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あのね。尻尾がブンブンしているよ。  作者: りすこ


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7/7

白いケモノは尻尾をブンブンさせました。

 翌日、メイドさんの元に、国の宰相が来ていました。宰相は王様と一緒に、国を支えている人です。


 宰相はため息をつきました。


「陛下は本気で、塔に引きこもるつもりか?」

「そのようですよ。毎日、シロさまに会っていたのに、()()()会えなくて、不満だったようですからね。四日は、シロさまを独り占めしないと気がすまないんじゃないでしょうか」


「……陛下からは、一週間と聞いている」

「それはそれは」


 メイドさんは、ふっと微笑みました。


「陛下はシロさまが小さい頃から、お兄さまの修行にも必死で耐えられ、一途にシロさまを思ってきました。これくらい大目に見たらいかがですか?」


「……まあ、そうだな。シロさまが可愛くて辛抱たまらん。今すぐ嫁にしたい。約束の十年になったし、もういいよな?と、言ってきたときの陛下の鬼気迫る目。思い出すと、背筋が凍る」


「それはしかたないかと。陛下はシロさまのことしか、考えていませんもの。ところで、陛下のお兄さまは、本当に隣国にいるのですか?」

「いる。〝ハロー、元気か? 私は嫁さんをもらった。子供もいる。ははは。おまえも頑張れ〟と手紙がきていた。……それを見た陛下は、手紙を握りつぶしていたがな」

「それは、それは。手紙の文章が軽すぎて、キレますね」


 宰相はため息をつきました。


「兄殿下は、昔から陛下に対してだけ、なぜか厳しいんだ」

「きっと、可愛がりかたが下手くそなんですね。陛下には愛情が伝わっていませんもの」


「いや、伝わらなくてもいいと考えていると思うぞ」

「ドMですか」


 やれやれと、メイドさんは肩をすくめました。


「おまえもよく、シロさまに仕えてくれたな」

「いえ。シロさまに出会わなかったら、わたしは陛下を誤解したままでした。シロさまが、わたしや陛下、そして皆さまも変えたのですよ」

「そうだな……シロさまは女神様だ」


 ふたりは、穏やかに尻尾を揺らしました。




 月日が経ったある日。シロのおなかはふっくらしていました。もうすぐ赤ちゃんが産まれるのです。


「王様。王様。おなかをなでてください。赤ちゃんが動いていますよ」


 王様は破顔して、おなかをなでました。


「元気な子だな……」

「そうですね。きっと、尻尾がブンブンしているのでしょうね」

「シロ、おなかを冷やしたら大変だ。この服を着てくれ」


 王様はもこもこの服をシロに着せました。


「ふふっ。あったかいです。この服なら赤ちゃんも安心ですね」


 王様は幸せそうに微笑みました。

 シロも顔をくしゃくしゃにして笑っています。


 二人の尻尾はブンブンゆれて、時々、重なりあっていました。



 生まれてくる赤ちゃんにも、尻尾があるでしょう。


 小さな小さな尻尾がブンブンするまで、あと少しです。




 おしまい。

挿絵(By みてみん)

イラスト 風音紫杏さまより


いただきもの、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] お兄さんが思った以上に軽いノリのひとで安心しました。いいスパイスになってたのでうらめないです。グッジョブお兄さん! そして最初から最後まで幸せなお話でした。お腹いっぱい、あーかわいい! 短…
[一言] とにかく可愛らしいの一言です! ほっこりしまくりです。
2021/07/13 16:10 退会済み
管理
[良い点] 前作を読んでいれば一度で二度おいしい作品でした^^ シロのことも王子のことも、王子のお兄さんのこともいろいろと知ることができて大満足でした♪ わたしもどこかでシロみたいなかわいい子を拾って…
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