ルイーザ 第十四部 第三章
「だいぶ情報が集まった」
そんな時に天幕が開いて魔王クルシュが入ってくる。
横にクリトラオスがいた。
「寝てたんじゃないのか? 」
「いや、そんな暇ないだろ」
「クリトラオスは何を? 」
「いや、いろいろと使っていいと言われたから、彼にクシャナ帝国の情報部を使って貰って調べていた」
カルディアス帝の疑問を魔王クルシュが答えて、クリトラオスが頷いた。
「調べるって何を? 」
「大量に食料とか買いこんでいる奴はいないかとか調べさせたんだ」
「ああ、なるほど」
「洗脳で裏切った兵員もいるから、彼らの食糧とか買い集めれば確かに目立つでしょうね」
「だが、ウルギス帝国に逃げ込んでいるんでは? 」
「そんな大っぴらにやれないからだろ。大っぴらにやるなら、すでにウルギス帝国は動いて戦争を仕掛けて来てる」
「ああ、なるほどな」
コンラート皇帝が頷いた。
それを麗王の中にいるルイーザが懐かしそうに見ていた。
その光景はスタンリー公爵の領土にいる時の魔王クルシュの姿に他ならなかったからだ。
そうやって、彼は王国に見捨てられていたような、常にピンチのスタンリー公爵家を指揮して何度も敵国の撃退を行った。
「あれ? ルイーザか? 」
目を細めて、魔王クルシュがそう麗王……ルイーザに聞いた。
「え? 」
ルイーザが驚いた顔をした。
勿論、ロイド法王とカルディアス帝とコンラート皇帝も驚いていた。
「分かるのか」
「そりゃ、どちらも子供の頃から一緒だからな。麗王もルイーザも」
そう嬉しそうに魔王クルシュが笑った。
その笑顔がルイーザにとっては懐かしかった。
「まあ、ずっとストーカーですからね」
「数百年ずっと一人の女性を追い続けているんだもんな」
ロイド法王とコンラート皇帝がちょっと顔を背ける。
「いやいや、人格と言うか性格は違うしね。だから俺が追っかけていた相手は、ずっと一人とは言えないかもしれないけど。まあ、どちらも芯はしっかりしてる女性だけどね。俺は封印されても、どれだけ時間が経っても、生まれ変わった彼女に会って、それでも好きだったんだ。それだけだよ。ずっと一人を追い続けてるってのは言われて見れば少し違うかも」
そう魔王クルシュがルイーザを見て優しく笑った。
「フラれて犬に名前を付けてたくせに」
「自暴自棄になって壊れてたのに」
「いやだから、いろいろと考えて、それで自覚したんだ。ショックは受けるとは思うけど、彼女の気持ちは受け入れるつもりだよ」
少し暗い顔になったけど、魔王クルシュがそう話す。
「足が震えてんぞ」
「頼む、今、お前が壊れると困るんだけど」
「いや、そりゃ、好きだもの。本当に好きだから」
魔王クルシュがそう困ったように正直に言うとルイーザが真っ赤になった。
「いや、あの……」
「だから、全部終ったら返事を聞かせてください」
魔王クルシュが決心したように勇気を出してルイーザに話した。
「そうして、フラれるわけですね」
そうクリトラオスが横で突っ込んだ。
その結果、凄い顔をして魔王クルシュが下を向いた。
「いやいや、終わった後で良いから」
「まだ終わって無いからっ」
「お前勘弁しろよ」
そうカルディアス帝がクリトラオスにチョップした。
「もう、良いのか」
「はい……」
突然、ルイーザに麗王が話しかけて返事をもらった。
とは言っても一人で話しているだけだが。
「ま、待ってるからっ! 」
魔王クルシュが必死になって叫ぶ。
「そういうのは言ったら駄目なんだよ! 」
「静かに待ってろよっ! 」
ジト目の麗王に見られながら、カルディアス帝とコンラート皇帝が魔王クルシュに怒鳴った。




