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第5話 「なんで君がいるの!」

「うわ~ん!ナイ~ン!」

「おかえり光太君!そんなに悔しそうにして、一体どうしたんだい?」

「クラスの陽キャ達がね、デカイ声で彼女の話しててムカつくんだよ~!」

「それは君に問題があるんだよ。人を嫉妬する君がいけないんだ。大体、そんな歪んだ性格してるから君に彼女が出来ないんだよ」

「…そっかー」


 あいつらに嫌な思いさせてやれる杖を紹介してもらえると思って泣きついたのに、マジの正論で殴られんだけど。


「あのバカップルYouTuber解散してやんの!ははは!」


 歪んだ性格してるって言ったけど、人のこと言えないだろ。

 まあいいや。今日の課題、来週提出なのにかなりの量だし早速片付けていかないとな…


 そうして部屋に入ろうとした時、ピンポーンという音が鳴った。


「客だ。ナイン、暇なんだし追い払っといて」

「あいー」


 セールスか何かだろう。しつこかったら俺が出て相手してやる。




「えっ!ちょっと君困るよ!」


 ドンドンと足音が近付いて来る。かなり態度の悪いセールスマンみたいだな。


「ちょっと何なんですかって…えぇ!?なんで君がいるの!」

「ねえ!聞きたいことがあるんだけど!」


 家に入って来たのはセールスマンじゃなかった。俺がかつて魔法の杖を学校に持って来てしまったあの日、杖の力でプリンを出したあの女子生徒だ。


「ちょっとタンマ!」

「タンマなし!ねえ!私以外誰もあの日の事を覚えてないんだけど!それにこの女の子、あの日学校で爆弾を出した子だよね?」


 リセットアンドネクスト・ワンドで次の日に飛んだ後、俺とナイン以外は都合のいい記憶に書き換えられ、騒動の事を忘れたと認識していた。

 それなのにこの女子生徒は覚えている。魔法の杖とナインのことを!


「君は一体…」

灯沢(ともざわ)優希(ゆうき)。まだ名前覚えてくれてなかったの?」

「そうじゃなくて…どうしてあの日の事を覚えてるんだ?」

「やっぱり…君は覚えてるんだね」


 事情を話すまで帰るつもりはないらしい。灯沢には安いお茶とお菓子で少し待ってもらって、その間に俺とナインはどう話すか作戦を練った。


「俺としては魔法を知る人間はいて欲しくない。記憶を消せる杖とかないのか?」

「あるけど使いたくない。倫理的にNG」

「なんで持ってんだよ…やっぱり全部話すべきか?皆には内緒って頼んで」

「駄目だよ学生同士の秘密なんて次の日には学校中に広まってるよ」


「みんな忘れてるし、話しても信じてもらえなかったよ。だから教えて。魔法ってなに?」


 ナインにこの場は任せろと言わんばかりの連続ウインクをぶつけられた。


 テーブルで灯沢と向かい合うと、ナインは魔法の杖のみならず、自分が異世界から来た存在だということも話したのだった。


「異世界アノレカディアから来た君はサキュバスで、今は黒金君と同居中…なんだね」

「あの日の出来事を覚えてるのはきっと、君の魔法センスが高かったからだと思う」 


 そう言えばチャラ男は魔法を使って気を失ってたけど、彼女はプリンを平気で食べてたな。


「ありがとう、疑問が晴れてスッキリしたよ。大丈夫、このことは誰にも話さないでおくから。ねえ、魔法って他に何があるの?」

「え?もしかして気になる?教えてあげても良いけど受講料は高いよ!」

「やめとけナイン。トラブルの元になるだけだ。灯沢も用が済んだなら帰れ」

「こら光太!帰れとはなんだ!友達のいない君の家にせっかく来てくれたんだぞ!」

「家主は俺だ!客をどうするかは俺が決める!」

「何が家主だよオラ?学校行ってるだけのお前より、家事全般やってる僕が家主に決まってんだろ!」

「何を言おうが家主はオ!レ!文句があるならこのバッグをー!…あれ?」


 あれ、ナインのバッグどこやったっけ?


「へ~凄いね。中に色んな杖が入ってる」

「僕自身魔法は得意じゃないから、予めやれる事が決まった杖を沢山用意して、やりたいことをやれるようにしてるんだ」

「ちょっとぉ!どうしてナインがバッグを持ってるの!」

「捕まえろ!カーテン!」


 ナインが杖を振った。バッグを取り戻そうとした俺だったが、突如動き出したカーテンが両手首に巻き付いて動けなくなった。


「うわ~すごーい」


「おい灯沢!そいつから杖取り上げろ!」


「これは棚に出し入れする杖。こっちは光線を当てた物体をお菓子に変える杖だよ」


 俺は家具になった気分だった。2人は俺のことを気にする素振りも見せず、ナインは杖の説明をしては灯沢が興味深そうに頷いていた。


「へえ~……ってもうこんな時間!そろそろ帰らないと怒られちゃう!」


 門限が近いのか、灯沢は慌てて帰り支度をした。ところで俺はいつになったら解放してもらえるんだろう。


「ナインちゃん、また明日遊びに来てもいいかな?」

「いいとも!魔法でも光太の弱点でもなんでも教えてあげるよ!ただし、受講料には──」

「お菓子だよね!自信あるから、期待しててよ」

「おい俺の弱点ってなんだよ」

「黒金君も!急に押しかけちゃってごめんね。次行く時は事前にナインちゃんに連絡するから」

「いや家主俺なんだけど!?」


 こうして急にやって来た客は騒がしく帰っていた。


「…さて光太、魔法の杖が僕の元に帰って来たわけだけど…どうしようか」

「俺を解放しろ!今ならまだ許してやる!」

「僕には友達を殴るなんて残酷なこと出来ないよ…てなわけで!鋼鉄処女(こうてつしょじょ)魔法の杖!アイアンメイデン・ワンド!」


 そして現れたのは、どう見てもあの拷問器具、鉄の処女にしか見えない魔法の杖だった。中に入ったら全身を棘で刺される。どれほどの痛みなのか想像も付かない。


 あれ…棘が赤い!使った形跡があるぞコレ!?


「これは使用者の精神力を鍛える修行道具だよ!てなわけでオープン!」


 処女は身体の前面を観音開き。棘だらけのワンルームを紹介してくれた。


「す!吸い込まれる!」

「ハハハハハハ!女の子を殴ったから相応の罰だよねえ!安心しなよ。この子は優しいから死なない程度に棘を調整してくれるんだ!」

「俺は悪くない!俺は悪くないんだあああ!」


 俺は必死に手を伸ばした。そして掴んだ。勝利を確信して高笑いを上げていたナインの長い髪を。


「おおおおおお!?髪は女の子の命なんだぞおおおおお!?」


 俺はナインを道連れに鋼鉄の処女の中へ。来客を招き入れると、扉は勢いよく閉じ…


「「うぎゃああああああああああああああああああ!」」

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