【門外の戦い】
「見えた!」
大きな門が視界に入った。門の前には恐らく門の外に住んでいる民が固まっていた。
子供の泣き声が響き怪我を負っているものもいるようだ。門の外ではまだ爆発音が響いており戦闘が続いてるのかまたは、魔族が苛立ちのままに門を攻撃をしているのかはわからないが、門の内側にいる民たちはその音におびえていた。
このままでは不安を増幅させると考えたのだろう、この場を指揮する指揮官らしき人物がこちら側へと皆を誘導していた。
その列は多くこのままここを抜けることは困難だろう。そう判断した私はより一層身体強化のレベルを上げ大きく飛び上がった。
「はぁああああ!」
空中で風魔法を使い体勢を整えつつ加速する。
降り立つ目標は門の外、一刻も早く現場につかなくてはいけないこの状況では開門を待っている時間はない。
門へ近づくにつれ、門の外の状況が少しずつみえてくる。
煙がいたるところで上がり家が燃えている。門の外では警備兵と王国軍が必死の抵抗を見せていた。
何人もの兵士が倒れ、血を流している。傷ついたものを引きずり門側へと運び、そのすきを生むために魔族に突撃するものもいた。
だが、魔族の強大な魔法により吹き飛ばされ突撃したものもまた負傷者へと変わる。
「何をしている!?早く撤退を」
そうつぶやきかけた時ちょうど門の真上へと到達する。そうして見えた門の前にはまだ数十人の民がいた。
その集団の中には負傷した兵士も多くみられた。
避難が間に合わなかったのだろう、肩を寄せ合う民衆と負傷兵を守るように数人の魔術師が防御魔法を展開している。
魔族は戦闘をしつつもそちらへも攻撃を放ちじわじわと彼らの魔力を削っていく。
もはや、魔力が尽きてしまうのも時間の問題だろう。
その状況をみて一度空中に声を風に乗せて門内の兵士に声を届ける。
「私はレイン王子の直属の騎士団、副団長のリーシャです!今から上空から奇襲を魔族にかけるそのすきに門を開き逃げ遅れた人たちを門の中へ誘導してください」
声が一方通行なので返事はこない、なので続けて指示をだす。
「合図とともに門を開き始めてください!門が動いたことを確認したと同時に攻撃を開始します」
そう言い切りすこし間をあける。魔族と兵士たちの動きを注視する。
まだ一個小隊が戦いを続けている。彼らの動きを見て一度距離を全員がとろうとする動きを察する。
私はタイミングを合わせ開門の指示を出した。
「開いてください!」
その合図からまもなく扉が少しずつ開き始める。
突然のことに驚いた兵士たちが魔族に注意しながらも門へと視線を向ける。
「<風よ 刃となりて我が敵を切り刻め>」
右腕を魔族へむけ詠唱する。
魔力を込めた瞬間私の右手から大きな竜巻が起こる。
風の刃の竜巻、触れるものを切り刻む風魔法の上位攻撃魔法。
いかに魔王軍と言えども防御をしなければかなりのダメージとなる魔法だ。
「小隊長!ここは代わります!負傷した人たちを連れて撤退してください!」
予想通り魔族は後ろへ飛び防御の耐性に入った。それをみて小隊に撤退命令を出す。
「リーシャ副団長か!!助かる!撤退だ!撤退!攻撃に警戒しつつ撤退しろぉ!!」
私は魔法を維持しつつ距離を詰め魔族と門の間に降り立つ。
「抑えてはいますが恐らくそう長くは持ちません!急いでください!」
「わかった!」
小隊長はうなずき支持を出す。
大隊長が見えないところを見ると恐らくもう負傷をしてしまったのだろう。
彼らの大隊は戦場で何度か見かけたことがあったが、なかなかの実力者ぞろいだったはず、それが一小隊まで減らされるとは…
恐らく魔族の中でも上位の魔族か…。
討伐の際うち損ねた幹部連中か?確か三人いたはずだ。
先ほど上空から見えた魔族は三体、幹部一人とその部下二名といったところか?
レイン団長が向かったトイフェルにも魔族を確認された、向こうが囮だとしても規模が違う、複数の幹部がいるだろう。
団長が出会ったという異常な魔力をもった魔族、彼女ともう一人勇者が来ることは予想できるだろうから配置していてもおかしくはない。
幹部一人だけならばここは私だけでも倒せる!!
そう考えた瞬間後ろの門がしまった。どうやら避難が完了したようだ。
「もういいよねぇええ?」
つまらなさそうな女の声が私の魔法の向こう側から聞こえた。
「いいんじゃない?」
それにこたえるようにもう一つ女の声が聞こえる。
「せっかく楽しめそうな獲物が来たんだ、もう少し辛抱を覚えた方がいいぞ?二人とも」
そして聞こえる聞き覚えのある男の声。
「この声は!?どうして…ここに?」
その瞬間魔法が一瞬で薙ぎ払われ消滅する。
その勢いに飛ばされはしなかったものの少し体勢を崩してしまった。
追撃が来ると思い構えるが一向に攻撃がくる気配はなかった。
魔法がぶつかり消滅した勢いで砂煙が舞う。視界が晴れ魔族三人の姿が少しずつ見えてくる。
同じ顔をした低身長の緑と青の双子らしき女の魔族、そしてその後ろにいるのは…
「ダバルぅうううう!」
その顔を見て怒りのあまり声を荒げてしまう。
「なんだ人族俺を知ってんのか?ん?その顔、ああ勇者様の腰ぎんちゃくか」
嘲るようにダバルは笑う。
「殺してやる!!」
怒りのままに剣を振り上げダバルへと切りかかる。
だがその剣はダバルに届くことなく二つの鎌に防がれた。
「だめだよー」
「そうそう、あなたの相手は私たちがするって約束なんだからー」
そう双子の魔族がのんびりと話す。
力を随分と込めたはずが軽々と受け止められたことに驚き、とっさに後ろに飛ぶ。
「私は風のミル三人衆の一人」
「私は水のルミ三人衆の一人」
『あなたの相手は私たち』
魔王と幹部が二人いることに少し驚くが、今はそんなことはどうでもいい。
こんな奴らどうでもいい。
こんな奴らの相手をしている暇はない!一刻も早くあいつを!
「だからだめだってー」
緑の髪をした魔族がこちらへ近付き鎌を振る、私はさらに後ろへ飛び距離をとる。
早く、早くあの下種を殺したいのに!仇を討ちたいのにこの二人の魔族が邪魔をする。
怒りのあまり剣が、魔法が乱雑になりどの攻撃もたやすくかわされてしまう。
「くそ!くそ!くそ!」
「はははははは当たらないよー」
「はははははは当ててみなよー」
二人の魔族はくるくると私の攻撃をよける。
挑発する二人の声に私はどんどん翻弄されていった。
私の攻撃は当たらないのに、魔族の攻撃は少しずつ私の体力を奪っていく。
その状況に焦りはより強くなっていく。
強くなったはずなのに!どうして!!体が少しずつ傷つき、息も上がってきたころ聞こえるはずのない声が聞こえた。
「リーシャお姉ちゃん!!!!」
スイ?どうしてここに?
声がした方向にいたのは門の中に残してきたはずのスイだった。




