厄介な相手
「学院は、どうだった?仲良くなれそうな子はいたかな?」
夕食の席で、父様から学院での様子などに付いて聞かれた。
「うん…。ネアって言う赤髪の子からは…よろしくって…言われたよ」
「赤髪…?」
「うん。最初、教室が分からなくて迷子になってたんだけど、途中で会った鷹が案内してくれてね。それを追いかけてたら、その子にぶつかって知り合ったの…」
「鷹…ねぇ…。アル。この後、話しがあるんだけど、いいかしら?」
「はい……」
父様が、何処かばつが悪そうにしているけれど、何か余計な事言ったかな?それにしても、明日もネアに会うかと思うと、2日目で学院に行くのが嫌になるんだけど…。
次の日は、昨日と違って、道に迷う事もなく、教室へと着く事が出来た。僕が、教室の扉を開けると、ネアが既に来ており、誰かと話しているのが見えた。
「おぅ!おはよう!お前の友達、話し分かるな!!」
だから…ネアは友達じゃない…。視線が合った途端に、話しかけられながら、昨日の記憶を思い出す。
「えっと…グラディエスであってる?」
たしか、自己紹介の時にそう言っていた気がする。
「バルドで良いって!俺もお前の事、リュカって呼ぶから!それに、これから同じクラスなんだし、仲良くしようぜ!」
何だか、ネアと同じようなタイプが、また増えたんだけど…。
グラディエス家の名前は、フェリコ先生の授業でも、たまに聞いていた。騎士になる者が多く、歴史の教科書にも乗っている人がいるから、自己紹介の時にも印象に残っていた。
短く刈り上げられた黒髪に、燃えるような赤い眼をしていた。浮かべる笑顔からは、人懐っこそうな印象を受けるせいか、僕との間に体格に差があっても、威圧感を感じなかった。
「よ、よろしく…」
「バルドとは、よろしくしない方が良いですよ」
突然聞こえて来た声に振り向けば、スクトールが教室に入ってくる所だった。
「コンラッド!おはよう!」
「レグリウス公爵。昨日も言いましたが、付き合う相手は考えた方が良いですよ。だから、バルドとも関わらない方が良いです」
バルドが挨拶をして来ても、普通に無視して、僕に話しかけて来た。でも、お互いに名前呼びしてるって事は、親しい間柄なのかな?
「コンラッド酷くねぇ!?それが、幼馴染に言うセリフか!?」
「貴方を、幼馴染と認めた覚えはないですね。そもそも、毎回、私の家に無断で侵入して来ているだけでしょう」
「だって、俺が行かなきゃ来ないだろ?」
「会いたくないから行かないんですよ…。はぁ…貴方と家が隣なのが、本当に嫌です…」
昨日のきつそうな様子とは違って、何だか今日は、苦労人みたいに見える。
「お前ら、幼馴染なのか?」
僕も、疑問に思っていた事を、ネアが先に訪ねた。
「違います!コイツが3歳の時に、私の家に無断で侵入して以来、ずっと勝手に侵入して来るだけです!」
「あの時は、家にいるのに飽きて、庭で遊んでたら、抜け道見つけて入ってたんだよな~。あの後、さすがに親父から鉄拳制裁食らったけど、今ではいい思い出だよな!」
「それは、貴方だけです…。せめて、来るなら門の方から来て下さい…」
「え?門から入るより、抜け道の方が近いだろ」
「分かるでしょう…。こういうのに関わると、苦労しかしないという事が…。だから、付き合う者は考えた方が良いと言ったんです…」
何処か、疲れ切ったように言う様子には、何とも言えない説得力があった…。
「コンラッドは、見た目きつそうだけど、優しい所あるんだぜ。だから、昨日の件は気にするなよ。コンラッドは、リュカの父親や兄貴に憧れて頑張って勉強してたんだよ。それで、お前が入学するって聞いてさらに頑張ってたのに、その相手に情けをかけられたのかと思って、勝手に怒ってただけだから」
「バルド!!」
「え?事実だろ?誤解だったから謝りたいって、昨日言ってただろ?」
「貴方には、デリカシーが無いんですか!?」
「え?何それ?」
ハルドの言葉に、コンラッドは最初、顔を赤めて怒っていたけれど、最後の言葉で、脱力したように力なく項垂れていた。
「はぁ…。貴方に言った私が馬鹿でした…。レグリウス公爵。昨日は、学院にも確認をして、私の勘違いだったと知りました。本当に、無礼な物言いをすみませんでした。それと、ネア。あなたを嘘つき呼ばわりしてすみません」
スクトールは、僕達2人に、頭を下げて謝罪してくれた。
「別に良いよ。それより、公爵呼びは何だか落ち着かないから、名前で呼んで欲しいな。僕も、コンラッドって呼んでいい?」
「はい。構いません。私も、リュカと呼ばさせて貰います」
「なら、俺もそう呼ぶ事にする。それと、俺は別に最初から気にしてなかったから、謝罪は必要ない」
「お前心広いな!」
「だろ」
「お互い、厄介な相手に目を付けられて、苦労しますね…」
横で意気投合している2人を見ながら、僕達はお互いにため息を付くのだった…。
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