第75戒 バカンス2日目
「それで、なんで俺の事を攻撃するの?」
陽炎は率直に聞いた。それに対して、エルフの女の子は何も反応を示さない。
「そもそもお前の名前はなんだ?言え」
しかし、何も言わない。すると、横からテムが言ってきた。
「私が説明するわ。この子の名前はメル・リーファン。私のに直属の護衛よ」
「護衛?なんでテムに護衛がいるんだ?」
「それはね・・・」
「テム様!このような悪に言うことは無いです!」
突然メルが横から遮ってきた。音声で叫んで話が聞こえないようにする。しかし、そんなことで邪魔になることもない。陽炎達は無視して続けた。
「言っていいよ」
「・・・うん。あのね・・・さっきも言ったけど、私はエルフの国出身なの。それで、私はそこの次期国王なの」
「何!?次期国王だと・・・」
陽炎はだいたい理解した。どうやら次期国王の護衛が来てしまったらしい。その護衛であるメルは何としてもテムを連れて帰りたいようだ。
「ならなんでこの国にいる?それに、お前がエルフの国出身ならお前はエルフなのか?」
そう聞くがテムは話してくれ無さそうだ。陽炎はそんなテムを見つめる。そして、振り返ると陽炎は言った。
「ま、言いたくなったらで良いよ。話したくないことは無理して話さなくていいからさ」
そう言ってメルを担ぎ家へと戻ろうとする。
「ちょっと待って、本当に良いの?」
テムは焦りながら聞いてきた。それに対して陽炎は、
「良いよ。妻のわがままを聞くのも夫の仕事だろ」
と、笑いながら言った。テムはその言葉で嬉しくなったのか笑顔になって陽炎に飛びついてきた。
「帰ろうぜ。明日は海で遊ぼうな」
『んっ!』
━━次の日・・・
陽炎は砂浜の上に座っている。強い日差しが陽炎を焼く。ビーチパラソルを立ててみたが影の位置がズレていて日差しが当たる。
「ふわぁ・・・なんか日差しを浴びると眠くなるなぁ」
「かーくん!こっちだよ!」
テムが呼んでいる。しかし、陽炎は行かない。ずっと座って微笑んでいる。まるで保護者のようだ。
「む〜!えい!」
テムは陽炎に向かって水を飛ばした。それは一直線にぼーっとしている陽炎の顔に飛んで行った。
バシャッ!
陽炎の顔に水が直撃した。陽炎がびしょ濡れになる。幸い水着だったので濡れても良かったのだが、突然のことすぎて頭が追いつかない。
「あはははは!陽炎くん面白〜い!」
「あはははは!かげくんぼーっとしすぎよ!」
『油断大敵だよ』
全員口々に言ってくる。陽炎は静かに立ち上がると海に入ってきた。そして、素敵な笑みを浮かべると水をすくった。
「フッ、やってくれたな。お返しだ!」
バシャッ!
テムの顔に水が直撃した。テムが驚いて後ろに倒れる。その様子を見てその場の全員が笑ってしまった。
「ふっ・・・ふふふ・・・」
「あ!笑ったでしょ!なんで笑うのよ!」
「いや、なんか急に面白くなって・・・ふふふっ」
「む〜!」
テムは頬を膨らませ怒る素振りを見せる。それを見て更に笑う。遂にはテムが腹の辺りをポカポカ殴ってきた。
「あはは、全然痛く・・・うわぁっ!」
突如横から水をかけられた。横を見るとディリー達がこっちに向かって水をかけてきている。
「熱々すぎなのよ。ちょっと冷ましてあげる」
そう言って一世放射で陽炎を襲う。陽炎はそれを見て不敵な笑みを浮かべた。
「やったな。見せてやるよ、俺の中に眠る王の力を・・・」
そう言うととてつもなく大きな波が迫ってきた。
「え!?ちょっとかーくん!やりすぎだよ!」
「・・・悪ぃ・・・」
『うわぁぁぁ!』
6人は陽炎の作りだした大波に飲まれて浜まで流されてしまった。
「フゥ、危なかったな」
『危なかったな、じゃないよ!』
5人に一斉に叱られた。陽炎はまぁまぁ、と宥めるが怒りは収まらない。と、言うよりただ八つ当たりしてる感じにしか見えなかった。なぜなら、5人は笑っているからだ。笑いながらポカポカと殴ってくる。それが楽しくなって陽炎も笑う。
