15/63
誤解
灰色熊は肘から先を崖の縁にかけてもがいている。
落ちれば助からない事を熊は理解していた。
後ろ足が虚しく空を掻いている。
前足で土を掻くが崩れるばかりで爪が掛からない。
熊から恐怖の感情が伝わってくる。
このまま見ていれば熊は必ず落ちるだろう。
ひときわ大きく体がずり落ちる。
危ない。
俺はとっさに熊に駆け寄った。
前足を咥えて引き上げる。
だが、もう片足が俺の顔を薙払う。爪が俺の鼻先をかすた。
違うんだ。
熊はあっけなく落ちてゆく。
崖の中腹の岩肌に何度も体を打ちつけ、崖下に広がる低木の茂みの中に消えていった。




