表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/305

生誕祭


授業中に戻る気になれなかった僕は、終わる時間まで時間を潰してから教室に戻った。すると、バルドに何の話だったのか聞かれたので、さっき言われた事を話したら、少し同情されたような目で見られた。


「リュカも大変だな…」


「他人事のように言ってますが、貴方も同じような物でしょう」


「俺は、三男だからか、兄貴達ほどは厳しくないぞ。それに、貴族らしくしろなんて、親父からも言われた事ないからな」


「僕の父様だってそうだよ…」


「そうなのか?まあ、俺の親父よりも優しそうだったしな」


「うん。注意された事はあっても、父様から怒られた事はないよ!」


「怒られないからと言って、好きにして良い訳でもないですけどね…」


少し誇れしげに言った僕の言葉に、コンラットが水を指した。


「まあ、今後、リュカも気を付ければいいんじゃねぇ?」


「バルドに言われたくないよ!」


「貴方が言っていい事ではないです!」


「え?」


バルドは、僕達の言葉にキョトンとした顔をしていて、怒られた意味を分かっていないようだった。


その日、ネアを睨むように見ている事はあっても、彼が、僕達に突っかかって来る事はなかった。


その後も、授業の勉強で困る事はあっても、何事もない平穏な学院生活が続いた。休みの日には、みんなが僕の屋敷に集まって勉強したり、兄様と一緒に陣を作る練習をしていたら、入学から1ヶ月の月日がたっていた。


「もうすぐ生誕祭か…。礼服は、動き難くて着たくないから、行くたくもないなぁ…」


「動きやすさを考えて、作ってる服ではないと思うよ…」


「でも、新年祭の前は、王城に行くのも楽しみにしてたではないですか?」


「伝記とかで、出て来てたから憧れてたんだよ!でも、退屈だったんだよ!!パーティが、あんなに退屈だと思わなかった!」


バルドの気持ちは、僕も分からなくもない。僕も、最初は退屈だったけど、兄様のおかげでつまらなくは無かったな。


「はぁ…。パーティに行くより、街で遊んでた方が楽しそうだよな…。そういえば、ネアはその日、何してんだ?」


「仕事だな」


「家が、商会やってるんだっけ?」


ネアから、あんまり家の事を聞いた事がない。それに、ネアの雰囲気も商人らしくないから、忘れそうになる。


「荷物の準備や、運ぶくらいしかやらないがな」


ネアは、何でもない事のように言うが、僕と同じ歳で働いているのは、凄い事だと思う。


「偉いんだな!」


「バルドも、少しは見習ったらどうですか」


この後も、学院に来るたびに、バルドは行きたくないと愚痴っていた。


生誕祭の日


僕は、会場に来ているだろう2人を探しに行きたかったけれど、前回迷子になって迷惑をかけた事があるため、両親の側を離れないようにしていた。


兄様も、仕事をやり始めたせいか、新年祭の時とは違って、挨拶に訪れる人がいて忙しそだ。何もやる事がない僕は、誰か知っている人はいないかと、会場内を見渡していた。


「あ!リオ先生!」


「これは、レグリウス公子様。お声を掛けて下さり、ありがとうございます」


僕が声を掛けると、学院にいる時とは違って、丁寧な仕草と言葉を返して来た。髪も、ウェーブがかかっていた髪を寝かせているから、雰囲気も違って別人に見える。


「リオ先生も、来ていたんだね?」


「はい。分不相応の身ではありますが、この度も陛下にご招待頂きました」


「君は、リュカの担任だったかな?」


先生と2人で話しをしていたら、僕達の会話に父様が混ざって来た。


「お久しぶりです。レグリウス卿。あれから、お変わりはありませんか?」


「変わりはない。担任である君に、私が望むのは1つだけだ。息子達には、自分の思ったように学院生活を過ごして欲しいと、私は思っている。だから、それを邪魔されるのは不快だ…」


「はい。分かっております。担任として、問題が起こらないように、気を配ります」


リオ先生は、軽く笑みを浮かべながら、父様に頭を下げた。


「それならばいい…。私は、まだ挨拶をしなければならない者が残っているので、これで失礼させて貰う」


「貴重なお時間を割いて頂き、ありがとうございます。私も、これにて失礼させて頂きます」


父様が、他の貴族の元へ戻るのを見届けると、リオ先生は人混みの中へと消えて行った。


「あの教師は、あまり好きではない…」


いつの間にか、僕の側に来ていた兄様が呟くように言った。


「どうして?優しい先生なのに?」


「……。リュカが、気にいっているのなら、私から言う事はない。それよりも、此処にばかりいては退屈だろう。お菓子でも食べに行くか?」


「いいの!?」


「挨拶も終わったから問題ない。リュカが、行きたい所に行けば良い」


「やったー!!」


僕は、兄様を連れてお菓子がある場所を目指した。


お読み下さりありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