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67……もっとお掃除なのっっ

マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。

飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。

リトの幼馴染のシエル、村での初めての友だちのノエル。

学校のみんなに、優しい村長さん。たくさんの人と触れあって。

そうして、初めての夏がやってきて――

      ♪


「うえー、びちゃびちゃなの」

「誰のせいだよ」

「リトだし! リトがいっぱいいっぱい掛けたからだし! もう、中まで濡れてるの」

 ファナは、シャツの裾を口に加え、ショートパンツに指を掛けてそこを確認した。真っ白いつるんとしたお腹がまぶしくて、リトは背を向けた。

「そこで待ってろ。タオルと着替え持ってくるから」

 彼女の保護者代わりである少年リトはため息交じりに言って、横庭から玄関に回る。

 ややあってリトが中からガラス戸を開け、ファナの頭にタオルをかぶせた。

 そもそも――なぜファナが水びたしになっているのか。話は少し前に巻き戻る。


      ♪♪


「リト、いっぱい描けたのっ」

 外からガラスをきれいにしているときのこと。『あわあわふわふわすごいえきたい』という村長特製の洗剤を霧吹きで吹けば、面白いほどに泡立った。それはもう、ファナでなくともガラスに絵を描きたくなるほどに。

 そうして、気がつけば、三枚のガラス戸を拭くには多すぎる泡の山ができあがっていて。

 ファナが手にした雑巾があっという間に泡まみれになることが目に見えたリトは、ホースを伸ばしてきて水を掛けようとしたのだった。しかし――、

「あぶないのっ」

 リトが水を掛けようとした瞬間、ファナが立ちふさがった。

「……なにしてんだ?」

「リトの描いたお団子が消えちゃうの! かわいそうだしっ」

「……(木だってば)」

 無慈悲にホースの先を向ければ、またもやファナに阻まれる。水を掛けられたファナは、水嫌いのはずが嬉しそうに笑っている。確かに、水浴びするには良い日和だが、まるで犬だ。

「目玉焼きがっ」「……(フリスビーな)」

 ――という感じで。満足したファナが脇に避けてからやっと窓の泡を洗い流す。けれど拭くはずの雑巾はファナの手の中で、いい感じに水を滴らせていた。

「うえー、びちゃびちゃなの」


      ♪♪♪


 村はずれの一軒家であるのをいいことにファナは服を脱いだ。隠しながら拭く考えも、拭けたところから着る考えもないファナは当然のことながら全裸だ。生まれたばかりの姿。

(竜の子供って、竜と人のどっちで生まれるんだろうな。てかほんとにあの竜になるのか?)

 羽としっぽの水分を飛ばそうとぱたぱたしている少女を見て思う。

「ほら、じっとしてろ」

 そんなファナの手からタオルを奪い取り、赤い癖っ毛をぐしぐし拭う。少し乱暴なのはしつけの意味もこもっている。またこんなやんちゃして、と。

 兄妹にも見える二人のそれは、お風呂場であれば微笑ましくもあるが、ここは外だ。

「……なにしてるんじゃ? 年端もゆかぬおなごをまっぱにして」

 言葉の割に対して驚いた様子も見せない、十代半ばほどの少女だった。ファナよりはお姉さん、けれどリトと同い年かと聞かれると、顔立ちゆえか幼く見える。

 長い金髪は陽ざしにきらきら輝き、それ以上に、少女の周りには不思議な明るさが感じられる。溢れんばかりの可愛らしさゆえか、はたまたマホウか。

「レイミちゃんなのっ。リトってばひどいんだよ? 窓に描いたお団子を消そうとするの!」

「お団子? ああ、すごいえきたいのことか」

「自分ですごいとか言わないでください」

「でもすごいじゃろ? ファナの裸が見られたんじゃから。しかも外で」

「ふえ? ……リト、はだかが見たかったの? ファナの? でもおもしろくないと思うよ? ぺたんってしてるし。それに…………あれ? うん? お外の方がいいの? 中と違うの?」

 と、ファナが身体ごとリトを向いた。わずかなふくらみを浮かべるふたつの果実と真っ白い肌、おへその陰影に、絵に描いたような――、

「隠しなさい」

「よし、妾がこのすごいえきたいのあわあわで隠してやろう」

「洗剤を人に向けない!」


      ♪♪♪♪


「――で。なにしに来たんですか? 村長」

「む? いや、たまにはファナに会いに来んとな。友達、じゃからの」

 ヒトではないらしい長寿の彼女はいたずらっぽく笑う。けれどそれは、十代半ばの少女には到底できない、背筋が凍る恐ろしい笑みだった。






最後までお読みいただきありがとうございます.


本作は,まったり日常モノです.

気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.


シャツの裾を加えたときに露出するお腹とか、

普段は裾に隠れているショートパンツとか、

目にまぶしいよねという話。

見たことないけど(当たり前)


それでは次回,

『68……両手に……はな?』

幼女を両脇にはべらせてお昼ご飯!――というお話です.

よろしくお願いします.


今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.

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