12.練
「後片付け、終わりました!」
「今日もありがとうね、お疲れ様。
そういえばエマちゃんは最近、騎士様が気になるんだって?」
「そうなんです!て言っても、中々お近づきになれる機会なんて無いんですけどね。」
「この前、道で若い子が話してたのを聞いたんだけどね、月に何度か公開訓練があるみたいだよ。見に行ってみたらどうだい?」
あの日から今までと変わらず、毎朝レオン様を盗み見ている。
何度か声をかけようと試みたが、結局勇気が出ずにいた。
「公開訓練…行ってみようかな!」
もしかしたら、レオン様もいるかもしれないしね。
当日、しっかり気合いを入れて支度した。
何度も鏡の前でにらめっこをしていたせいで、時間ギリギリだ。
いざ、参らん!
中に入ってみると、客席には若い女の子や、家族連れの人たち等、チラホラと人が座っていた。
レオン様はどこやー!!
手近の席に座り、神を探すべく、素早く視線を走らせるとすぐに見つかった。
神の周りだけキラキラしている。
額の汗が太陽の光に反射して、神々しさが増している気がするわ
カッコよさ増々の、汗という良きスパイスね。素敵。
輝く神だけを熱く見つめていると、ふいにこちらを向いたレオン様と目が合った。
ニコリ
正確にはニヤリ。
急な不意打ちに、思わず私の顔はニヤけた。
するとレオン様はすぐに顔を背けてしまった。
顔が赤いように見えたけれど…
ああ、残念だわ。
気づいてもらえなかったみたい。
目が合ったと思ったけど、きっと気のせいね。
公開訓練中は声をかけたりする事は禁止されているので、レオン様を観るべく、公開訓練の日は毎回来なくちゃね。
レオン様が、ルンルン気分で訓練場を後にするエマを、姿が見えなくなるまで見つめていた事を本人は気付いていない。




