第29戒 ラストスパート!
━━86階層・・・
「ところで、かーくんの目ってどういう能力なの?それに、今のステータスは?」
「急だな。目については教えるつもりだったから良いけど、ステータスは秘密」
「む〜!」
「そんな顔してもだ〜め。それで、俺の目についてだけど、これは古代眼って言うらしい。効果は、進化だ」
「進化?」
「そう、どこまでも進化して強くなる能力だよ」
「しゅごい!」
はしゃぎすぎてテムは舌を噛んでしまった。そのまま顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「はは・・・さ、気を取り直して進もう」
『うん!』
━━90階層・・・
陽炎はこれまで以上に慎重になっていた。それもそのはず。このダンジョンで最下層に陽炎の祖父がいることは確定している。そうなると、最下層の1個前のボスが魔物の中で1番強いわけだ。
「お前ら、これまで以上に注意しろ。ここが90階層なら確実にこれまでの敵とは違って強いぞ」
「そうなの?」
「まぁ多分だけどな」
「どんな敵が来ても平気よ」
「どこから出てくるんだよ、その自信」
そう言いながら扉を開いた。するとそこには予想通りの強そうな鬼がいた。その鬼は人の形をしているが大きさは陽炎の3倍くらいある。ルーシャに何者か聞こうと後ろを見ると3人が震えていた。
「・・・何震えてんの?」
「だって、鬼だよ!怖いじゃん!」
「こ、こ、こ、この鬼はよく悪い子のところに来てお尻を叩いていくと言われてるんです」
「わ、私も前に何度かあの鬼にお尻を叩かれました・・・すごく痛いんです・・・」
「お前らなに急に敬語になってんだよ。動揺しすぎな。あんなのすぐ倒せるって」
陽炎は余裕を見せつるかのように立っている。しかし、3人は怯えた様子で陽炎に注意する。
「だから、危険なんだって!お尻真っ赤になるまで叩かれるんだって!」
「いや、そいつ変態だろ。公然わいせつ罪で捕まっていいレベルだぞ」
「うぅぅぅぅ・・・」
「泣くなって、見てろよ。勝てるってことを教えてやるよ」
そう言ってその鬼の前に立った。そして腰の刀に手を掛けた。
「なるほどな、断悪鬼人というのか・・・ま、どうでもいいか。”雷流・地を這う稲妻”」
陽炎は一瞬にして距離を詰め首をはねた・・・そう思った。しかし、全くその感触はなく鬼もそこにはいなかった。
「消えた!?どこに・・・っ!?」
陽炎は急いで振り返った。するとそこには、テム達の前で棍棒を持ち上げ構えている鬼を見つけた。しかし、3人は恐怖で全く動くことが出来ない。
(まずい!この距離だと間に合わない!)
そして、鬼はそのまま棍棒を振り下ろした。陽炎もギリギリのところで間に合わなかった。・・・が、何とか当たる直前でテムを手前に引き直撃を防いだ。
「っ!?テム!クソッ!”雷流・霹靂神の閃電”」
鬼は少し傷を受けるとまた消えてしまった。陽炎は1度その場を離れ、テムを回復させた、!
「テム、大丈夫か!?・・・テム!」
「う・・・ん・・・」
「クソッ!俺のせいだ・・・俺が油断したからだ」
「そんなこと・・・ないよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ。・・・なぁ、お前らに1つ頼みたいことがあるんだが・・・」
「何?なんでも言っていいよ」
テムは微笑むと静かにそう言った。
「そうか・・・。その前にまず、結界を張ろう。”結界”」
陽炎は簡単な結界を張ると3人に向き直った。そして言った。
「よく聞いてくれ。俺は・・・になろうと思う」
その時、その言葉と同時に結界が壊されかなり大きな鬼の咆哮が向かってきた。テム達は何になるのか聞こえなかったかも、なんとなく察した。そして言った。
「良いよ。だって私達はかーくんの妻なんだから。夫の言うことくらい聞いてあげるよ」
「フフ、ありがとう。本当に」
そう言って陽炎は微笑んだ。そしてバックから仮面と黒いマントを出した。
「もう後戻りは出来ないの?」
「出来るさ。でも、俺は後ろには下がらない。それに、下がっていたら大事なものは守れない」
「わかった。それがかげくんの考えなら喜んで受け止めるよ」
ルーシャがそう言った。陽炎は優しく微笑むと前を向いた。
(完全じゃなくていい。ただ、今は皆を助けられるくらいの闇の力を・・・)
そんなことを考えているといきなり横から衝撃が来た。陽炎は仮面とマントをつけることが出来ず、そのまま飛ばされ壁に打ち付けられたが、すぐに体制を建て直した。
「あ〜あ、服がビリビリだよ。ま、まだあるしいっか。それに、仮面とマントは後で着よう」
