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第2話

―仙城高校 校舎外―


 私立仙城高等学校。

 国内でも随一の偏差値を誇る高校であり、東京都世田谷区に校舎を構えている。

 立地と偏差値もあってか富裕層に人気な学校であり、一般家庭の生徒よりも富裕層出身の生徒が非常多く在学している。

 だが、俺は別に富裕層の産まれではない。

 一般家庭だ。


 そんな、普通なら陰キャなんて相手にもされないであろう学校で、俺達は注目されている。

 正確には俺ではなく茜がだが。


「ねぇ、あの子すっごい美人じゃない?」

「見たことない顔だけど誰なんだろ?」

「あれだけ美人でかつスタイル完璧って…もはや嫉妬すらしないわ…」


 周囲からヒソヒソと声が聞こえてくる。

 茜の方を見てみると、割と慣れたことなのか平然としている様に見える。

 

「かなり注目されてますけど…大丈夫です?」

「…恥ずかしい、です。

 けど、慣れてはいる…ので」

「やっぱり美人だと色々大変なんですねぇ…」

「…っ///」


 茜が顔を少し赤くして俯く。

 なにかあっただろうか?


 そんな風に話していると、校舎に差し掛かった。



―仙城高校 校舎内―


「…私、こっちなので、それじゃあまた…後で」

「わかりました。また後で」


 茜が小さく手を振って来たので振り返す。


「成り行きで助けただけだが…なんかとんでもない子と繋がりができたな…」


 そんなことをボヤいていると、後ろから背中を叩かれた。


「よぉ!」

「なんだ、昇かよ…」


 こいつは俺の数少ない友人の斎藤昇(さいとうのぼる)だ。


「愛しの桜庭先輩を差し置いて浮気とは…罪な奴め」

「だからそういう関係じゃないって……ただの部活の先輩だよ」

「毎日一緒に登校してんのに言い逃れできるとでも〜?」


 指先でゲシゲシと突いてくる。

 軽くいなして話を続ける。


「んで、誰?あの美少女。めっちゃスタイルいいじゃん。

 俺、あんな巨乳美人見たことねぇよ」

「下品なこと言うなバカ!

 ……登校中にナンパされてた所を助けたんだよ」

「完っ全にラノベのそれじゃねぇか。

 お前が美人にモテてなんで俺には縁すらねぇんだ……」

「いや別にモテてはないが…」

「いーや、モテてるね!」

「でも同学年の一軍女子からは見向きもされないぞ?」

「そういえばそうだったな、ハハハ」

「いやそこは否定しろよ。事実だけど」


 そんな事を話していると教室に差し掛かった。

 教室の扉を開ける。



―仙城高校 教室―


「?」


 なにか違和感がある。

 なにか、異常な物を見るような、はたまた奇異の目でみるような…。

 あと、ヒソヒソと話し声も聞こえてくる。


「ねぇ、あいつが宗助殴ったって本当?」

「やばい奴じゃん、関わらないでおこ…」

「まぁ、よく知らない奴だし一応避けておくか…」


 あぁ、そういうことか。

中俣宗助(なかまたそうすけ)、この学園の理事長の息子…要は今朝のナンパ野郎だ。

 あいつは問題児ではあるが、クラスの一軍だ。

 それ故(ゆえ)繋がりも多い。

 どうせあいつが変な噂でも流したんだろう。

 


「な、なぁお前、面倒な奴に目をつけられてるぞ」


 クラスを見渡してみる。

 すると、様々な視線に混じって負の感情を帯びた視線が一つ。

 ――中俣宗助がこちらを鋭く睨んできている。

 

「まぁ、対して関わりもないんだから変わらないでしょ」

「だといいけどな…」

 

 逆らっても良いことはない。

 黙っとこ…


 新学期早々の異様な空気感の中、席に座ってボーッとしていると、教師が足早に入ってきた。


「注目ー!」


 担任は教室に入って早々、なにか重大な話があるような雰囲気を出してきた。


「今日からこのクラスに転校生が来る。わかってると思うが、皆仲良くするように」


「「はーい」」


 気の抜けた返事が飛ぶ。


「入ってきていいぞー」


 スライド式のドアを開け、転校生が入室する。

 その瞬間目に入るのは、灰色の髪に碧眼。

 間違いない。茜だ。


 こりゃ、普通の高校生活は厳しそうだなぁ…


「すっごい綺麗…」

「モデルとかやってるのかな…」


 教室がザワつく。


「はいはい、静かにしろー」


 担任がザワつきを落ち着かせた後、彼女は自己紹介を始めた。


「冴咲茜…です。…よろしくお願いします」


 これだけの人の前となると、やはり喋るのは恥ずかしいらしく、それだけ言ってその後に言葉は続かなかった。


「…ねぇ、冴咲って言ってなかった?」

「冴咲ってたしか石井銀行の会長の…?!」


 再びヒソヒソと話し声が広がる。


 石井銀行。

 日本三大メガバンクの一つに数えられるほどの巨大金融組織だ。

 そこの会長の娘であるということは、この学校の中でもトップクラスの富裕層であるという事を意味する。


 そんなとんでもない出身だったとは…


「じゃあ席は……中川の隣でいいか。

 中川、色々手伝ってやれ」


 そう言い残して担任は足早に去っていった。

 呆気に取られていると、茜が話しかけてきた。


「…お、同じクラス…です、ね」

「まさか転校生だったとは……改めて、これからよろしくお願いします」

「…よろしくお願い、します」


 気まずい沈黙が流れる。

 何を話せば良いだろうか。

 そんな事を考えていると、茜の方から沈黙を破ってきた。


「…えと……その、びっくり…しました?」

「えっと…?」


 意図が汲み取れずに困惑する。


「……わ、私の生まれの事…です」

「あぁ…」


 若干暗い顔になりながら言い出してくる。

 まぁ、国内でもトップクラスの富裕層なことに加え、非常に高い社会的地位もある。

 今までの他人から距離を取られてきた経験が多いのだろう。


「びっくりはしましたが…変わらずお友達であることに変わりないですよ」

「…良かったです。……ありがとう、ございます」


 そんな風に談笑していると、後ろから昇に声をかけられた。


「おい、次の授業遅れるぞ!」

「先行っといて!」

「わかった!」


 そう言って昇は走り出した。


「その…」

「?」

「…良かったんですか?

 お友達と、行かなくて…」

「まぁ、転校初日のサポートのためってのもありますけど…」


 茜が若干暗い顔になる。


「茜さんもお友達ですしね」

「…っ///」


 茜が顔を少し赤くして俯く。

 俺たちは教室へと向かった。

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