プロローグ
よろしくお願いします٩(*´︶`*)۶
熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い。熱い……
コノハはこの時になって初めて、命をかけるという意味を理解した。
ぱっくりと裂け、赤黒い血が吹き出した右足の脛が誰かの頭に当たってひどく痛んだ。
ソレの熱によって石窯のような状態の洞窟は、その場にいるだけで体力を奪っていく。
コノハは地面に積まれた仲間達の死骸の上に投げ飛ばされてようやく、自分が課せられた試練の重みを知ったのだった。
もう既に逃げ場などどこにもない。
岩石に覆われた窮屈な空間に、ソレは押し込まれたかのように存在していた。
その状況を好機と思えたのは一体何分前だ?
この数分の間に何人の仲間が突撃し、屍となった?
わからない。
コノハの頭は考えることをやめ、行き場を失くした視線だけが今なお立ち向かい続ける仲間を写していた。
怒り狂い、無差別に牙をむき出しにする。
その後ろを見せずとも、もう幾人もの命を奪った。
コノハだって、弱小なのは百も承知だった。
名家でもなく、力もない。
強くなるための場所も時間もない。
ただの人形の集まりに何が出来ると思っていたんだろうか。
うまい話に乗せられた。
自分達が必要とされる時が来たのだと浮かれていただけだった。
なんでもない。
これは俗に言う“調整”というものだ。
最下層の国民を効率的に処分し、食料と水を確保する国の政策だ。
それなのに、役人たちや領主の話に踊らされ、のうのうと命を捨てにこんな山奥まで来てしまった。
───終わりだ。
もう、コノハたちが助かる可能性など1%も残されていない。
例えこの場に身をひそめられる場所があったとしても、体が焼け爛れるのは時間の問題だった。
振り返ってみれば何もない人生だった。
必死に追いかけたものもなければ、自分のために強くなろうとしたこともない。
誰が見ても卑劣な環境であったが、コノハはそこから抜け出すための手が、差し伸べられるのを待っていただけだった。
いてもいなくても変わらない存在だったと言うのは、まさにこの事だろう。
幼い頃、母が生きていた頃は自分はきっと特別な存在なんだろと信じてやまなかった。
ヒーローになりたい。
誰もが憧れる英雄になりたい。
そんなことを心の奥底で今この死ぬ寸前でも思った。そんなありえるはずがないのに。
たとえ価値のない人生だとしても、いちどでいいから英雄になりたかったんだと思う。
所詮負け犬はこの程度だった。
数分の間、考える猶予を与えたその戦いは終焉を迎えようとしていた。
「兄さん?」
何分目をつぶっていたのだろうか。
何分意識を失っていたんだろうか。
かろうじて息をしていたコノハの意識を戻したのは、息を切らし体の至るところに傷を作った妹だった。
「ユ……ル?」
「兄さん、しっかりして!あと少しだから!」
あと少し、この状況があと少しで好転するとはとてもじゃないが、思えなかった。
コノハが意識を失っている間に、もう仲間はユルとアランを含めて5人ほどしか残っていなかった。
「終わ……ろう?やっと、僕たちは母さんのところに……」
「やめて!!そんな事言わないで……」
息があがっている。
苦しそうに胸を上下させて、ユルは必死に命にすがりついていた。
血でぐしゃぐしゃになって、泥で塗れて、それでも小さなその手で剣を握り立ち向かっていた。
あがいていた。
「約束したじゃない?二人でこんな人生かえてみせよう、って……兄さんは……忘れちゃったの??」
──そうだ。変えるんだ。変わるんだ。
体が鉛のように重かった。
痛みを通り越し、既に意識が朦朧とする中、コノハは仲間の死体を踏みつけて立ち上がった。
「うん。ありがとう。兄さんは……いつまでも私のヒーローでいてね」
瞬間。
目を背けてしまうほどの激しい閃光が洞窟内を襲い、コノハの視界は奪われた。
眼球が焼けたように痛かった。
コノハは恐怖で頭がおかしくなりそうだった。目がひどくいたんで、開いていられなかった。
バケモノの目の前で、意識はあるのに前が見えない。
死体の周りをさまよい歩き、手探りにユルを探した。
誰の声も気配もしない。
数分後、コノハが再び視力を取り戻し、目を開いた時。
さっきまで転がっていたはずの無数の死体も、かろうじて立ち向かっていたはずの数人の仲間も、ユルも、忽然と姿を消していた。
そこでは、先程まで暴れ周り、仲間を食い殺したソレが、跪き、頭をたれていた。




