101・賢いたぬきち
ひどく疲れてしまったわ。今日も癒しが必要ね。
私はキムラサンハウスにやってきた。
「キムラサン~、癒し、癒しはどこ?」
「我は癒しという名前ではないぞ」
たぬきちの訴えごと可愛すぎる。
「たぬきちコンプリート」
「意味がわからぬ」
たぬきちを抱っこして、ほおずりしまくった。嫌そうな空気は、この際無視させてもらおう。
「いつもすまないねえ」
「それは言わない約束よ、おとっつあん……だったか?」
「ナイスよ、たぬきち」
たぬきち最高すぎ。
「それそろタオル投げようか?」
「わかった、やめるって」
レフリー・キムラサンからストップが入ったから、私はたぬきちを床に戻した。
私はキムラサンハウスの床に座りこんでいた。キムラサンの努力のおかげで、壁しかなかった家は立派な家になった。変な日本語だけど、事実だし。
「屋根と床が増えただけでもすごいのに、家具まであるなんて。すごいわ、キムラサン」
褒めたらキムラサンが踊り出した。これもお約束というやつね。
「んでも、今日はなんだか、そういう気分じゃないわね」
「どうした?いつもは一緒に踊るのに」
「うん、たぬきち。聞いてくれる?」
「どうした?オイラも聞くぜい」
踊りをすちゃっとやめて、キムラサンが私の横に滑り込んできた。それを無視して、たぬきちの手を軽く持ち上げる。
「魔王のことが終わったら、妹が帰ってしまうの。それが悲しくてね」
「エミは、魔王にどうしてほしいのだ?」
「うーん、そもそも魔王って何しに出てくるのか、知らないのよね」
なぜか、たぬきちがずっこけた。
「どうしたの?」
「知らんのかい」
「おお、たぬきちがつっこんだ」
たぬきのツッコミ。何それ可愛すぎ。
「私と言うより、そもそも誰も知らないのよね。どうして魔王が出現するのか」
「そうなのか?」
以前ルカスに聞いたことがある。
『魔王って何しに来るの?』
『それが、誰も知らないんだ』
『何年かに一度やってくるんでしょ?その時の記録があるんじゃないの?』
『なぜか書き記すことが出来ないんだよ』
『何それ?』
『だから、すべて口伝えとなるんだ』
なんだか気が遠くなりそうな方法でしか、魔王のことは記録できないのだと言われた。
「何かの呪いなのかしらね。前回の魔王の話とかの、記録がないんだって。親が子に物語のように話して聞かせる方法でしか、残っていないらしいの」
「ふむ。それは面倒だな」
たぬきちがふんふん頷いている。この賢いタヌキは、何か知っているのだろうか。
「もしかして、たぬきちは何か知ってるの?」
「知っているとも」
「そうなの?さすがたぬきちね、賢いわ~」
たぬきちの頭をなでた。
「あたりまえぞ。我、魔王ぞ」




