第19戒 戦後・・・
とてつもない轟音は止んだ。陽炎達は外に出ようとしたが、出ようにも周りの木がない。少し遠くに倒れている木から外に出ることにした。
「やっと止んだか・・・っ!?なんだこれ!?」
外に出ると轟音か鳴り響いた場所は荒くえぐられていた。その真ん中には体中から血を流すγの姿があった。
「凄まじい威力だ・・・お前達はなんともないか?」
「私達は無事だよ」
「それならいい。これでわかったな。俺の死刑執行は威力がおかしい。恐らく拘束した状態じゃない場合は範囲内の生き物全てが対象となるのだろう」
「これから気をつけないと・・・」
陽炎がルーシャに目をやると暗い顔をしていた。陽炎は優しく声をかけると頭を撫でた。
「これからは気をつけるよ。それに、別にカトブレパスの邪眼が暴走した訳じゃないだろ。まだマシだよ」
「え?カト・・・ブレ?何言ってるの?」
「いや、なんでもない・・・。それより服がもうビリビリだよ。皆もどうする?着替えなんてないよ」
3人はキョトンとしている。何故かと言うと、陽炎の服はあまり破れてないのだ。すると陽炎がこっちを指さしている。3人は自分を見た。すると・・・
「キャアァァァァ!かーくんのエッチィィィィィ!」
服が破れていたのは陽炎ではなくテム達だった。服が破け、胸やお腹、股、太もも、足、ほとんどが見えていた。その時陽炎はテムにビンタされた。すると、そのまま遠くまで吹っ飛ばされた。━━しばらくして、陽炎達はγの近くに行った。
「さすがに生きてはいないだろう・・・死体はギルドにでも引き渡すか・・・な・・・」
陽炎は目を見張った。なぜなら、目の前にγがたっていたからだ。
「何故生きている?死んだはずだろ」
「あぁ、1度死んだな。しかし、やはり持っててよかったな。αの言った通りの男だったな・・・」
γはそんなことを言ってこちらを見た。
「そういう事か・・・蘇生アイテムね・・・」
「よくわかったわね。ま、今日は退かせてもらうわ」
γはそう言うと後ろを向いた。すると、すごいスピードで飛んで逃げた。
「あ!かーくん、追いかけなくて良いの!?」
テムは急かしてくる。しかし、陽炎は全く動かない。
「ねぇ、かーくん!早く追いかけないと・・・」
「いや、良い。追いかけたら間違いなく死ぬな」
「え?なんで?陽炎くん何か分かったの?」
「言霊魔法だ。近寄ったら意識を乗っ取られるぞ」
「うそっ!」
「嘘じゃない。笛から何か出てただろ。それに、無理だろ、あの速さじゃ」
3人は何も気づかなかった。そのせいでその場に立ち尽くしてしまった。
(今回も何も出来なかった。戦いに参加しようにも隙がなかった。さっきも、追いかけようとしたけど逆に失敗するところだった。陽炎のために頑張ろうとしたのに・・・)
3人の頭にそんな考えがよぎった。そのせいで、3人の顔が曇る。
「そんなことはどうでもいいだろ」
突然陽炎がそんなことを言ってきた。まるで自分達の思考を読んだかのように・・・
「皆俺の役に立とうとしてくれるのは嬉しいが、無理はしなくてもいいんだぞ」
「何で・・・そんなことを言うの?」
「え?・・・」
「答えてよ・・・」
しかし、陽炎は答えようとしない。陽炎は今の状況をよくのみこめてないようだ。3人ともイライラが増してくる。ついにテムは陽炎に怒鳴ってしまった。
「答えてよ!何でそんなこと言うの!?私達がどんな気持ちがわかってるの!?役に立とうとすればするほど上手くいかない!今回も、体を乗っ取られちゃった!戦いは何も出来なかった!」
(え〜〜〜〜〜・・・)
陽炎は何故怒鳴られているのかも分からない。何を言っても分からず固まってしまった。それでもテムの怒りは収まらない。陽炎に向かって不満が飛んでいく。
「前にも言ったけど・・・私達を頼ってよ!これから1人で戦うって言うならもう別れようよ!」
テムは泣き出してしまった。ディリーとルーシャは何も言わない。テムと同じ気持ちなのだろうが泣いてこっちを見るだけ。陽炎は色々考えたが同じ答えにしかならない。そしてついに口を開いた。
「ごめんね・・・そういうことなら、俺はもう関わるのは辞めるよ」
「え?」
陽炎の口から出た言葉は思いがけない一言だった。
「ちょっと待って・・・何でそうなるの?」
「だって・・・皆は最近不満があったんだろ。いつも、俺一人で戦うことに・・・それに今自分で言ったじゃん」
図星だった。図星すぎて何も言えない。3人とも顔を俯かせた。
「本当はこんなこと言いたくないけど、俺といることで不満が溜まるんなら・・・離れた方がいいと思わないか?」
何も言えなかった。確かにその通りだ。このままじゃずっとこんな思いをし続けなければならない。それなら・・・
「あ・・・、う・・・、その・・・」
しかし、言葉が出ない。言いたいのに言葉が出ない。するとディリーが横から話してきた。
