用事を終えて
冒険者ギルドでの用事も終えて、ようやく屋敷へと戻って来た。
「ただいま!!」
「おかえりなさいませ。皆様、ご無事でなによりです」
馬車から降りると、玄関先で、ドミニク達が僕達を出迎えてくれた。
「ドミニク、悪いが私は直ぐに、城に行かなければならない。だから、皆を頼んでもいいか?」
「城へ…ですか?」
どうやら、父様は、昼食も食べずに、また出かけるようだ…。
「ああ…この屋敷に入れたくない者がいるのでね…」
ドミニクは、冒険者達が取り囲む最後尾の馬車を見ると、何かを納得したようだった。
「かしこまりました。お気を付け…なくても大丈夫ですね」
「おい…」
「冗談です。後はお任せ下さい」
ドミニクが、一礼したのを確認した父様は、僕達の方へとやって来た。
「慌ただしくてすまないな…あれを連れて、城に行かなければならないんだ…。エレナには、此処に来るまで伝えていたのだが、2人には、伝えるのが遅くなってしまった…」
「大丈夫です!でも…速く帰って来てね…」
「私は、問題ないです。何かあれば、私が対処します」
「なるべく、速く帰ってくるようにするからね。オルフェも、頼んだよ」
父様は、乗ってきた馬車に、再び乗ると、城を目指して、出かけて行った。父様…速く帰って来るといいな…。
「2人とも、まだ外は寒いから、屋敷の中で、帰りを待ちましょう?」
母様に言われて、屋敷へと足を向けながらも、視線は後ろばかりを向いていた。
「リュカ、前を見ないと転ぶ」
「そうですよ。アルノルド様が戻った時に、リュカ様が怪我でもしていたら、使用人の首が、物理的飛ぶかもしれませんよ?」
「父様は、そんな事しないもん!ね!兄様!」
「そうだな……」
「ほら!」
ドミニクは、少し肩をすくめると、母様を伴って屋敷へと入って行った。隣にいた兄様も、何処か視線を逸らしながら、足早に屋敷へ向かったので、僕も、置いていかれないように、皆の後を追った。でも、ドミニクも冗談とか言うんだな?
その後、皆で、昼食を食べ終えた僕は、自分の部屋に戻ろうと席をたった。その時、後ろから兄様に呼び止められた。
「リュカ、明日、何か予定はあるか?」
「?明日まで、旅行の予定だったから、特に予定はないよ?」
「なら明日、実際に、この紋が機能するかどうか、試してみないか?」
「え…い、良いですけど…大丈夫…なのかな?」
「まずは、それを含めて、試してみなければ分からないが、異常を起こした召喚獣を見た事がないから、大丈夫だろう」
「う、うん…」
兄様は、大丈夫だって言うけれど本当に大丈夫かな?兄様と、途中まで一緒に、部屋へと向かいながら、僕は、そればかりを考えていた。
部屋に付くと僕は、自分のベットの上に、大きく飛び乗った。
「ふぅ~」
自分のベッドに横になって、ようやく一息付けた気がした。楽しみにしていた旅行では、大変な目にあったなとあらためて思う。
でも、悪い人達は皆、捕まったそうだから、ひとまずは良かった。でも、他にもいると思っていたけど、捕まってみると、そんなに、多くの人数はいないようだった。
「ふぁ~」
ベットに横になっていると、だんだんと眠気が襲ってきた。お腹がいっぱいになったのと、揺れる馬車で、移動中も休めず、昨日はほとんど寝てなかったせいもあって、僕は眠気に勝てずに、そのまま夕飯まで眠りへと落ちていた。
夕食の前くらいに起こされた僕は、食堂へと降りて行った。そうしたら、父様も既に城から戻っていたようで、僕が来るのを待っていてくれた。
「今回は、本当にすまないな…。せっかくの旅行を台無しにしてしまって…」
みんなが揃った夕食の席で、父様は僕達に、再度謝ってきた。
「父様が悪いわけじゃないから!」
「そうよ。アルが悪いわけじゃないんだから、それに、アルの方が、休みを取るために頑張っていたでしょ」
「気にしすぎです…」
「…ありがとう。オルフェは、その後、何か変わった事はないかな?」
父様は、周りの使用人に分からないように、何処かぼかしながら、兄様の体調の変化を訪ねた。
「特にないですね…。ですが、まだ右手に、後が消えずに残っています。明日、リュカと一緒に、確認してみるつもりです」
「明日か…。一緒にいてやりたいんだけど、余計な仕事が増えてしまって、一緒にいてはやれなさそうだ…」
「別に問題はないと思いますので、大丈夫です」
その後も、父様は何処か心配そうに、兄様の事を見ていた。
次の日、父様が出掛ける際に、僕達に言った。
「くれぐれも、無茶はしないように、何か不調があったら直ぐに中止し、私の所まで連絡をしなさい。いいね?」
「忙しいんじゃないの…?」
「文句があるなら、辞めてやると言えばいい…」
「それは…ちょっと…」
「分かりましたから、父上は仕事に行って下さい。遅れますよ」
「うーん…。では、行ってくるから、何かあれば連絡するんだよ」
父様は、そう言って馬車で出かけて行った。
「私達も、始めるか」
「はい!」
僕達は、玄関からそのまま裏庭へと向かった。
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