↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
55/150

52……にがいのっ!

マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。

飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。

そうして2人の生活は始まりを告げる。

リトと過ごす内に、村の人とも仲良くなり、彼女の世界は少しずつ広がり始め――

      ♪


 コンコン、聞きなれないノックの音に、竜の少女ファナは首としっぽを傾げた。この家では、玄関を除いて初めて聞いた気もする。

「ファナ、入るぞ?」

「リトなのっ! いいよ!!」

 風邪をひきベッドで上半身を起こしていたファナが答ええる。眠ったのと、身体を拭いて着替えたのとで少し元気になったらしく、声がさきほどよりも明るく響く。

 カチャ、とドアが開き、けれどリトは中をそっと覗いてから、慎重に入ってきた。

「? リト? どうしたの?」

「着替え中だったら怒られるからだ」

 ベッドの脇に置いたイスに腰掛ける幼馴染の少女を見る。

 淡い水色の髪をお気に入りの青いリボンをポニーテイルにした彼女。ついさっきまで、ファナの身体をお湯で濡らしたタオルで拭き、新しい寝間着に着替えさせていた。

 風邪をひいた女の子の世話なんて任せられない――というのが彼女シエルの言い分だ。

「着替え中じゃなくても、勝手に女の子の部屋に入ったら怒るわよ」

「……ここ、俺の部屋なんだけど」

「リトのお部屋にファナがいそーろーしてるの」

「居候は食べ物じゃないからな」

「わ、わかってるしっ」

「じゃあ、どういう意味か知ってるか?」

「知ってるもん。おふろんにいそーろーして一緒にぬくぬくしながら寝たことあるもん」

 それは、ファナがまだ別の村にいたときのこと。同じく竜の子供である少女たちと暮らしていたときの話だった。


      ♪♪


「ま、いいや。それよりも冷めたらもったいないもんな」

 リトは一度廊下に出て、床に置いておいたトレーを手に、再び中に入る。

「っ――ごはんなのっ!」


      ♪♪♪


 芋と卵のスープ。とろとろと甘いそれは、風をひいたときのお約束だ。身体が温まり、水分も取れ、飲み下しやすい。それでいて、力になる炭水化物も接種できる。

「ほら。あーん」

「あーん」

 ぱくり。リトの差し出したスプーンの数倍の口を開けて、ファナはスープを口に含む。

「はふっ……んぐ。…………おいしい! ……あれ、でも、リトの味つけとちょっと違う?」

「あ、わたしが昔リトに教えたからかも」

「かもな。それに、実践でもシエルにしか作ったことないし。ところで熱くなかったか?」

「ふえ? うん。ファナ、熱いのへいきだよ? 冷たいのよりあったかいののがいい」

 えへへと口元を緩める。まだ頬は赤いが、いつものファナらしさが戻ってきていることに、リトは安心した。

「……あ、でもリト。やっぱりちょっと熱かったの。熱くなかったけど、熱かったの……」

「へ?」

(なんでわからないのよ。熱いって言われたらあれやるに決まってるでしょ)

 後ろでにやにや見つめていたシエルに、耳元で怒られる。

(あれ……あれかっ)

「ったく。ほれ、ふー、ふー。……あーん」

「あーーんっ」


      ♪♪♪♪


「やだ! にがいからやなのっ。ファナはりゅーだからお薬飲まなくてもへいきだしっ」

「ちゃんと食べないと大きくなれないぞ?」

「お、お薬飲まなくても大きくなれるしっ。いじわるリトのうそつきっ」

「ま、大きくなれないのは冗談だが。でも、早く治すためにも飲まないとな」

 隣でシエルもうなずく。リトとシエルに諭されてしまえば、わがままも言えなくて。

「……あううう、にぎゃぃ」

 シエルが家から持ってきてくれた、村の薬師のおばあさん特製の飲み薬。どれだけ苦いかは、何度もお世話になったことがある二人は身を持って知っていた。

 口直しは用意してあるけれど、コップ一杯分をきちんと飲まないといけなくて。

「えうう……」

 目の端に涙を浮かべる少女に、リトとシエルは黙ってえらいえらいをするしかなかった。

 自分たちが幼い頃、親がそうしてくれたことを思い出しながら。






最後までお読みいただきありがとうございます.


本作は,まったり日常モノです.

気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.


ファナの風邪シリーズ第4弾.


あーんしたり薬を飲んだり.

……子供の頃の飲み薬(液体)ってあんまり味覚えてないですが.

錠剤が大きすぎて飲み込めないから,スプーンで砕いた記憶はあります.


それでは次回,

『53……おはよう、リトっ』

復活なのっ――というお話です.

よろしくお願いします.


今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。