「ねぇ、なんでそんな事言うの?陽炎くんは私達と離れたいの?」
「離れたくはないよ」
「だったらなんで・・・」
「でも、離れないでこの関係が壊れるなら離れた方がいい」
するとルーシャが泣きながら言ってきた。
「嫌だよ!喧嘩しても仲直りすればいいでしょ!だから離れる必要は無いでしょ!」
「今ここで仲直りが出来そうにないんだ。無理だろ。」
3人の意見はことごとく弾かれた。
「覚悟を決めろ!俺と一緒にいたいのか!?それとも、離れたいのか!?」
「う・・・そんなこと言ったって・・・」
「甘えるな!俺がいつもお前らの意見だけを聞くと思うなよ!俺はお前らと仲良くしたいがな、自分の意見だけ言って人の意見を聞かないやつは嫌いだ!」
「うっ・・・うあああぁぁぁぁん!だって!だって!」
「だってもクソもねぇんだよ!お前らが俺のこと心配してると同じでな、俺も心配なんだよ!俺と一緒にいたいなら俺のことを守れることを証明しろ!俺より強いと証明しろ!」
「うあああぁぁぁぁん!あああぁぁぁぁん!あああぁぁぁ!」
テムの涙は止まらない。滝のように流れる涙を拭き取っているが止まる様子は無い。それでも、陽炎は止まらない。
「泣いて許されると思うなよ!離れたくないけど1人で戦うなら別れたい!でも、1人で戦わせなくていいほど強くは無い!どっちなんだ!?別れたいのか!?別れたくないのか!?」
陽炎は力強く言った。確かに陽炎の言う通りだ。自分達は弱い。これからも陽炎は私達を守るため1人で戦うだろう。やっぱり離れた方がいい。そんな考えで頭がいっぱいになった。でも・・・
「それでも!私は、私達はかーくんと離れたくない!ずっと一緒にいたい!楽しい時も、悲しい時も、死ぬ時も、ずっと一緒にいたい!」
テムの言葉はその場の全員の心に刺さった。大粒の涙を零しながら皆を見ている。陽炎はディリーとルーシャの顔を見た。同じように大粒の涙を零している。陽炎は目をつぶって考えた。
(フフフフフフ・・・ちょっと言いすぎたな。まぁでもいい。最近の俺は甘すぎたからな。・・・でも、こいつらの前では甘くてもいいかな・・・)
陽炎は優しく微笑みかけた。そして、優しい声で言った。
「そうか・・・俺も皆と一緒にいたいよ」
その言葉は今の皆にとって最高の言葉になった。
「テム、ディリー、ルーシャ・・・これからも着いてきてくれるか?」
3人はかお合わせると自信を持って言った。
『うん!これからもよろしく!』
「・・・あ、言い忘れてたけど俺は別に怒ってもないしお前たちと別れたいなんてひとつも思ってないからな」
『え?』
「あはははは!騙されてる時のお前らの顔面白かったよ」
『・・・バカァ!』
「あはははは!ごめんごめん。ふふふふふ!」
その場に陽炎の笑い声とテム達の怒っている声がこだました。
━━それから少し時間が経った。
「よし帰るか」
「もういいの?」
「あぁ、少しこの地の魔力の流れを調べてみたが何も出ないからな」
陽炎は立ち上がると古代樹を生やした。
「あ、そうだ。お前達に渡したいものがあるんだ」
そう言って取り出したものは指輪だった。
『え!?』
「結婚指輪だよ。これがないと気分が出ないだろ。さ、指をだして」
3人は揃って指を出した。
「ディリー・・・右手じゃなくて左手を出して」
「あ、ごめんね」
3人は顔を真っ赤にして陽炎の顔を見ている。
「こんな場所でムードも出ないけど悪いね・・・。でも、俺皆のこと好きだよ。結婚してくれるかい?」
『はい!』
そして、皆の指に指輪をはめた。
「さて、帰るか・・・と言いたいところだが・・・」
陽炎は少し考えた。
「ねぇ、どうしたの?」
「フッ、まぁいい。さっき俺に散々言ったおしおきだとでも思ってもらえればな」
「急にどうしたのよ?確かにさっきは言いすぎたけど・・・」
「お前ら先に言っておくがな、俺も人間なんだぞ。特に俺は傷つきやすいんだ。ガラスのハートなんだからあまり悪口とか陰口とか言わないでね」
ルーシャが嘘言わないでって言いたげな顔でこちらを見ているのを横目に見て古代樹の中に入った。そして、フレアの街の近くの木から外に出た。街に着くとすぐにギルドに向かった。
「受け付けのお姉さん、依頼完了したよ」
「もうですか?わかりました。確認します」
受け付けの人は水晶のようなもので陽炎を見た。
「おめでとうございます。依頼達成です。こちらが報酬の金貨6枚となります」
陽炎は金貨を受け取るとギルドを出た。
「ちょっとどこに行くの?」
ディリーが聞いてきた。
「決まってるだろ・・・服屋と病院だよ」
ディリーは自分の服を見た。するとビリビリだったことを忘れていた。
「うっ・・・うっ・・・陽炎くんのバカァ!」
ディリーは陽炎をポカポカ殴り出した。
「ハハッ!こんな毎日も楽しいものだな!」
陽炎は笑顔でそう言った。




