第71戒 もう1人の勇者
絶体絶命としか言えなかった。無限に跳ね返り続ける光の刃。リヒトはさらに2つそれを増やした。
「ハーハッハッ!早く降参しろ!そしたら楽に殺してやる!」
リヒトはそう言って笑う。陽炎なそんなリヒトを横目に光の刃を避け続ける。
「”ブリザード”」
すると、陽炎の周りが凍りつき始める。しかし、光の刃は凍りつかない。
「”影霧翔”」
しかし、影の刃は光には勝てない。そして、光の刃は3つ同時に陽炎へと攻撃を仕掛けてきた。
「”はぁ・・・もうめんどくさい。”封印術式立方体”」
陽炎が手を光の刃に向かって突き出した。すると、光の刃はキューブに閉じ込められ出てこなくなった。つまり封印されたのだ。
「何!?どういうことだ!?貴様、何をした!」
「さあね。教えてやんな〜・・・」
「黙れ!」
リヒトは陽炎の話を聞かずに攻撃してくる。
「”封印術式立方体”」
陽炎は飛んできた光の刃を全て封印する。リヒトはそれを見てさらに飛ばしてくる。飛んできては封印し、また飛んできては封印するのを繰り返す。
カランカランカランカラン・・・
封印する度にキューブが地面に落ちる。
「ハーハッハッ!その技もいずれ限界が来るのだろう!」
「そう言うお前もな」
2人の戦いは激化していく。この戦いは持久戦に持ち込まれた。
「そろそろ終わりが来たんじゃないのか!”オーバーバーストスラーーーーッシュ!!!」
リヒトはそう叫ぶと剣が光り出す。その光は大きな刃となって襲いかかってくる。陽炎は何とか躱したが、周りの鏡に当たって跳ね返ってくる。
「チッ、挟まれちまったな」
陽炎は後ろと前を確認する。後ろからは巨大な光の刃、前からは無数の光の刃・・・
「フフフ・・・リヒト!返してやるよ。”封印術式立方体解放”」
そう言って陽炎は落ちているキューブを投げる。キューブはところどころある鏡の隙間に入ると、回転し開いた。すると中から光の刃が現れる。その光の刃はリヒトの放った光の刃とぶつかり爆発する。陽炎はその隙に後ろから来る巨大な光の刃を封印する。
「おいリヒト!これもお返しだ!」
そしてそのまま投げる。キューブはリヒトに近づくと開き、巨大な光の刃が現れた。
「何!?」
「お兄ちゃん!”ミ、ミラージュクリエイト”!」
リフレインがそう唱えると、鏡が現れる。それは、光の刃を再び陽炎の元へ跳ね返した。
「”ミラードーム”」
リフレインがそう唱えると、陽炎を囲っていた鏡は隙間をなくし完全に閉鎖された。光の刃は閉まる前に入り込み、中で無限に跳ね返り続ける。
「フッ・・・」
陽炎は不敵な笑みを浮かべると周りを見渡す。どうやら完全に外界とは隔離されたらしい。どこにも隙間は無いし、外からも見えなさそうだ。
「・・・はぁ、やっとだよ。あんまり転移魔法が使えることを知られたくないんだよな・・・」
陽炎は小さくそう呟いて、ため息をつく。そして、転移魔法を使おうと魔力を貯めるが、あることに気づく。
「そう言えばこれ、鏡だな・・・フフ、いいこと思いついたぜ・・・と、その前にこの刃をどうにかしないといけないな”雷流・五雷撃”」
陽炎は背中の剣を抜いた。剣から放たれた5つの雷は1つに集まり光の刃の一点に集中して当たった。光の刃は2つに別れると爆発をした。
「ちょうどいい♪”結界♪”・・・」
結界を張る。結界は爆発で起こる熱や風を全て遮っている。この様子だと耐えられそうだ。
「・・・フゥ〜・・・” 封印術式立方体解放””ビックバン”!」
ボカンッ!!!
