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戦死した俺は異世界で犬の生活  作者: ウエンズディー・S・水田
プロローグ

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玉砕の攻め

 これほど悲惨で無意味な戦いを俺は知らなかった。


 塹壕に身を隠しながら俺は機関銃のトリガーを引き続ける。

 祖国の名を叫びながら突撃してくる敵兵が、次々と倒れて行く。


 降伏してくれ。

 俺は願いながら敵兵を殺し続ける。


 この戦争は終わっているんだ。おまえ達の国は降伏した。

 調印式も済んでいる。

 おまえ達に援軍は来ない。

 弾薬も底を付いているだろう。

 なぜ戦いを止めない。玉砕する気か。


 その時、一頭の白い大型犬が視線の先に現れた。

 戦場に迷い込んできたのか。行き場を失い怯えていた。


 俺は考えるより先に塹壕を飛び出し犬を抱えた。

 空気を切り裂く銃弾の音。

 足元を跳ねる跳弾の中を、俺は犬に抱きついて走り塹壕に転がり込む。


 その瞬間、背中に衝撃が走った。

 背中が熱い。


 塹壕の中で俺は犬に抱きついていた。

 犬は動かない。白い毛が赤く染まって行く。

 俺の気も遠くなってゆく。


 遠のく意識の向こうで部下の声が聞こえる。

「隊長しっかりして下さい。隊長。隊長が撃たれた。衛生兵。衛生兵を呼べ」


 俺の体が軽くなり宙に浮く。

 俺は、俺の死体を見下ろしていた。

 背中から血を流して、死んだ犬を抱きかかえている。

 俺も犬も死んだのか。


 更に高く登って戦場を俯瞰する。

 敵兵が降伏の白旗を振っていた。

 良かった。戦いは終わった。


 あと少しだった。

 あと少しで俺は妻と三人の子供が待つ我が家に帰ることができたのだった。


 クーンと耳元で悲しげな犬の声がした。

 見ると隣に白い犬が居る。


 犬を助けようとして戦死か。

 俺らしい。


 死んだらどうせ俺は地獄行きかと思っていたが違うかもな。

 なあ、犬よ。俺を天国に案内してくれよ。

 あの世で一緒に暮らそう。


 俺の家族は国が面倒を見てくれる。

 戦勝国だがらな。

 俺は天国でペットを連れて待ってるよ。


 俺と犬の魂は一緒に天に昇って行った。

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