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「でも、当てなんかないんだろ。お前だって友達いないみたいだし」
「ふふん。あたしの場合はあんたなんかと違って、勇者の威光によって畏れ敬われてるだけよ。まあ? 確かに普通の女の子らしい生活からはちょっと離れちゃってるのは寂しいけど? あーあ、勇者って孤独で辛いわねー」
孤高の勇者なあたしかっこいいと言わんばかりにわざとらしく肩をすくめる綾音。
「……なあ。なんでお前ってそんなに自信に満ち満ちてるんだ?」
「なんでって、勇者は自信に満ち溢れているものよ」
「百歩譲っても勇者"予定"、だろ。……お前の〈ロール〉は?」
「うう……。……〈剣士〉」
頬を膨らませつつ大変不本意そうに答える。どうやらちゃんと自覚はしているらしい。そこまで致命的な思い込みでなくてよかったとひとまず一息つく。
「まあそれでいいから、お前の前借り勇者能力でさっさと残りの部員を探してくれ」
「い、言われるまでもないわ! さあ、あんたもついて来なさい!」
綾音が自信満々で一般教室のある方角へ向かい、まだ残っている生徒に声をかけ始める。
……そして、早三十分が経過した。
「……勇者の威光がなんだって?」
「うるさい! うるさいわよ!」
涙目になって逆ギレされた。……収穫はゼロである。
「……そうか。お前も"ぼっち"か。わかるぞその気持ち」
「あんたにだけは同情されたくない! うう……勇者には仲間が必要って決まってるのに、どうして誰も解ってくれないのかしら……。普通勇者に話しかけられたら二つ返事で仲間になるもんでしょ……?」
「本当にお前の中の勇者像って『エルネリシア』のまんまなんだな」
とにかくこのままではいつまでたっても帰れそうにない。志乃は仕方なく、彼女に代わって人探しをすることにする。
「と言っても、人が寄り付かないのはこっちも同じ……」
「あれ、しーくん?」
ぼやきながら次の教室へ向かおうとすると、声をかけられた。
「ん? ああ、先輩。まだいたのか」
千歳だった。志乃がまだ帰宅していないことに驚いてか、目を丸くしている。
「どうしたのしーくん、こんな時間に。まだお仕事終わってないの?」
「いや、終わった。できることなら今すぐ帰って何もかもを投げ出してゲームに没頭したい」
「も~、ゲームばっかりしてちゃダメって言ったじゃない。めっ、だよ?」
腰に手を当てて怒ってみせる千歳だったが、全く怖くはない。むしろ愛らしいくらいだった。
「ちょっと、誰よそいつ」
ぶつぶつと文句を垂れていた綾音が割って入ってくる。
「三年の鬼柳千歳、俺の従姉。年上なんだから『こいつ』とか言うな」
「? しーくん、この子は?」
「ああ、まあ色々あってな……」
志乃は千歳や瑠璃がいなくなってからの騒動をひと通り説明する。
「ええ!? ご、〈ゴーレム〉が暴走!? し、しーくん、大丈夫だったの?」
「大丈夫だったから今ここにいるわけだ」
「そ、そっか。良かったぁ……」
千歳はほっと胸を撫で下ろす。
「ごめんね。あの時勝手に帰っちゃわなければそんなことにならなかったのに」
「そう思うならぜひ最後まで手伝って欲しかったな」
「はう……。お、お姉ちゃんはしーくんのためを思ってのつもりで……」
千歳はしゅんと小さくなってしまう。少し意地悪を言い過ぎただろうか。
「ふうん、〈ロール〉は〈刀術士〉、〈アンコモン〉ね。レベルは……42? 三年にしたって高すぎね」
「……で、何してんだお前は」
「見ての通りよ?」
気づくと後ろで綾音が〈アナライザー〉で千歳を計測していた。断りもなく人のレベルやステータスを計測するのは褒められた行為ではないが、志乃もさっき教室でなんとなく同じ事をしてしまっていたので、強くは言えなかった。