(そんなことより今は目の前のこいつだ。恐らくだが、不可視化の魔法かなにかだろう。それに・・・一体じゃないな)
「一撃で仕留める。”水流・水鏡平面”」
陽炎は自分の周りを切り裂いた。すると2匹の鬼が棍棒を構えて両断された。
「終わったな・・・」
「かーくん!凄いよ!」
「まぁな!これくらい雑魚だよ。ククク・・・まだ、俺の右腕が戦いたいと疼いているよ」
「・・・」
「冗談だよ。さ、行こう」
陽炎は慌てて階段へと足を進めた。
━━93階層・・・
「”メガバーニング”」
辺りが炎に包まれた。そして、後ろからテム達が走ってきた。
「速いよ・・・。気づいたらもう居ないんだもん・・・」
「はぁはぁ・・・そんなに・・・急がなくてもいいんじゃない・・・」
「悪い悪い。あと少しで最下層に行けるって思うといてもたってもいられなくてな」
3人は息を斬らせながら話していたが、少し落ち着いたみたいだ。
「スゥ、はぁ〜・・・ねぇ、そんなに急いでどうしたの?何かあるなら言ってよ」
「そうだな。じゃあ正直に言ってどうにかできるの?」
「出来ないよ。でも陽炎くんがずっと1人で考え込むのは違うと思う」
陽炎は何も言えなくなった。なぜなら、ディリーが真っ直ぐな目で言ってきたからだ、テムやルーシャも真面目に見ている。
「そんな真っ直ぐな目で言われたら、断れないな。・・・俺が急ぐ理由はね、俺は家族を殺す。もしくは奴隷にする」
「え!?なんで・・・」
3人は目を開いて驚いた。だが、それが普通だ。誰でも驚くだろう。しかし、陽炎は静かに話した。
「ついさっき思い出したんだよ。俺が何をしたかったか・・・それはな、この4人で幸せになることだ。もしかしたら人数は増えるかもしれない。その時はその人数で幸せになる。でも、家族ほそれを邪魔しようとしている。邪魔するのであれば殺すだけだ」
「そうなんだ・・・」
「失望したか?」
「いや・・・ずっと私達のこと思ってたって思うと嬉しくて♡」
「・・・」
その場の全員が黙ってしまった。
「まぁなんでもいいさ。あと少しだ、急ごうぜ」
「嫌だよ・・・もうちょっと休もうよ・・・」
陽炎は頭をかくと仕方なく休むことにした・・・
「・・・はい2秒休んだ〜!もう行くぞ!」
「え〜!早すぎだよ〜!」
そんな叫びは聞き届けられることなく陽炎は走って行ってしまった・・・。
━━98階層・・・
「あははははは!遅い、遅いぞ!」
「陽炎くんが速すぎるだけだってばぁ〜!」
陽炎は物凄い速さで走っていく。そして遂に階段を見つけた。しかし、その階段はボロボロに朽ちていた。だが、物凄い速さで走っている陽炎はその事に全く気づかなかった。そして、足をかけた陽炎は階段が崩れてしまい下まで転がり落ちて行ってしまった。
「うぉ!?あぁぁぁぁぁ!」
「大丈夫!?」
「あぁ、大丈・・・夫・・・」
顔を上げるとそこには剣があった。
「どうしたの?っ!?それって・・・」
「古代武器・・・だよね。やったよ!かげくん、やっと見つけたよ!」
「でも待って!これ、私達が探してたやつと違う・・・」
「本当だ・・・」
3人はそれに気づいて考え込んでしまった。しかし、陽炎は違うことで驚いていた。それもそのはず、なぜならこの剣は・・・
「これは、俺が転移前に作った剣だ」
「え!?本当!?」
「本当だ。この剣は〈滅聖邪剣・ヴェルトラウム〉って言ってな、俺が財産の10分の1を使って自分で打ったやつだ。かなり強化されているな」
「そんな・・・」
その時、陽炎はふと思った。そしてバックから手紙と一緒に手に入れた剣を見た。そして気づいた。
「これも俺が作ったやつだ。色が変わってて気づかなかったが、よく見ると俺のだ」
「それで・・・なんて言うの?」
「これは〈破邪聖剣・アロンダイト〉。聖剣のはずなんだが・・・」
「闇の力に汚染されてるね」
「そうだな・・・そうだ、ちょっと待て、闇の力だけ吸収してみる」
「え?ちょ・・・」
「”ヴァンパイア・ヴァース”」
すると、剣にまとっていた黒いオーラは陽炎の体の中に入っていった。そして剣のオーラは白くなり、剣自身の色も白くなった。
「これだ、これがこの剣本来の色だ。うん、やっぱいいね。しかも、強化されてるし」
「それどうするの?」
「・・・使うよ。この2つは俺の部屋にあったやつなんだ。多分俺と一緒に来たんだろうけど、俺の愛剣なんだ」
「それなら使うといいよ!そしたら百人力だよ!」
「フフ・・・そうだな。それじゃあ先に進もう。この階層はこの部屋しかない。次が最下層だ」
『うん!』
そして、4人は階段を降りていった。
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