第84戒 今の自分がやるべき事
ルーンファールは陽炎の言った言葉に驚いた。
「どういう・・・こと・・・?」
「お前、親が人間なんだろ。だから、お前自身も人間だ」
その言葉に更に驚く。そして、言葉を失う。陽炎はその様子を見て、更に話を続ける。
「お前の親はルウェルだったんだろ。で、ルウェルには特殊な魔法があった。どんな魔法かは知らんが、恐らく魂を増やしたり移動させたりする魔法だ。そして、その魔法でお前は人間の自分を隠しエルフとなった」
陽炎はまるで見てきたかのようにスラスラと説明する。そして、それを聞いてルーンファールは声を出すことすら出来なくなる。
「ルウェルは父親なんだろ。母親は・・・恐らく捕まったか何かで今も城に奴隷として、幽閉されている」
「っ!?なんでそんなことまで分かるの!?」
「俺を誰だと思ってる?」
そう言うと、納得したように頷いた。そして、陽炎は近づいて更に話を続ける。
「フッ、テムもお前と同じで人間の子供だった。だが、テムはお前とは違いバレてしまった。おそらくその事でお前の母親もバレたのだろう」
そう言われて納得した。確かに、あのまま何もしなければバレなかったのに、テムが生まれたことでバレたのだとすると辻褄が合う。しかし、それと戦争が起こることとは何も関係がないはず。なぜ自分を選んだのかは分かったが、そこだけが不思議でならない。
「なんでそれで戦争になるの?」
「普通に考えろ。エルフの国は、テムは私の国のものです。あなたの国が勝手に拉致したので攻撃します。という理由が出来るだろ。テム自身もそれが分かっていたんだよ」
「なるほど・・・確かにそうなるわね」
「そう。だから、それを止めるために俺との関係を絶った。だが、そう甘くもないみたいでな、どうやらこの国はどうしても俺の国を潰したいらしい」
その言葉を聞いてまたまた不思議に思う。テムが手に入ったなら陽炎の国を潰す必要は無い。それは誰でもわかる事だ。
「なんでそう思うの?」
「俺の国がどうでもいいならこんなに結界は張らなくていいだろ。これじゃあまるで、あなたがこの国から出られない隙にあなたの国を攻め落とします。と、言っているみたいなものだ」
そう言われて確かに!と、納得した。
「ま、その前にテム達を助け出さなければならない。そのためにはまず城に潜入して、この結界を壊す必要がある訳だ」
そう言って城に向かって足を進め始めた。
「でも、今のあなたじゃ直ぐにバレちゃうわよ」
「確かにな。それに、今戦っても勝てない。だが、アロンダイトとヴェルトラウムもあの城の中にあるんだ。それも、取り返さないといけない」
「あなたの武器のこと?そうね、確かにあの城の中にあるわ」
「フッ、まぁとりあえず今日中には潜入しようかな」
そう言って走り出した。そのスピードはとてつもなく速かった。ルーンファールは置いていかれないように、全力で走る。2人は森の中を猛スピードで駆け抜けた。
━━しばらくすると城が見えてきた。その城にはとてつもなく強固な結界や反魔法がかけられている。
「この結界・・・壊すのに何時間かかるのかしら」
「5秒だ」
ルーンファールの呟きにそう答える。冗談かと思ったが、マジでやる気なので嘘ではないと確信した。
「5秒って、魔法も使えないのにどうするのよ!?」
「どうするも何も、破壊するだけだ!”土流・塵波動・拳”」
陽炎は思いっきり壁を殴った。前みたいに轟音がなると思って焦ったが音はしない。それどころか何も起こらない。
「・・・失敗したの?」
「いや、大成功だ」
そう言って壁に触れると壁が一瞬で塵になった。
「さ、入るぞ」
ルーンファールは驚きのあまり声も出せなくなった。陽炎はそんな様子のルーンファールを見て微笑みかけると足を進めた。
「まず武器を探す。その後結界を壊す。これが流れだ。だが、その前に1つ約束してもらう」
「何?まだ信用してないの?」
ルーンファールは皮肉そうに言った。それを聞いて陽炎は笑う。
「何がおかしいのよ!」
「フッ、まずは俺を信じろよ。俺が言いたいのはもっと別のことだ」
陽炎は突然真顔になって近寄ってくる。そして、顎に手を当ててきた。
もしやこれは、告白なのでは!?
頭の中がそういった考えでいっぱいになる。どう言った告白なのか、やっぱり力でねじ伏せる的な何かなのか・・・。ルーンファールは目を閉じた。そして、いつでも来ていいように構える。
「なにしてんの?キスとかしねぇよ。お前の顔に虫がいたんだよ。てか、俺の話を聞け。お前に約束してもらう。俺が逃げろと言ったら絶対に逃げろ。良いな?」
「え?う、うん・・・わかったよ・・・」
少し疑問に思いながら返事をする。すると、陽炎は優しく微笑み振り返って前に進み始めた。ルーンファールも遅れまいと急いで追いかける。
━━しばらく進み続けて30分が経った。時間的に今はもう9時半を超えているだろう。中の兵士達はほとんどだらけている。
「ねぇ!どこに行ってるの!?場所はわかってるの!?」
「感じる。アロンダイトとヴェルトラウムの気を・・・」
ルーンファールは頻繁に聞くが、陽炎はそう言ってずっと下へおり続けていく。そして、最下層まで来た。
「無いじゃない!どこにあるのよ!?」
「ここだ」
頭がおかしくなったのかと思った。もしくは目が見えなくなったのかとも思った。ここには何も無いし、隠すような場所もない。
「何してるの?」
陽炎は地面を調べ始めた。そしてニヤける。
「ここにある・・・」
そう言って地面に手をついて魔法を唱える。すると、突然剣が現れた。
「っ!?何で!?」
「どうやら、俺のよく知っている人の魔法らしい。操られているのか、そういう作戦か・・・もしくは本当に敵になったか・・・どっちなんだ?フェルル、ファルル」
そう言うと、どこから来たのか分からないが女の子2人が出てきた。2人は双子のようだ。同じ顔、同じ身長だ。
「フフ、私達に殺されるなんて光栄じゃない?」
「フフ、私達に殺されるなんて本望じゃない?」
2人はそう言って笑う。
「ま、どっちでもいいけど、剣を手にした俺がどれだけ強いか忘れたのか?」
「忘れちゃったわ」
「だって弱かったんだもん」
「・・・まぁ、確かに抜いたことなかったな。あんまり・・・」
『どっちだって良いわ。死んで』
その宣言と共に数多の武器が飛んできた。陽炎はそれを全て避ける。
「おい、俺が分からないのか?いや、わかっててやってるな。目ェ覚ませ!”陰流弐式・黒い斬撃”」
ゴンッ!
鈍い音が響いた。フェルルの頭にヴェルトラウムの腹の部分が吸い込まれるように当たった。
「きゃうんっ!」
フェルルの可愛い声が響く。
「安心しろ。峰打ちだ」
「ちょっ、お姉ちゃん!よくもお姉ちゃんを・・・っ!?」
「”陽流七式・日の神の煌”」
陽炎は再び剣の腹でファルルの頭を殴る。
「きゃうんっ!」
2人は揃ってその場に倒れ込んだ。どうやら気絶しているらしい。目をクルクルと回している。
「なんでお前も目を丸めてんだよ」
「だって・・・自分の奥さんを平気で・・・」
「この剣には悪い効果を消す能力がある。催眠は解けたはずだぜ」
陽炎は誇らしくそう言う。
後でどうなっても知らないよ!
と、思ったが心の中に留めておいた。
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