第1話
俺は中川浩一、仙城高校に通う高校2年生だ。
高校生活というと、友達と遅くまで遊びに行ったり、本気で部活に打ち込んだりする…いわば青春を思い浮かべがちだ。
だが、殘念なことに俺にそういう縁はなかった。
部活に仲の良い女先輩がいるが、そういう関係ではないしな。
まぁ、陰キャにまともな青春が送れるはずもない。
今更だ。
それはそうと、今は進級して初の登校日で、部活の先輩と待ち合わせをしているのだが…
「遅いな……もう集合時間は過ぎてるが…」
いつまで経っても来ない。
不審に思い、スマホでChatアプリを開く。
―Chat―
浩一:『桜庭先輩?今どこです?』
桜庭灯:『連絡が遅れてすみません。所用により遅れます。お先に行っていてください』
浩一:『了解でーす』
Chatアプリを閉じ、学校へ向かう。
歩いてから少し経った頃、路地裏から悲鳴のような声が聞こえてきた。
「や、やめてください…!」
「いいじゃんか別に、減るもんでもないし」
そこには、短髪に切り揃えた長身の男に絡まれている美少女の姿があった。
灰色の髪のロングヘアーに凛とした印象を受ける碧眼。
スラッとしているが、出るところはしっかりと出ているまるでモデルの様な体型。
顔も皆の注目を受けるであろう程に整っており、まさに絶世の美少女という印象だ。
制服を見るに同じ高校っぽいし、助けるべきだろうか。
「……おい、やめないか」
声をかけてみても男は反応する様子はない。
多分無視されてるな。
少女の方に目をやると、必死に手を振りほどこうとしている。
ここで見捨てると後味が悪い。助けよう。
「嫌がってるじゃないか、やめろよ」
少女に触れている手を掴んで制止する。
「なんだよ気持ち悪い!部外者は黙ってろ」
どうやら癪に触ったようで、怒って強く手を振り払われてしまった。
「見るからに嫌がっているじゃないか。止めるのは当然だと思うが」
「禄に事情も知らないくせに無駄な正義感やめろよ。こっちが迷惑なんだよ」
少女の方を見ると涙目でこちらを見つめてきている。
これはもう無理矢理引き剝がすしかない。
そう思い俺は男の肩を掴み、強引に少女から引き剝がした。
「いい加減にしろよお前。限度ってもんがあるだろ」
「痛っ...!貴様…!」
どうやら引き剝がした時に勢い余って体を壁にぶつけたようだ。
なんか睨んできてるが、まあ自業自得だろ。
「父さんに言いつけてやるからな!覚えてろよ!」
「父さん…?」
どこかで見たことあるような顔だなと思っていたら、どうやら同じ高校の理事長の息子だったようだ。
理事長が息子を溺愛しているのをいい事に好き勝手やってると聞いてはいたが……まさかここまでとは。
面倒な事になりそうだ。
「あのー…大丈夫です?」
隅で縮こまっていた少女に声をかける。
少女は声に反応してこちらに駆け寄ってきた。
「あの……」
「はい」
なにかを言おうとしているが、ためらっているのか、はたまた勇気が出ないのか中々言葉が出てこない様子だ。
「あ、あなたが助けてくれたんですよね?」
「まあそうですが…」
「その……ありがとうございます」
「どういたしまして」
どうにも会話が続かない。
大分シャイな子のようだ。
「とりあえず、一緒に学校行きましょうか」
「は、はい。わかりました」
しばらく一緒に歩くものの、特に会話が続くことはない。
こちらから話しかけても、簡単な受け答えをするだけで終わってしまう。
「…あ、えっと……」
「はい」
「……や、やっぱりなんでもないです」
「そうですか...」
こんな感じでたまに話しかけようとはしてくれるのだが、勇気が出ないのか途中で諦めてしまうようだ。
「その………私、人と話すのが苦手で…」
「はい」
「なので、その…気を悪くさせてしまったら、ごめんなさい」
軽く謝ってくる。
どうやら自分でも気にしているようだ。
「全然平気なんで、大丈夫ですよ」
「…ありがとうございます」
「そういえば、さっきの大丈夫でした?」
「こ、怖かった…です」
この美貌だ。
こういう事は珍しくはないだろう。
だが、放っておいていいわけではない。
なにか自分にできることは……
「もし良ければなんですが…これから一緒に登校しません?
ナンパ避けも兼ねてって事で」
「…良いんです、か?」
「もちろんです」
「なら………お、お友達になってくれませんか?」
大分勇気を絞り出したのか、若干顔が赤くなっている。
「いいですよ。
これからよろしくお願いします」
「よ、よろしくお願いします」
「そういえば名前ってなんです?」
「冴咲茜…です」
「僕は中川浩一です。
浩一って呼んでください」
「…な、なら私のことも茜…でお願いします」
「わかりました。茜さん」
そんなこんなで俺達は高校へと着いた。




