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第9話

―仙城高校 教室―


 放課後、茜と二人で話をすることとなった。

 話題は部活についてだ。


「…プール掃除……ですか?」

「はい…。すみません、伝えるのを完全に忘れてまして… 」


 俺が謝ると、茜は焦ったように言葉を続けた。


「あ、いえ、そういうことではなくて……、その……」

「...?」


 意図を察せずにしばらく悩んでいると、茜の方から切り出してきた。


「……その、この時期にやる…なんて珍しいな、と」

「あぁ…、うちの学校って屋内プールじゃないですか」

「は、はい」

「なので掃除する時期を後から設定する必要があったらしく、それでこの時期が選ばれたらしいですよ」

「へぇ~……」


 しばらく沈黙が流れる。

 気まずい。

 大分心を開いてくれたようではあるが、やはり会話は苦手らしく、二人でいるとよくこうなる。


 なにか話題はないかなーとか考えていると、茜の背後から人影がニュッと伸びてきた。


「ちなみに生徒がやる理由はなんすか?」

「うわっ、びっくりした」


 どうやら楓だったようだ。

 茜のほうを見てみると、大分驚いたらしく、冷や汗をかいて心臓を押さえている。


「茜さん大丈夫ですか?」

「は、はい……、なんとか…」

「はぁ……、心臓に悪いからやめろよ…。

 んで、お前どっから出てきた?」

「茜ちゃんの背中に隠れてたっす!」


 元気よく言ってくる。

 相変わらず元気な奴だ。


「…それで、生徒がプール掃除する理由だっけ?」

「はい。この学校なら清掃員とか雇えるんじゃないすか?」

「あくまで聞いた話ではあるんだけど、新入生の洗礼の意味もあるんだってさ」


 そう言うと、楓が茜に抱きついてこう言い放った。


「まさかあたしと茜ちゃんに全部押し付ける気っすか?!陰湿…!」


 ドン引きしたような顔で言ってくる。


「もっと部員数の多かった頃ならやってたんだろうが……流石にやらないって」

「よかったぁ……」


 安堵した様子だ。


「さぁ、うだうだ言ってないで部室行くぞ」

「はーい」


―仙城高校 体育館―


「もう部活には慣れました?

「平気そう…です……!」


 やはり健気だ。

 癒される。


「良かったです。

 何か不満があればいつでも言ってくださいね。」

「あ、ありがとうござい…ます」


 そんな感じで軽く雑談していると、ふと楓の不満げな顔が視界に入った。

 触れとくべきかなこれ…。


「……んで、何でお前は何で不満そうなんだ?」


 そう聞くと、楓はさらに不満そうにこう言った。


「別に?仲が良いんだなーって思っただけっすよ?」


 これ明らかに不機嫌だな……。

 けど、こいつの地雷よくわかんないんだよなぁ…。

 そんな風に思い悩んでいると、ふと何か小声で独り言を言っているのが見えた。


「……あたしが一番先に先輩を好きになったのに…酷いっすよ…」


 よく聞こえないがなんだろうか。


「なんて?」

「なんでもないっす!」


 キレ気味に突き放されてしまった。


「はいはい、後で埋め合わせしとくから」

「…何っすか?」


 不信と期待が入り混じった視線で見つめてくる。


「今週の土日、どっか行く?」

「やったぁ!どこ行きます?」


 見るからに顔が明るくなった。

 機嫌が直ったようでよかった。


「ショッピングでもいくか?」

「良いっすね!行きましょ行きましょ!」

「…」

 

 ふと茜の方を見てみると、輪に入れないからかどこか寂しそうにしていた。


「…一緒に来ます?」

「…えっと……」


 顔色を伺っているのか、言い出しにくそうにしている。


「良いっすね!

 賑やかで楽しそうっす!」

「…良いん、です…か?」 


 茜が不安げな顔で楓を見つめている。


「茜ちゃんがいた方が絶対楽しいっすよ!」

「…で、でも、お二人の間に割り込む…のは……」


 まぁ、気を遣われたと思っても無理はない。


「…茜さん、大丈夫です。

 元々こういう奴なんで」

「…そ、そうなん…ですね」


 若干驚いた様子で楓をみている。


「じゃ、今週の日曜で決まりで!」

「はいよ」


 そんなこんなで雑談を続けていると、プール前に着いた。


「そういえばプール掃除なんすよね?着替えた方が良いっすか?

 あたし水着も体操着も持ってきてないっすけど…」

「…わ、私はどっちも、あり…ます」

「まあ掃除と言ってもそんなに濡れるわけじゃないんで、制服でも平気だとは思いますよ。

 ブラシで壁面擦ったりするだけですし」

「なら大丈夫そうっすね!

 さっさと終わらせるっすよ!」


 そんなこんなで、プール掃除が始まった。

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