「あはははは・・・フゥ・・・そろそろ帰ろうぜ。日が暮れてきてるしな」
『んっ!』
━━そして、その夜・・・
「悪いな、バーベキューセットがなかったから出来ないや。明日作ってやるから今度やろうな」
「ありがとう。でも、そんな気を負わなくても良いよ。私達はかーくんのご飯が食べられればそれだけで幸せだから」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
そう言って陽炎は微笑む。家にはバーベキューセットが着いてなかったため、陽炎がキッチンを使って作った料理で夕飯を迎えた。
「わっ!これ美味しい!どんな料理なの?」
「カレーだ。食材は持ってきたから作ってみたんだ」
『凄い・・・!』
陽炎は皆に微笑む。5人はそれを見て幸せそうな顔をする。
「可愛いな・・・」
うっかりそんな言葉が漏れてしまった。その時に思った自分の素直な気持ちだったが流石に面と向かって言うのは恥ずかしい。
「あ、わる・・・」
『ありがとう!』
突然皆が抱きついてきた。突然の事で頭が混乱し、陽炎は何が何だか分からなくなってしまった。しかし、1つだけ確かなことがある。それは・・・
「お前らがいてくれるだけで毎日が楽しいよ♪」
陽炎がそう言うと、テム達は泣き出してしまった。
「え!?ごめん!なんか悪いこと・・・」
「やってなんかないよ。嬉し泣きだよ陽炎さん」
「やってなんかないよ。幸せだから涙が出るんだよ陽炎さん」
フェルルとファルルは幸せそうな顔でそう言う。それを見て陽炎も幸せそうな顔をする。
「じゃあ、今日の最後に1つお前達にプレゼントをやるよ」
そう言って取り出したのはロケットペンダントだった。
「これは?」
「俺達の思い出の写真を入れてある」
「写真とか撮ったっけ?」
「フフ、こっそりな。動画みたいになってるから、見たい時はいつでも見ていいよ」
そう言うとたま、5人は幸せそうな顔をする。なぜ突然陽炎がこんなことをしたのかは分からないが、それでも嬉しい。テム達は満面の笑みを浮かべると、
「ありがとう!」
とだけ言った。
━━そして、その日の夜・・・
「かーくん・・・」
テムは1人陽炎の部屋で立っていた。目の前には熟睡する陽炎達がいる。
「う〜ん、むにゃむにゃ・・・かげくんがアイスに・・・むにゃむにゃ・・・」
ルーシャは寝ぼけているようだ。陽炎をぺろぺろ舐めている。
ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ・・・
「むにゃむにゃ・・・陽炎くんキスしてぇ・・・」
ディリーはそんなことを言って陽炎とキスをする。
くちゅくちゅ♡くちゅくちゅ♡・・・
「陽炎さんは美味しいです・・・むにゃむにゃ」
フェルルはそんなことを言って陽炎を食べる。
パクパクパクパクパクパク・・・
「陽炎さんはえっちですぅ♡・・・」
そう言って自分からお尻や胸を触らせる。
ぷにぷにふにゃふにゃ・・・
「あはは・・・皆凄いね・・・」
テムはその様子を見つめて苦笑いをする。そして、自分の左手の薬指を見つめる。そこには陽炎に貰った結婚指輪が着いている。
「かーくん・・・」
再び名前を呼ぶ。しかし、陽炎には聞こえない。と、その時陽炎が話し出した。どうやら寝言のようだ。テムは近づいて聞いてみる。
「・・・テム・・・どこにも・・・行かないでくれ・・・」
「っ!?」
テムは驚いた。陽炎の口からそんな言葉が出てくるとは思っていなかったから。そして、自分に言い聞かせるように呟く。
「あと1日だけ。あと1日だけでもかーくんと一緒にいたい・・・」
そう呟いて、もう一度陽炎に視線を落とす。そして、陽炎のいるベットの中に入って行った。
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