23……マホウツカイのお仕事
マホウツカイ見習いの少年リトの元に、ある日、竜の少女ファナが墜ちてきて。
飛べなくなってしまったらしいファナに、リトは「ここで過ごすか」と手を差し伸べた。
そうして2人の生活は始まりを告げ――
♪
マホウツカイ見習いの少年リトと竜の少女ファナは、一匹の大型犬を伴って村の道を歩いていた。足を怪我したおばあちゃんの代わりに犬のクロロと散歩に出ているところ。
リトのマホウツカイ見習いとしての仕事で、何でも屋として請け負ったものだった。
「何でも屋さんってなにするの?」
「うーん、なんでもだな」
犬の散歩から、買い物、畑の収穫の手伝いまで。小さな村なので、近所での助け合いは日常的に行われている。リトは主に、個人の範囲でできる簡単なものや、時間的な束縛が強いものを請けていた。別で学校の講師の仕事もあるため、こっちの仕事は一日おきにやっている。
「午前中はずっとクロロのお散歩?」
「あとファナのお散歩も兼ねて」
「ファナ、犬じゃないしっリューだしっ」
ファナが声を上げる。さっきまでクロロにわんわん吠えていたとは思えない言葉だった。
「……そういえばファナ。前にいた村で劇ってやったことあるか?」
「お芝居? あるよ! とっても上手だって先生に褒められたもん」
えっへんとすました顔で答えを返してくる。
「役は?」
「犬! わんわんっ」
♪♪
村はずれの丘のふもと、緑が広がった空き地に到着した。
リトはしゃがんで、クロロの首に手を回す。慣れた手つきで散歩用のリードを外した。
「――っ」
身の危険を察したらしいファナがしっぽを立てたが、クロロは気にした様子はなく、その場で静かに前足をぴんと立てる伸びをした。下がりそうになった足を留めたファナが首を傾げる。
「? なにするのリト?」
「これだよこれ」
リトが肩掛け鞄から、空色の円盤を取り出した。フライングディスクだ。
「行ってこーいっ」
軽く投げたディスクを追ってクロロが跳び出した。軌道を読んで口でキャッチし、Uターン。
「よしよし。もう一度行くぞ?」
青空に舞う。その円盤を黒い影が追いかけ、けれど捕まえたのは別の人物だった。
「――はっ。ついっ」
ファナが照れ笑いを浮かべてリトのところに戻る。はい、とディスクを手渡した。
竜といえ、動物的本能を断ち切れていないらしい。それかファナが単に子供だからか。リトはその両方だろうなと思いながら、もう一度ディスクを空に飛ばした。
♪♪♪
しばらく遊んだところで、クロロがディスクをくわえたまま、その場でくるくる回り始めた。
「? どうしたの?」
「遊んでくれってさ」
リトは鞄から緑色のキャンディーを取り出して口に放り込んだ。
クロロからディスクを受け取り、投げる。まっすぐに飛んだディスクにクロロが矢のように走ったが、クロロを避けるようにディスクが急旋回した。
まるでクロロと遊ぶようにして、右へ左へディスクが曲がる。
「うー」
不自然すぎる動きに、しっぽをゆらゆらさせてじっと見ていたファナが声を漏らした。
それを聞いたリトが肩をすくめると、ディスクがふわりとファナの前にやってきて、その場で静止した。――と思えば、弾いたコインのように縦方向に回り始める。
「……あれ、これ。リトのマホウ?」
ファナの問いに、リトがにやりと笑った。
「何でも屋はマホウの練習を兼ねてるからな。こういうのもありってこと」
♪♪♪♪
午後は予定を入れず、村を歩きながら人々を手伝う。川の水を汲んだり、木にひっかかった帽子を取ったり。けれど水は自分で運ぶなど、マホウに頼り切りにはしない。マホウはあくまで部分的補助に使うだけだった。
「……マホウってもっとばーんとかびゅーんってなるすごいのだと思ってたんだけど」
期待に添えなくてわるかったな、とリトが返すと、しかしファナは首を振って笑った。
「ううん。リトのマホウ、リトと同じですっごくあったかい。ファナは、そんなマホウも、マホウを使うリトも好きだよ」
その言葉に答えるように、ふわり――と、どこからか吹いた風がファナの髪を優しく撫でた。
最後までお読みいただきありがとうございます.
本作は,まったり日常モノです.
気が向いたときに,好きな話から読んでいただけます.
犬とファナが一緒に丸くなって昼寝するところとか書きたかったんですが,
紙幅(?)の都合上カット.
そういうのもいつか書きたいです.
クロロの名犬話とかも……(需要あるのか?)
それでは次回,
『24……マホウのアメダマ』
ファナもマホウ使うんだもん!――というお話です.
よろしくお願いします.
今後も二人の行く末を見守っていただけると幸いです.




