ルイーザ 第十三部 第六章
「いやいや、お待ちください! ウルギス帝国を攻撃したら、教王との関係を我々が知ったと向こうが動き出してしまいます! 」
カルディアス帝がそう頷いた。
「それがどうした。それごと奴等を葬れば良いでは無いか……」
水龍神ラトゥースの返答は逝っちゃってた。
「いやいや、ワイバーンの空騎兵など我々からしたら、充分な対策はしていないので……」
「一応、ゼクス帝国とウルギス帝国の国境付近にはバリスタを並べてあるだろうが」
「いや、それは……」
水龍神ラトゥースの言葉にコンラート皇帝がしどろもどろになる。
あるにはあるが、それは400年前からの骨とう品で……あまり整備もしておらずとは言えなかった。
かっては一神教の国々がいくつかあった時代には、普通に彼らの国もワイバーンの空騎兵と戦った事はあった。
だが、ウルギス帝国が大陸の西側の一神教のエリアの全土を支配して、一神教のウルス帝国と多神教の国々の連合との平和条約とともに不可侵条約が結ばれて、そう言う事は無くなった。
ワイバーンは砂漠地帯に多い。
気候的にも、ウルギス帝国が最良の気候で、ウルギス帝国は平和条約とともに国を事実上閉じて、ワイバーンが多神教の国々に不干渉の名のもとに漏れないように強力な規制をウルギス帝国の国内にかけていた。
そのせいで、400年以上の間、ワイバーンの空騎兵はウルギス帝国以外はロストウェポンのような扱いを受けていたのだ。
「常在戦場であろうが。ならば戦いに油断は禁物。平和こそ、次の戦いへの備える時。それを怠ったと言う訳ではあるまいな」
そう水龍神ラトゥースが見透かしたようにきっぱりと言い切った。
「数か月待てないかな? 」
麗王がそう水龍神ラトゥースに聞いた。
それだけのバリスタを作るには弦の材料の動物や魔物の筋などを干したりいろいろな工程に時間がかかる。
それを準備するまで待って欲しいと言いたいのだ。
「お前は自分が酷い目にあって、報復できる時に待つことが出来るのか? 」
そう水龍神ラトゥースが冷やかに麗王に突っ込んだ。
「う、うーん」
麗王がそこで考え込んでしまった。
「いや、嘘でも良いから、出来ますって言えよ! 」
「頼むから、そういうとこでは空気読めよ! 」
「相変わらずですねぇ」
カルディアス帝とコンラート皇帝とロイド法王が呆れたように麗王に突っ込んだ。
「……艦隊のバリスタを外せないか? ただ、それ専用の矢がいるだろうな……」
魔王クルシュがそう呟いた。
「いや、お前もかっ! 」
「お前らっ! 」
コンラート皇帝とカルディアス帝が魔王クルシュにも突っ込んだ。
カルディアス帝達が水龍神ラトゥースを説得しろと目で祈りを捧げていたが、魔王クルシュはふぅとため息をついた。
「いや、我が神の水龍神ラトゥース様が海神バルバトースを虐め抜いて時間を潰したとしても一週間から十日しか待てないでしょう。ならば、そのスパンで対抗策を考えるべきだ」
そう魔王クルシュが断言した。
その瞬間、それを聞いた海神バルバトースが痙攣を起こして泡を吹いて倒れた。
自分がその間に水龍神ラトゥースの暇つぶしで虐め潰されると聞いたからだ。
「何で諦めるのぉぉぉ? 」
自国が一番やばいコンラート皇帝が叫んだ。
「いや、だって、水龍神ラトゥース様との長い付き合いから無理だもの」
「私もそのくらいしか無理だし」
魔王クルシュとカルディアス帝の言葉でコンラート皇帝がその場に突っ伏して痙攣した。
それでカルディアス帝とロイド法王はそれぞれ絶句した。
「やはり魔王クルシュ……いや武王よ。我の事を良く分かっておるでは無いか……」
水龍神ラトゥースがそう嬉しそうに微笑んだ。




