉を止めるに、コンラッドが袖を軽く引いた。
「リュカ。あまり、家庭の問題に口を出すべきではないと思います。誰にも、秘密などがありますし…」
小声で僕に注意して来た横で、バルドは、手で耳を塞ぎなら片言で何か呟いていた。
「ひみつ…あばく…よくない…」
「まだ、秘密と言う言葉は、バルドには禁句でしたか…」
コンラッドが、傷を広げたと思うけどね…。
そんな事を話しているうちに、ネアとの距離が少し離れてしまったで慌てて後を追い掛けた。
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