24……マホウのアメダマ
マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。
飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。
そうして2人の生活は始まりを告げ――
♪
「リト。ファナもアメ食べたい」
深緑色のしっぽを振って、ファナが上目遣いに見てきた。
夕方。マホウツカイ見習いであるリトの何でも屋の仕事を終えて。山向こうに沈んでいく夕陽を眺めながら、自分たちの影をひっぱって歩く。並ぶ二人はまるで兄妹のようだ。
「アメ?」
「うん! リトがマホウ使うときになめてるやつ! ファナもそよそよってしたいの」
「……でもこれ、普通のアメだぞ? マホウ使うと疲れるのと、舐めると集中できるから口に入れるようにしてるだけで」
「でもアメからマホウの匂いがするよ?」
確かに、マホウには気配というものがある。それは、大気中や草木、土などの周囲の環境に含まれるマホウの素を力に変えているからだ。だから例えば、賢者と呼ばれるようなマホウツカイであれば、誰かが使ったマホウの痕跡を見つけることができるらしい。
「リトのマホウの匂い。あったかいお日様の香り」
ファナは竜だ。竜は強大なマリョクを持った生き物だから、そういうものに鼻が利くようだ。
「しかたないな。ゆっくり舐めるんだぞ」
「あーんっ。――っ、これみかんの味がするっ」
「みかんのマホウが使えそうだな」
♪♪
「むぅ……偽物」
ファナは、ただのアメを口に含んだまま、頬をぷっくり膨らませていた。リトが取り出したアメは偽物で、ただのみかんアメ。何でも屋の報酬とは別にもらったものだった。
「竜だったら、アメ舐めなくても使えるんじゃないのか?」
確認するまでもなく、それは事実だった。実際、ファナは以前、寝ぼけて炎を吐いた。
「……よくわかんない。マホウの練習みたいのもしたことあったんだけど……」
「村の学校で?」
ファナはこの村に来る前は、同じような竜の子が暮らす村にいたらしい。
「うん。えいってやったら練習用の的が砕けちゃって」
「……」
誤解されがちではあるが、竜は基本的に大人しくて繊細な生き物だ。人に攻撃を加えるのも、恐ろしいという噂が広まっているのも、竜が人と関わらずに暮らしたいという意志表示なのだとする考えもある。そんな竜は、マホウを使うことにも長けているのだが。
「何事にも例外があるってことか」
「うん? なにか言った?」
「いや。ファナはいつだって元気いっぱいだなって」
♪♪♪
「まだ気になってるみたいだから言っとくが、このアメダマは俺専用なんだよ」
家に帰って夕食時。テーブルで向かい合いながら、リトは説明していた。
「おおざっぱな説明になるけど、ある効果を期待するマホウとその素をアメダマに込めてるんだ。例えば、風が吹け、とか。普通にマホウを使おうとしたら、こういうマホウを使おうって考えるのに加えて、マホウの素になる力を周りから集めないといけない」
「料理のイメージと材料がいるってことだね」
シチューをすくいながらファナが答える。
「そういうことだ。で、朝寝坊して時間がないときに材料から調理する暇なんてないだろう? そういうときには、あらかじめ作っておいた料理を口に含む」
「急ぎのときにはアメを舐めて、あらかじめ入れておいたマホウを使う」
「そうだ。空から竜が降ってきたときとかな。あとは、古くなって効果が薄くなったとき」
♪♪♪♪
「中に入ってるマホウはリトのイメージしたものだから、そのイメージと同じイメージを持ってないとちゃんと使えないってこと?」
「ま、そういうことだな」
「だったらファナ、だいじょうぶだよ! リトの考えてることわかるもん!」
どういうことだ? と肩を竦めれば、ファナは空になったシチュー皿を示した。
「リトの料理すっごくおいしい。それに、ブロッコリーも入ってないのっ。ファナがシチューをおいしく食べられるようにって思って入れなかったんでしょ?」
「……。さて、どうだったかな」
八百屋の前で、あれだけ「ブロッコリーだけはダメ」と腕を引っ張られれば……。
でもいつまでも甘やかすわけにはいかないから、今度、ハンバーグに刻んだブロッコリーを入れるかな、とリトはこっそり計画したのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます.
本作は,まったり日常モノです.
気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.
更新が遅くなりました.体調には気をつけます.
今回は,マホウについてのちょっとした話.
いつも通り,肩の力を抜いてください.
魔法少女ファナとか,テレビの前で魔法少女アニメのダンスを練習するファナとかも考えたんですが,実現はしなさそうです.
要望があればもしかすると……?
それでは次回,
『25……リトを乗せて』
さよなら、リト――というお話です.
次回で一区切りになる予定です.今週中には!
よろしくお願いします.
今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.




