27……村の子、家族
マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。
飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。
そうして2人の生活は始まりを告げ――
♪
今日はリトの学校の日だった。マホウツカイ見習いの彼は、学校でマホウの基本的なこと――マホウがどんなものかやその歴史など――を教えている。
先生用のそれなりのシャツとパンツに着替えてから居間に下りると、朝食を作りに来ていた幼馴染の少女シエルと、この家に居候中の竜の少女ファナがそろって顔を向けてきた。
「シエルは休み?」
「うん。向こうのことまとめて、午後に村長さんに提出」
シエルは保母さんを目指していて、現在はこのハテノキ村の保育園で研修中だ。研修の一環として、近くの街の保育園に出掛けていたが、昨日の夜に戻ってきた。連絡なしに戻ってきたため、今朝突然やってきた幼馴染に、リトは大いに驚かされた。
「順調?」
「まあまあかな。子供ありきのお仕事だから、じかに触れ合ったら学ぶことばっかりだけど」
「……そっか。あのさ、村長さんところ、俺たちもついていっていいか?」
「たち……あー、村長さん一緒に会議に行ってたから」
シエルが研修に行くついでだからと、村長は周囲の街を回って親睦を深めたり、会議に出たりしていたらしい。なので、リトがファナを拾ったことをまだ村長には伝えられていない。
「ファナもお出かけっ?」
「お昼にな。それまでは留守番。大人しくできるよな?」
「いい子で待ってるだけでしょ? 簡単なのっ」
胸を張ったファナの髪を、頑張れよと撫でれば、目を細め、きゅっとくっついてくる。
「…………リトってまさか」
二人の様子に、シエルはわずかに目を細めた。
♪♪
「いらっしゃい。女の子が二人待ってるよ」
午前中で授業を終えたリトは、村の喫茶店〝トマリギ〟のドアをくぐった。マスターに声を掛けられ、いつものカウンターではなく、テーブル席へと向かう。
「おつかれさま、リトっ」
「……疲れたよ」
「リト、大人気なの? やっぱり?」
「……加減知らないからな、あいつら。ほんと、本職さんには頭が上がらない」
リトのぼやきに、ファナの向かいに座っていたシエルがくすりと笑みをこぼした。
「さて、食べるもん食べて、挨拶だ。なににするか決めたのか?」
「ドリア。向こうにもあったんだけどなんか味が濃くって。マスターの作るちょっと薄味のが恋しかったのよね」
褒めているのかいまいち怪しい言葉を吐く幼馴染。……そしてもう一人は目を輝かせて。
「リトリトっ、ファナはこれなの!」
♪♪♪
オムライスに刺さっていた国旗つきの爪楊枝を指先でくるくる回しながら、ファナはゆっくりと道を歩いていた。左手はリトの右手に重ねられている。
深緑色の竜のしっぽの揺れ方がいつもより大人しめだ。緊張しているらしい。
「こんにちは」
人の良いおばちゃんに迎えられ、リビングに通される。ソファで村長を待っている間も、ファナは硬いままで、口数もほとんどなかった。その空気を吹き飛ばすように、
「すまぬ、待たせた」
凛とした声がリビングに響き、三人は一斉に顔を向けた。
そこにいたのは、
――金の長髪が美しい、十代半ばの少女だった。
♪♪♪♪
「ふむ、妾が出ている間にリトがマリョクに目覚めたのかと思ったが。マリョクだだ漏れの子供を拾っただけか」
つまらん……いやこれはこれでおもしろいか。笑いながら、三人の前にカップを並べる。
リトとシエルは彼女の正体を知っているゆえに、身を固くした。小さな身体と、装飾過多な感じの白黒ワンピース姿の彼女は、一見するとただの給仕さんなのだが。
「挨拶が遅れたの。妾がこの村の長じゃ。歓迎するぞ、竜の子よ」
「はい……って、あれ? 村長さん? でも……あれ? え? ええ?」
子供なのに村長さんなの? なんで村長さんがお茶出してるの? 偉いの? 偉いんじゃないのっ? ――心の中で言葉が溢れそうなファナに、
「ふふ。ようこそハテノキ村へ。妾たちの新しい家族じゃな」
少女は外見年齢そのままの笑顔を満開に咲かせ、ファナへと手を差し出した。
最後までお読みいただきありがとうございます.
本作は,まったり日常モノです.
気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.
ファンタジーなんでこれくらいやっても問題ないと判断して,
村長さんがあんな感じになりました.
次回,
『28……小さな手』
家族だけど、友達でもいたいのっ――というお話です.
よろしくお願いします.
今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.