とてつもない爆音と共に鏡が全て壊れそうなほどの爆風が陽炎を襲う。しかし、陽炎の結界も周りの鏡も壊れない。鏡のドームの中は地獄のような熱気で満たされていく。
「これくらいなら大丈夫だな」
陽炎はそう言うと、結界を解いた。
「”集束”」
熱気は1つに集められ、高熱の球体となった。これはあれだ。かなり頻繁に使うあの技だ。しかし、この技を使っても目の前にある鏡は壊せないだろう。陽炎は鏡に写った自分の姿を見つめると不敵な笑を浮かべた。
「フフフ、こんな模様だったのか。初めて見たよ」
そう言って右目を開く。その目には碧く煌めき、紋様が浮かんでいる。
「2回目だけど、この能力覚えてるやつ絶てぇいねぇだろ」
そう言って手を前に突き出す。そして、目を見開き心の中で呪文を唱える。
「”ディメンションルイン”」
すると、ちょうど高熱の球体と一直線上にある鏡が消えた。
『っ!?』
リヒトもリフレインも一体何が起こったのかと驚く。陽炎はその隙に球体と共に外へ出る。
「っ!?しまった!クソぉぉぉぉぉぉ!」
「遅いんだよ!”プラズマカノン”」
「あ、危ない!”リフレクトミラージュ”」
2人の前に鏡が出現する。陽炎の放ったプラズマカノンは鏡に跳ね返され陽炎へと迫る。これは避けられない。陽炎は再び右目を見開くと魔法を心の中で唱える。
「”乱反射”」
「嘘!?それは私の・・・!」
「まだまだ!”インフィニティリフレクト”」
「何それ!?」
リフレインは驚いて声も出ない。それもそのはず、陽炎の使った魔法はリフレインのものだ。それどころか、鏡を壊したのはギルシアの魔法だ。陽炎は人の魔法をコピーしてさらに、本人より強くして使ったのだ。陽炎が反射させたプラズマカノンは複数に別れリヒト達を襲う。
「卑怯だぞ!魔王!」
「うるせぇな。これは殺し合いだぞ、卑怯もクソもあるか」
「そんな・・・こんなの私のより強いじゃん・・・!」
勇者の2人はそれぞれの反応を見せる。方や魔王に向かって大声で怒りまくり、方や、死を覚悟して泣く。陽炎はそのまま一気に狙いをつけた。そして、魔法が全方位から迫る。
ボカンッ!ドドドドドドド!!!
陽炎の放った複数の魔法はリヒト達を貫くと、連続して落ちてきて、連鎖爆発を起こす。そして、とてつもない轟音を鳴らし超高熱の爆風を撒き散らす。
ドドドドドドドドド・・・・・・
爆発は止んだ。辺りに煙が漂う。
「・・・流石に死んだかな?」
「・・・うぅ・・・」
「っ!?まさか・・・」
「魔王ぉぉぉぉ・・・!よくも、僕の妹を・・・!」
「よくも、私のお兄ちゃんを・・・!」
煙の中から2人が姿を現す。すると、そこには驚きの光景があった。それは、なんと2人は生きていたのだ。体には3つほどしか穴が空いていない。よく見ると鏡の破片が落ちている。どうやらリフレインが防ごうとしていたらしい。しかし、あれだけの数だ。防ぎきれなかったみたいだった。
「まさか・・・まだ死なないとは・・・」
「魔王ぉぉぉぉ・・・!僕はまだ・・・」
しかし、かなり弱っている。リヒトの声はさっきより小さい。リフレインはそんなリヒトの様子を見て、逃げようと言い出した。
「・・・逃げようよ・・・もう・・・無理だよ・・・」
「クソぉぉ・・・!こんなところで・・・!」
2人は呻くように声を絞り出すと、後ろを向いた。
「魔王!いずれ、僕がお前を殺してやるぞ!」
「・・・”ミラーボール”お兄ちゃん・・・やって」
「あぁ・・・!”ライトニング”」
2人は力を合わせ目の前が真っ白になるほどの光を作り出した。それは、辺りを覆いつし視界を遮った。
「逃がすわけねぇだろ。”暗黒波動”」
陽炎の体が黒い何かに覆われる。そして、そのまま2人に切りかかる。その刃は流れるように2人に近づいていき、当たりそうだったが結局当たらなかった。
「ちっ、間に合わなかったか」
2人はこちらを見ることも無く真っ直ぐに逃げていく。追いかけることも出来たが、陽炎はその場に留まり座り込んだ。
「あぁ〜、やっと終わったよ」
疲れた様子の陽炎は小さくそう呟いてため息をついた。
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