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三周目の幼女  作者: 夜月周
第1章
30/42

【襲撃】

「そろそろ開戦したころでしょうか?」

待機を命じられた私は騎士団の執務室で団長が留守の間、私だけでも処理できる書類に目を通していた。

だけど、やはり戦線のことが気になってしまい集中できないと思い一度書類をもとの場所へと戻し息抜きのために建物の外に出ていた。

魔力を探るとトイフェルの方角でかすかに魔力を感じる。

例外はあるが種族的に人族は魔力探知が苦手だ私も例外ではない、魔力探知も近くであればできる程度だった。

なのに、トイフェルの魔力をかすかながらも探知できるということはそれほど大きな魔力が使用されようとしているということか。

団長はおそらく無事だろうが、ほかの団員は大丈夫だろうか。

アルノーさんがいるので大丈夫だとは思うが、大丈夫なら大丈夫で私の存在が不必要であるような気がして少し落ち込む。

少し落ち込んだ気分で敷地の外を眺めているとメイドの手伝いをしている途中なのだろう、洗濯後の衣類を持ったスイが開いたままにしておいた玄関から見えた。

一生懸命衣類を落とさないように歩いているスイを見て癒される。

少し手伝ってあげようと近づこうとする。

「……」

スイが何かつぶやいた後スイの身体が少し光った気がした。

「スイ、少しもって上げるわ、あなた1人ではきついでしょ?」

「あ、ありがとう。でもお姉ちゃんお仕事は大丈夫なの?」

私が声をかけると少し焦ったようにスイがお礼を言ってきた。

「ええ、今日の分は終わって私もちょうど暇をしてたところだから」

とっさに嘘をついてしまった。

スイに嘘をついてしまったことに自己嫌悪してしまう。

「さぁ、行きましょうか」

そういった直後大きな魔力反応が敷地の外に感じ取られた。

「この魔力は!?なんでここに!?」

「お姉ちゃん?」

「スイ、ここの建物の中にいなさい、ここなら攻撃を防ぐ防御魔法が貼ってあるから」

そう言い切った直後遠くで爆発音が響く。

この国の中枢から少し離れたところにあるこの区域は防御魔法の範囲の外に近い。

その外にも防御魔法による結界のようなものは使って入るがこれは領土が拡大した際、あとから作ったもので、

中枢にある神話の時代に創造神ディーネよりもたらされたとされる結界とは格が違う。

上位の魔族ならば通り抜ける、または壊すことも可能であろう。

「いい?わかったわね」

肩に手を置きしっかりと言い聞かせていると、スイの後ろからメイドたちが走ってくるのが見えた。

「リーシャ様!先ほどの音はいったい!?」

「どうやら襲撃のようです。私は出るのでここに避難してきた人がいれば保護してあげてください。細かなことは待機している部隊長と団員もいるので指示を受けてください」

私たち騎士団の中には魔族相手ではなく対人を想定した部隊も構成されていて今回のトイフェル戦線へ行かずに他国の襲撃に備え国軍とは別に彼らもここに待機していた。

神話時代の魔族ではわからないが、力が落ちたとされる最近の魔族ではここの防御魔法を越えることは叶わないだろう。

「恐らく国軍からも兵が出ているはずです、私は援軍に行ってきます」

建物の中に入り鎧を着ながらメイドに部隊長たちへの伝言も頼む。

先ほど感じた魔力の大きさ、恐らく魔族だ、しかもかなりの大物が複数。

国軍も私達も現在トイフェル戦線に魔族戦特化の部隊は出払ってしまっている、ここに残った国軍も出撃してはいるだろうが恐らく長くは持たず、撤退を余儀なくされるだろう。

だとすれば今この国で奴らと戦えるのは私一人。

「お姉ちゃん?」

スイが心配そうな顔をしてこちらを覗き込んできた。

「大丈夫、すぐに片付けて帰ってくるから、あなたはここにいなさい」

スイの頭を撫でてそう言い聞かせる。

この子は絶対に守らなくては、防御魔法は強いが万が一突破されたときこの国にはもう奴らを阻むものはなくなる。

そうなっては遅い、その前に私が…

「それでは行ってくるわ」

急いで装備を整えた後私はスイにそういって建物から飛び出し、防御魔法の結界の境である門へと走り出した。


side:スイ

リーシャが走り出す姿を後ろから見つめる。

結界を区切る門の外に三体の魔族がいるのを感じる。

その他の魔族らしき力は感じず、その周りにある魔力の反応は恐らくこの国の軍隊か、この国に常駐している冒険者たちだろうか。

この国は魔族領からは遠く冒険者の力量は低い。魔物の出現が少ないため、彼らの仕事が少ないからだ。

その証拠に感じられる魔力はみな襲撃者の魔族を打倒できるレベルの魔力ではない。

戦いは力の大きさだけではない、しかし大きすぎる力の前では極めてすらいない技術など障害にすらならない。

リーシャの力は知ってはいるが…

恐らく二人は同時に相手取っても倒せるとは思うが、あと一人。

他二人とは比べ物にならない大きさのこいつには勝てないだろう。

心配になった私はリーシャの後を追いかけることにした。

その大きな魔力を持つ魔族もこのディーネの魔法によって作られた結界を越えることはできない。

だからこの結界の中に撤退するように伝えなくては。

そう考えているとリーシャの姿が見えないくなっていることに焦り思考をやめ走り出す。

手伝いの中で何度か通った道を思い出しながら私も門へと走り出した。

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